2009年3月13日金曜日

リウマチ性多発筋痛症

Polymyalgia rheumatica(PMR)の診療

概念


1888 年にBruceが老人性リウマチ性痛風と呼ぶ高齢者の疾患を報告。1957年にBarberがリウマチ性多発筋痛症と名付けた。高齢者(50歳から増加し 70歳代でピーク)。男女比は1対2で女性に多い。肩や腰などの四肢近位部の疼痛と朝方のこわばりを訴え、炎症(血沈、CRP上昇)を伴うがCPKなどの筋酵素は上昇しない。血中IL-6濃度が病気の活動性や経過のよい指標となる。欧米では側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)の合併が多く(PMRの20%)、共通の病因が考えられている。北欧に多いため遺伝素因が疑われている。

MRI、または、超音波検査にて肩峰下滑液包炎、三角筋下滑液包炎、転子滑液包炎が殆どの症例に認められる。こうした炎症による肩や上腕の疼痛により上肢挙上の障害、大腿部の疼痛により起立動作の障害が生じる。関節リウマチと異なり手指関節は侵されにくい。強い炎症を伴い発熱、体重減少、食欲不振、抑うつ症状などの全身症状を呈することがある。

PMR の診断に際してChuangらの基準、Healeyの基準、Birdの基準の3つが使用される。側頭動脈炎は1990年のACR診断基準を参考にする。側頭動脈炎患者は日本では約700人。側頭動脈の怒張、触診による圧痛、脈の減弱に気をつける。頭蓋内動脈、大動脈弓が侵されることがある。予後は良いが眼動脈に炎症がおきると失明の原因にもなる。

ステロイド治療(プレドニンで10-20mg)に良好に(すみやか、かつ効果的に)反応するが、平均11ヶ月で中止できたという報告から、ステロイド使用率が2年後で8割前後という報告もある。抗TNF抗体は有効とする報告と無効とする報告がある。抗IL-6受容体抗体の効果に関しては興味深いところである。

鑑別
  1. 高齢発症の関節リウマチでは、明らかな対称性の末梢関節病変、リウマトイド因子、抗CCP抗体、骨びらん、関節外病変などが見られることよりPMRと異なる。
  2. RS3PEでは急激に両側手指に発症し、著明な圧痕を残す浮腫を手首、手指に認める。腱滑膜炎の像を呈し、PMRの亜型との意見もある。
  3. 高齢発症の強直性脊椎炎の症状もPMRに似るが、強直性脊椎炎は、HLA-B27陽性、レントゲン上で仙腸関節炎の像を呈し、ぶどう膜炎の合併も多い。
  4. 線維筋痛症は通常PMRより若年で発症し、朝方のこわばりを欠き、炎症反応も正常である。
  5. 悪性腫瘍随伴症状としてPMR様の筋痛を呈することがあるが、朝方のこわばりの少ない、より広範な痛みである。PMRでプレドニンに対する反応性の悪いときはさらなる検索が必要。

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