これに対し、若年者の外来初診の尿路感染は比較的単純であるとこれまで思っていた。大部分の対象患者は女性。膀胱炎が圧倒的に多い。時に腎盂腎炎がくる。腎盂腎炎の患者は典型的な症状を呈する(発熱・腰背部痛・CVA圧痛(++))。小生の外来に現れるような患者の多くはいわゆる「単純性腎盂腎炎」なのだろう、点滴・抗生剤によく反応してくれる。それだけ。腎盂腎炎なら数日の入院で「いっちょ上がり」てなもんだ。あとは外来で抗生剤を続けてください。
そんな腎盂腎炎が一昨日もやってきた。26歳の女子。右側腹部痛が3日目という。2児の母親、生理は昨日終わったところ。熱が40度でCVAはノックなど出来ない、ちょっと触れるだけで痛がる。この方、腎が小生の片手で挟めるのである。優しく触診するが、これが痛いのだなあ。痩せているのであるが、これは10年変わらないという。白血球は25,000と半端なく髙い。エコーでは腎盂・尿管の拡張はない。腎実質は「やや」むくんでいる。尿検査では当たり前のように白血球がでているが、思ったほどは細菌尿ではない。若干の?はあるものの、腎盂腎炎と説明し、直ちに入院させ、治療した。昨日は解熱傾向となり、痛みも減り、食欲ももりもり出てきて「よしよし」と思っていた。ところが、夜半から再度体温上昇が41度、疼痛著しいのだと本日明け方連絡有り。朝一番で直ちにエコーしたところ、見事に膿瘍が出来ている。2cmくらいだが被膜下に小さなガス泡が見えるようである。(この膿瘍、一昨日のエコーでは気が付かれていない)これはヤバイ。ドレナージがいつでも出来るところで治療してもらおう。いつもお世話になる泌尿器に電話したところ直ぐに転院と相成った。
そこのお医者さんに一つ聞かれて一つコメントされた。「ガスがみえるということですが、その方糖尿がひどいんですか?」「被膜下の膿瘍なら場合によるが治療に1ヶ月かかるかもしれない」とのこと。
「腎盂腎炎」もなかなか奥が深いというか、足を掬われる症例があることを知った次第だ。そこでネットでいろいろ調べた。いろいろあるのだ。
用語的には「単純性腎盂腎炎」「複雑性腎盂腎炎」「実質性腎盂腎炎」「髄質性腎盂腎炎」「腎膿瘍」「膿性腎」「腎周囲炎」「腎周囲膿瘍」「気腫性腎盂腎炎」・・・・・。 なお「気腫性腎盂腎炎」とは例えばこれだな。NEJMのイメージにあった↓。
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2009年7月25日土曜日
尿路系の気腫??
最新号(Volume 361 — July 23, 2009 — Number 4)では以下のイメージが載っているが、見た瞬間重症糖尿病を思い浮かべるようになりたいものだ。
Air in the Urinary Tract
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治療の観点から言うとこれらの病態の中にはかなりシビアに捉えなければならないものがある。例えば「膿性腎」は腎を救うことができないこともまた多いようでこの場合治療は腎摘となる。言葉の上では良く似ている「腎膿瘍」はまず腎摘はありえないが、それでも完治には時間を要する。また外科的介入を常に考えながら治療を進めなくてはいけないようだ。これらの相互関係を解読するのは、なかなか非専門医である小生には困難である。一つのキーワードは「石」あるいは「尿路閉塞」である。これがからむか絡まないかで病状は随分ことなるようだ。
非専門医としては「単純性腎盂腎炎」が実はそうではないと気が付かされるタイミングを見逃さないことがが全てだと思う。泌尿器あるいは腎専門医でない医師に相応しい指針を捜すのはなかなか難しいのだが、下の「総合内科医志望の覚書」というHPは実際的であると思った。
総合内科医志望の覚書
●腎膿瘍・腎周囲膿瘍のポイント
①腎膿瘍は症状がinsidious(潜行性)である。
②GNR(腸内細菌)の他に S.aureusによる菌血症の部分症状としてあらわれることあり
③腎盂腎炎の診断にて治療開始後 48-72時間しても解熱しないときには膿瘍の合併を疑うこと。
④1/3の症例では膿瘍が尿排泄路と交通しておらず検尿・尿培養が正常となる。
⑤尿道カテや泌尿器的手技と関連しない患者で尿培から S.aureus検出したときには 菌血症を疑うことは一般的常識。
⑥infected cystでは通常尿培は陰性である。
⑦腎膿瘍だけであれば抗生剤投与のみで治療できることが多い。
⑧逆に腎周囲膿瘍であれば基本的には ドレナージやOpeなど外科的Approachが必要である。 致命率も高い。重症疾患。
⑨腎膿瘍に対しては6-8Weekの長期抗生剤投与が必要。 OFFしてからも再発モニター必要。
⑩Emperic therapyとしては当然 GNRとS.aureusをカバーする。
• CTX/PIPC/TMP-SMX/AG/AZT
• CEZ/VCM
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