Life Science Breakthrough Prizeにはホームページが存在する。
米国癌学会(AACR):生命科学ブレイクスルー賞の第1回受賞者
- David Botstein, Ph.D., Anthony B. Evnin Professor of Genomics, Princeton University, Princeton, N.J.
- Lewis C. Cantley, Ph.D., director, Weill Cornell Medical College and New York-Presbyterian Hospital Cancer Center, New York, N.Y.; Stand Up To Cancer Dream Team Leader, Targeting the PI3K Pathway in Women’s Cancers
- Hans Clevers, M.D., Ph.D., director, Hubrecht Institute, Utrecht, Netherlands
- Napoleone Ferrara, M.D., Ph.D., Genentech Fellow, University of California, San Diego, Calif.
- Titia de Lange, Ph.D., Leon Hess Professor, Rockefeller University, New York, N.Y.
- Eric S. Lander, Ph.D., director, Broad Institute of the Massachusetts Institute of Technology and Harvard, Cambridge, Mass.
- Charles L. Sawyers, M.D., chair, Human Oncology and Pathogenesis Program, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, N.Y.; SU2C-PCF Prostate Cancer Dream Team Co-Leader, Precision Therapy for Advanced Prostate Cancer; AACR president-elect
- Bert Vogelstein, M.D., professor of oncology and pathology, Johns Hopkins University, Baltimore, Md.
- Robert A. Weinberg, Ph.D., professor of biology, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Mass.
- Cornelia I. Bargmann, Ph.D., Torsten N. Wiesel Professor in the Laboratory of Neural Circuits and Behavior, Rockefeller University,
- Shinya Yamanaka, M.D., Ph.D., investigator, Gladstone Institutes, San Francisco, Calif. and Kyoto University, Japan, and 2012 Nobel Prize recipient.
最初の9人の多くの先生には馴染みがある。
- Bert VogelsteinやRobert A. Weinbergは純粋な癌遺伝生物学。当ブログのバックボーンでもある。
- Eric S. Landerはヒトゲノムやその後の癌の大規模シークエンスで大活躍。当ブログのバックボーンでもある。
- David BotsteinはRFLP (制限酵素長断片多型:今では懐かしい言葉だがLOH (Loss of Herozygosity) の有力な検索ツールとして一時は大流行したな)によってハンチントン舞踏病やBRCA1の遺伝子発見に繋げた。その後は発現アレイ開発でスタンフォードのPatric Brownらと覇を競った。その後はgene ontology分野を創成したことで知られる。
- Hans CleversはStem cell biologyの今や大御所。当ブログのバックボーンでもある。
- Napoleone FerraraはVEGF研究の最初期の研究者であり、その後ヒト型抗VEGF抗体である分子治療薬Bevacizumab(アバスチン) の開発を手がけ、最近では目の病気である加齢黄斑変性症への抗VEGF抗体断片薬「ranibizumab (Lucentis®),」の開発を行っている研究者として有名。ちなみに加齢黄斑変性症にはすでにアプタマー(これも抗VEGF製剤)が臨床応用されているがこれは臨床史上初のオリゴヌクレオチド製剤としてFDA等に認可された。
- Titia de Langeのことは良くしらない。テロメア、テロメラーゼの女性研究者のようだ。
- Lewis C. Cantleyのことはよく知らない。PIKの研究者のようだが、癌だけではなく糖尿病他幅広い研究者。
- Charles L. Sawyers 分子標的開発研究者のようだ。よく知らない。2009年にはグリベックでラスカーを受賞したDruckerと同時受賞している。
- Cornelia I. Bargmann コリ・バーグマンは小生が20年以上注目している女流研究者。最初はRobert A.Weinberg研究室の切れ者大学院生だったころneuという癌遺伝子をクローニングした(The neu oncogene encodes an epidermal growth factor receptor-related protein. Bargmann CI, Hung MC, Weinberg RA. Nature; 319:226-30.1986.)が、これがのちのHER2である。HER2は熾烈な競争のもとに3カ所のラボからほぼ同時にクローニングされたので初めの頃は敬意を表してHER2/neu、erbB-2と呼ばれていたが、今ではHER2だ。neuのクローニング模様、特に「完璧」と表された彼女の大学院時代のエピソードは書物にドキュメンタリーとして残されていて面白い(がん遺伝子に挑む:SBN-10: 4807903519あるいはNatural Obsession)。その後バーグマンは一時期MITのHorvitsラボで線虫研究を行い、その後西海岸で脳神経生理にフィールドを移し、嗅覚を主戦場とした。
嗅覚レセプター(たとえばこの本が良い)というのはゲノム進化学的には極めて面白い領域であり、一番原始的な感覚であると言われながら、そのレセプター遺伝子はほ乳類で1000以上あるといわれ、またヒトでは347の遺伝子がゲノム上で今でも機能している。他人を自分と見分ける、あるいは配偶者を見つけるのに微妙に働いているのではないかと言われている。HLAや免疫イムノグロブリン遺伝子も多くのゲノム遺伝子からなるが、これらと同じカテゴリーに属すると言われている。
ちなみに2004年にリンダ・バックとリチャード・アクセルは嗅覚レセプターに関する研究でノーベル賞を受賞したが、このころバーグマンとアクセルのゴシップが話題になったことが思い出される。現在バーグマンはアクセル夫人となっている。
コリ・バーグマンの研究力はその後も衰えることはなく線虫をモデルに食餌・mating・社会生活を分子生物・遺伝学的に研究している。つい最近もnatureに紹介記事(Neuroscience: As the worm turns With the help of a tiny worm, Cornelia Bargmann is unpicking the neural circuits that drive eating, socializing and sex. Stephen S. Hall:20 February 2013 )が載ったばかりである。 - ちなみに賞金があって、ひとり300万ドルであるから約3億円。11人が貰うわけであるから凄い賞ができたものだ。
- 馴染みのある多くの研究者、ノーベル賞を貰いそこねた研究者(怒られそうだがワインバーグやバーグマン)、これから貰うことが予想される研究者(分子標的のフェラーラや Sawyersさん)、すでに貰った山中先生が共にリストされているのが嬉しい。ノーベル賞につながると素晴らしいと思うのは、なんといってもHans Cleversであり、頑張ってほしいのはVogelsteinやLanderである。
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