2013年3月3日日曜日

今年の医師国家試験から:ずいぶんまともなんだな

訳あって今年の医師国家試験を全部(500問!)みることになった。免許を取って以来、おそらく初めてのことだろう。
つまり数十年ぶりだ。 500問という量におののいたのは、終わってからだ。問題は厚生省のHPに出ているのだが、全貌がつかめないので、ただただひたすら解いていった。「なかなか終わらないなあ。いつまで続くのだろう・・・」最後にいったい何問あったのだろう、と数えてみたら500問あったというわけだ。9セクション(AからI)に分かれていたが、ボクらの頃と違って、科目・領域が混在しているので、公衆衛生の次に、小児科が出てきて、次に脳腫瘍が出てきたりする。だから、初めから最後までごった煮を食べているようであった。夕方までだらだら続く外来を意識させられます。

たった一回しか通覧していない(見返すのはもういやだ)小生のようなロートル選手に感想をかかれても厚生省はつらいだろうが、印象を書いてみる。

通覧して、好印象である。


  1. 数十年前の試験より随分「臨床応用」問題が多い。この応用問題は、意外にも解きやすい。臨床を長く続けている身としては「迷いようのない」問題が多い。いやほとんどがそうである。外科・内科でそうなのだ。(小児科や産科の問題は、多くは素通りしたので言及はよすことにする)


  2.  ボクらの頃には無かった傾向として「医師法関連」「検案書」「警察との関係」が何題も出されていたが、特に警察のと関連問題には「ひどく違和感」を覚えた。ここまで意識させるか。なるほど国家試験はこわいものだと思ったよ。


  3.  ボクらの頃には無かった傾向としてもうひとつ、地域連携医療や介護福祉問題が多いということである。これは小生の日常臨床で経験していることであり、問題も易しめのレベルが多いと思った。(下のH-27など)


  4. 全体として良問が多い。というかほとんど良問と言っていいのではないだろうか。(小児科や産科の問題は、多くは素通りしたので評価しないが)レベルが極めて穏当にみえる。出題者の苦労が見て取れる。I-18I-63


  5. 受験生にはどう取られるか怖いが、このレベルの試験なら、合格点が取れないとまずいと思った。


  6. 医師国家試験とは「おそろしく些末で、マニアックな引っかけ問題も多く、気が抜けない」という印象が抜けない小生としては、二度と受けたくない試験の二番目に位置するものであったが(一番目は医学部の卒業試験だ)、今回ゆえあって見る機会を得たことで、大きく印象は変わった。この試験はかなりまともになってきている。


  7. 当ブログで出てきた話題も試験登場だ。口腔内でも、小陰唇でも片側にしか出現しない疱疹(水泡を伴う発疹)といえば・・・I-72)  急性喉頭蓋炎もしかりである。(E-58-60)


  8. とはいえ、500問は多すぎる。疲れても疲れても、最後まで気力を振り絞り、患者を診る能力を見ているのかね。


H-27
91 歳の女性。肺炎で入院中である。脳梗塞の後遺症で 年前から要介護3となり、長男;68 歳=とその妻;64 歳=の居宅で介護サービスを利用していた。肺炎はほぼ治癒したが、著しい嚥下障害を認めたため、7日前から経管経腸栄養を開始した。現在、意識レベルはJCSⅠ- 1であり、栄養状態は良好である。皮膚に褥瘡や深部静脈血栓症を疑う所見を認めない。退院に向けた準備を進めることとなった。

退院後のケア計画に関連する要素のうち、現時点で最も重要性が高いのはどれ
か。

a特定健康診査・特定保健指導
b 介護に関する長男夫婦の意向
c 患者が加入している健康保険の種類
d 再び脳梗塞を発症した場合の診療計画
e 在宅酸素療法に対応できる近隣の医療機関

そうなんだよ。家族はちゃんと引き取って診てくれるのか。「診る」と言いながらとても診る環境ではない家族もいるし。入院後半は「退院後患者とその家族」をイメージしないとやってられない。


I-18
腰椎椎間板ヘルニアでL5 神経根が圧迫され、同側下肢の筋力低下がみられた。
障害されると考えられる動作はどれか。

a 股関節屈曲
b 股関節内転
c 膝関節伸展
d 足関節背屈
e 足関節底屈

この問題は臨床的にはとても良い問題だと思う。リハビリのPT・OTは気が付いたら必ず早急に教えてくれる事項だ。知らされる医師がその意味をくみ取れなければ「大恥」をかくのである。下垂足の出現は早急な評価(手術の必要性も含めた)が必須だ。ある日を境に足の背屈が出来なくなるのはヤバイ。

I-63
65 歳の男性。右手の脱力としびれとを主訴に来院した。1 週前と昨日とに、これらの症状が現れ、約20 分間持続したという。身体診察所見に異常を認めない。頭部MRI で明らかな異常を認めない。

この患者に対する説明として最も適切なのはどれか。

a 「特に心配はありません」
b 「自宅で安静にしていてください」
c 「すぐに原因の精査をしましょう」
d 「検査のため来週入院しましょう」
e 「 1か月後にもう一度、頭部MRI を撮りましょう」

これなんかいわゆる「地雷」問題かと思ってしまう。直ちに反応してほしい。すぐに動かない医者が周りにいたら、怒鳴り散らすと思う。冷や冷やする。

E-58〜60
次の文を読み、58〜60 の問いに答えよ。
 

23 歳の男性。のどの痛みを主訴に来院した。
現病歴: 日前からのどの痛みと発熱とを自覚していた。痛みが次第にひどくなったため23時に救急外来を受診した。痛みが強く唾液を飲み込むことができないため口から吐き出している。

既往歴: 15歳時に虫垂炎の手術を受けた。
家族歴: 特記すべきことはない。
現症: 意識は清明。体温38.2 ℃。脈拍92/分、整。血圧124/80 mmHg。呼吸数20/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。咽頭後壁粘膜はやや発赤しているが、口蓋桃の腫脹はみられない。頸部に圧痛を認め、軽度喘鳴を聴取する。心音に異常を認めない。


58 追加すべき最も重要な質問はどれか。
a 「喫煙の習慣はありますか」
b 「息を吸うのは苦しくないですか」
c 「ご家族にも同様の症状はありますか」
d 「自宅での体温は何度まで上がりましたか」
e 「 桃腺が大きいと言われたことはありますか」


59 診断として最も考えられるのはどれか。
a 急性気管支炎
b 急性喉頭蓋炎
c 桃周囲膿瘍
d 亜急性甲状腺炎
e 伝染性単核球症


60 確定診断に最も有用な検査はどれか。
a 胸部単純CT
b 頸部造影CT
c 咽頭食道造影
d 喉頭内視鏡検査
e 頸部超音波検査


やはり出題されているのだね、急性喉頭蓋炎。医学生には当たり前の知識だったのだね。

I-72
78 歳の女性。左耳の痛みと左顔面の動かしにくさとを主訴に来院した。今朝から左難聴、耳鳴および回転性めまいを自覚している。顔面の写真 別冊No. 19A と口腔内の写真 別冊No. 19B とを別に示す。

副腎皮質ステロイドと併用する治療薬として適切なのはどれか。

a ジドブジン AZT
b ミコナゾール
c アシクロビル
d ガンシクロビル
e バンコマイシン塩酸塩

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