ATLの診断・治療
症状と診断方法
リンパ節の腫脹、肝脾腫大、皮膚病変、日和見感染症、血清LDHやカルシウム値上昇等のうち、いくつかの症状や異常がみられATLを疑う場合に、HTLV-1抗体検査を実施する。下記いずれかに該当する場合、ATLと診断する。
①血液中で増加する異常な細胞がT細胞である場合
②腫大しているリンパ節や皮膚病変部がT細胞のがん細胞によるものである場合
まれに、血清抗HTLV-1抗体陽性でありながらがん細胞中にHTLV-1を含まない、ATLではないT細胞のがんが存在する。その場合には、がん細胞のDNA中にHTLV-1が組み込まれているかを確認し、確定診断を行う。
HAMとは
概念・疫学
HTLV-1関連脊髄症(HAM; HTLV-1-associated myelopathy)は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1; human T-cell leukemia virus type 1)の感染者(キャリア)の一部に発症する慢性進行性の痙性脊髄麻痺を特徴とする神経難病である。日本では、HTLV-1キャリアの生涯において約0.3%の確率で発症すると推定されている。患者は西日本を中心に全国に広がって おり、特に 九州・四国・沖縄に多い。平成20年度の全国疫学調査では、全国の患者数は約3,000名と推定され、関東などの大都市圏で患者数が増加し ていることが明らかとなった。
HTLV-1の感染経路は主として母乳を介する母子感染である。他に輸血,性交渉による水平感染が知られているが、 1986年より献血 時に抗HTLV-1抗体検査が導入され、以後,輸血による感染はない。発症は中年以降の成人が多いが(平均発症年齢は40代)、10代、あるいはそれ以前 の発症と考えられる例も存在する。男女比は1:2ないし2:3と女性に多く、男性に多いATLと対照的である。
抗HTLV-1抗体検査は血清・髄液共に陽性であることが診断上重要である。HAM患者の抗体価は健常キャリアやATL患者に比して高値のことが多 い。末梢血所見では、核の分葉化を示すリンパ球が散見される例があるが、ATLでみられるフラワー細胞はまれで、むしろ典型的なフラワー細胞の出現は ATLの合併を考える必要がある。また、HAMでは血清中の可溶性IL-2受容体濃度が高いことが多く、末梢レベルでのウイルスに対する免疫応答の亢進を 非特異的に反映しているものと考えられる。末梢血単核球中のプロウイルス量の定量は、ウイルス感染細胞の制御の具合を把握することが可能となる。 髄液所見は脊髄での炎症の程度を把握する上で極めて重要である。
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