体表にできる病変で「見た瞬間病名が浮かぶ」ものを知っておかなければならない。皮膚科を含めるとそれこそ無限にあるのだろうが、いわゆる皮膚科や先天性奇形は除こう。ある程度の頻度がなくてはならない。一生に一回もお目にかからないようなものを知っていてもしょうがないからね。
Baker嚢胞は覚えておいて損はない病気の一つであると思った。これは膝の後面皮下に柔らか
い饅頭が触れるような感じで外来に現れる。実はこの二週間で2人も見ることになった。整形外科やリュウマチ膠原病内科ではありふれた病態なのだろうと想像するが、それ以外の科では、いきなり見せられても「???」であろう。実際初めは「???」だった。
1人目の患者のそれは数ヶ月前に気が付いたという。徐々に大きくなっている。2人目は2週間で急に大きくなってきている。皮膚の変化はない。炎症所見もこの2人にはない。最初は脂肪腫だと思った。しかしエコーをすると脂肪でないことがわかる。境界は極めて明瞭であるから悪性であるとは思わない。しかし嚢胞とは直ぐには気が付かなかった。このあたりでBaker嚢胞のことをちらりと思い出す。でもあれはリューマチがらみではなかったか・・・??曖昧な知識である。これはいかん。
エコーの技師は「膝窩動脈瘤」かもしれないよ・・・なんてワシを脅す。拍動の「は」もないのに。で、このあたりで教科書を読んでみた。
やはりBaker嚢胞がもっとも考えやすい。MRIを撮ることにした。MRIの所見で大事なのは後方の(つまり膝関節との)関係である。つながっているのである。
膝窩部に、隔壁を有する多房性腫瘤を認める。T1WIにて均一な低信号、T2WIにて均一な高信号を呈し、嚢胞性腫瘤と考えられる。関節液が少量貯留した関節腔との連続性が認められ、ベーカー嚢胞の所見と考える。
変形性関節症やリウマチ性の関節炎などで起こることが多いという。私が診た患者は先行疾患はなさそうであったから特発性もあるのだろう。
Baker嚢胞はこれは膝窩嚢胞とも呼ばれる。関節液が後方にせり出してくるのを包む袋と考えたらよろしい。ところでこれに極めてよく似た病態を我々はしばしば見るのだ。ガングリオンである。小生の外来にも月に1人はガングリオンの患者が来るよ。手関節より末梢でしか見たことがないが、穿刺液は決まってゼリーである。上記患者の穿刺液は水様であったが、ガングリオンとBaker嚢胞に本質的な違いがあるのであろうか?
画像の一部は飯塚病院放射線科のHPから引用させていただいた。
http://aih-net.com/medical/depart/housya/housya_top.htm
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