Oさんは膵臓癌で昨年11月から外来でフォロー中である。ジェムザールを初めとする一切の積極的治療を拒否されている。幸い自覚症状があまりなく、ご飯も食べられるし昼間はデイケアサービスに出かける日々である。そのOさんが昨日強い上腹部痛を訴えて外来に現れた。実は先週久しぶりにCTを撮ったところ主病巣は大きくなり、肝の外側区域に転移巣を認め、CA-19-9が50000と前回の10倍に急上昇していたので「そろそろやばいな」と思っていた矢先の事だった。膵癌の痛みだと当初は考えたのだ。点滴を行い、それなりに除痛を試みようとしたのだが、なんかおかしい。肋骨弓の下を痛がる。心なしか冷汗があるような。SPO2は98であり、バイタルも悪くないのだが、頻脈傾向にあり98。熱はない。念のためと思い心電図を取るとV1-6までSTの低下があるではないか!これは去年の11月のECGには無い所見である。すぐに酸素を始め二トロール(ニトロペン)を投与する。じきに症状はやや軽快し、よかったなあと思って循環器のO先生に相談した。O先生はECGを取り直したが、ST低下が収まっていないのだ。すぐに心エコーを撮ってくれたが後壁の動きがかなりおかしいという。「範囲は広くないけど、これは心筋梗塞を起こしている可能性が高い」と直ちに大学のCCUに転送手配をしてくださった。
虚実は明日以降にならないとわからないが、膵癌の患者さんに心筋梗塞のエピソードなんてね。危ないところだった。本当に外来はなにが起こるかわからない。
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