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当たらないので有名だったトムソン・ロイターによるノーベル賞予想2011年版である。このトップのDruker博士は小生も一押しの有力候補だとこのところ思っていた。そう思っていただけにトムソン・ロイターが上位に予想してきたことで実はがっかり(笑)。それはそれとしてノーベル賞は有効な治療法の開発にはこれまでも細心の注意を払って賞を贈ってきたのである。分子標的治療薬も一度は受賞するであろう。そして分子標的治療薬で現在のところその有効性が飛び抜けて高い薬剤として知られるのはグリベックである。IRIS試験は外科の小生が端から見ていても美しい臨床試験であった。最近では8年生存率なんていうのも出ている。いずれもNEJMだが主導者はDruker博士である。1994年から2011年までDrukerがヘゲモニーを握っている。たいしたものだと敬服ものである。
ハーセプチンも良い線行っているのだが、今ひとつ弱い。相手が固形癌だしね。しょうがない。でもハーセプチンならDr. Slamonもビッグネームだ。この人が貰っても文句を言う人はいないと思う。この↓1987年の論文は衝撃的だったよ、小生には。Slamon DJ, Clark GM, Wong SG, et al. "Human breast cancer: correlation of relapse and survival with amplification of the HER-2/neu oncogene." Science, Vol.235, No.4785, 1987, p.p. 177-182.ところで昨年受賞の試験管ベイビーに続いて実地臨床に近いテーマが二年連続受賞することがあるだろうか?実はこれまでそんな例は無いのである。従ってDrukerが貰うのは来年以降ではないか。
また同じ意味合いで遠藤章博士のスタチンも(あるとして)来年以降だと思う。コレステロール関連はノーベル賞が好きなテーマの一つで何回も受賞している。最近では1985年だから間隔も開いたしそろそろいいのでは。来年ね。 - 1927年 ハインリッヒ・ヴィーラントが胆汁酸とその類縁物質の構造研究によりノーベル化学賞を受賞した。
- 1928年 ヴィンダウスがステロール類の構造(およびそのビタミン類との関連性)についての研究によりノーベル化学賞を受賞した。
- 1939年 ブーテナントがコレステロールから産生される性ホルモンの研究、ルジチカがコレステロールを含むステロイド類(およびテルペノイド)の研究によりノーベル化学賞を受賞した。
- 1964年 コンラート・ブロッホ、フェオドル・リュネンらがコレステロールと脂肪酸の生合成機構と調節に関する研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞。
- 1985年 マイケル・ブラウン、ヨセフ・ゴールドスタインらはコレステロール代謝の詳細とその関与する疾患の研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞。彼等によりLDL受容体とその機能が発見される。
さて基礎系の予想はいかがなものか。再生工学のバカンティ博士ですか。ある時期論文を随分読んだ覚えはあるなあ。あと免疫系ならAKIRA博士も入れてくだされば良いのにと思います。まあ自然免疫だからずれるが、でもThなんかより自然免疫の方がおもしろくないか?免疫よりも今年のラスカーのHeat shock proteinの方がおもしろいかもしれないなあ・・とも思う。といいつつ、本当は「一日も早くゲノムプロジェクトにやれよ」といいたい。Venterとあとの2人はコリンズとううむ。そうだよな、あとの2人が大変なのだよな。生々しすぎるな。しかし伝統あるノーベル賞委員会はこれまでも地雷を踏むのには慣れているではないか。大抵の非難・中傷にはびくともしないはずだ。きちっと説明できればあとの2人はだれでもいいぞ。ゲノムプロジェクトはエポックな仕事だったんだから。きちっと評価しておかないといけないよ。今年あげちゃいましょう。トピック(カッコ内の日本語は参考訳): for their development of imatinib and dasatinib, revolutionary, targeted treatments for chronic myeloid leukemia (慢性骨髄性白血病(CML)に対する革新的な分子標的治療薬であるイマチニブとダサチニブの開発)
Brian J. Druker (米国)
Professor of Medicine, JELD-WEN Chair of Leukemia Research, and Director, OHSU Knight Cancer Institute, Oregon Health & Science University, Portland OR USA. Also, Howard Hughes Medical Institute Investigator.
Nicholas B. Lydon (米国)
Founder, Granite Biopharma, LLC, Jackson Hole, WY USA; Co-founder and Director, AnaptysBio, San Diego, CA USA; and Co-founder and Director, Blueprint Medicines, Cambridge, MA USA
Charles L. Sawyers (米国)
Marie-Josée and Henry R. Kravis Chair in Human Oncology and Pathogenesis, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY USA. Also, Howard Hughes Medical Institute Investigator.
トピック: for their pioneering research in tissue engineering and regenerative medicine (ティッシュエンジニアリング/再生医療分野における先駆的研究)
Robert S. Langer (米国)
David H. Koch Institute Professor, Department of Chemical Engineering, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA USA
Joseph P. Vacanti (米国)
John Homans Professor of Surgery, Harvard Medical School; Surgeon-in-Chief and Chief of the Department of Pediatric Surgery and Director of the Laboratory for Tissue Engineering and Organ Fabrication, Massachusetts General Hospital, Boston, MA USA
トピック: for his discovery of the function of the thymus and the identification of T cells and B cells in mammalian species (哺乳類における胸腺機能の発見およびT細胞とB細胞の同定)
Jacques F. A. P. Miller (オーストラリア)
Emeritus Professor, Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research and the University of Melbourne, Parkville, Melbourne, Australia
トピック: for their discovery of two types of T lymphocytes, TH1 and TH2, and their role in regulating host immune response (2つのタイプのTリンパ球、TH1およびTH2の発見と宿主免疫応答制御における役割)
Robert L. Coffman (米国)
Vice President and Chief Scientific Officer, Dynavax Technologies, Berkeley, CA USA
Timothy R. Mosmann (米国)
Professor, Department of Microbiology and Immunology, and Michael and Angela Pichichero Director in the David H. Smith Center for Vaccine Biology and Immunology, University of Rochester Medical Center, University of Rochester, Rochester,NY USA
* Miller, Coffman, Mosmannの3氏は同系列の研究における受賞