May 2013, Volume 10 No 5
加速する「遺伝子解析」の医療利用 - pp20 - 21
Erika Check Hayden
成熟期に入りつつある「ゲノム解読」技術は、 医療診断に使える十分な価格と精度を持つようになった。
2013 年のゲノム生物学&テクノロジー会議(Advances in Genome Biology and Technology、以下AGBT)が、2月20 ~ 23日にマルコ島(米国フロリダ州)で開催された。この会議では毎年、次世代シーケンシングに関する最新技術が発表される。
現状使えるDeep Sequence機器であるが、最近のランニングコストには驚いた。安い!
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この中ではイルミナのHiSeqという機器が先頭を走っているらしい。5円で100万塩基である。我が目を疑う。30億塩基で1万5千円ということ。ゲノムシークエンスで今どれくらいのredundancyで読んでいるのか? 信頼できるデータとして先のランダーの論文を一部引用してみよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大量並行シークエンス法(MPS)の出現はがんゲノム研究を革命的に変化させた。当初実験一回で1ギガ塩基読んでいたものが、2012年末までに600ギガ塩基にスケールアップした。MPSはフレキシブルであり、現在では単一遺伝子変異、ゲノムコピー数変化、転座、転写レベルの変異、スプライシング変異の検出、メチレーション、クロマチン構造変異など、ほとんど全てのゲノム変異に対応出来る技術である。
MPSによる最初のがんゲノム報告は2008年Leyらによってなされた。細胞遺伝学的には異常を認めないAML患者の全ゲノム解析である。最初の報告は一症例報告であったが、ほどなく数百症例解析が標準となる。解析コストが劇的に下がったため、データが爆発的に出だしたのである。 MITのBroad研究所だけでも2012年までに16000以上の症例がゲノムあるいはエクソン解析を施行された。
MPS技術の到来とともに新しい解析技術も必要となってきた。正常とがんが混在したサンプルから正確に変異シークエンスと健常シークエンスを選び抜く技術がまず必要とされた。DNAにせよRNAにせよそれぞれの変異を捕まえるには独自の技術が必要とされた。これには単一遺伝子変異、ゲノムコピー数変化、転座、転写レベルの変異、スプライシング変異の検出、メチレーション、クロマチン構造変異検出技術が含まれる。多くの症例DNA検索で変異候補が見つかると、正常シークエンスと比較してその蓋然性を検討して変異遺伝子と確定するアルゴリズムが開発された(Meyerson 2010)。正確に変異を検出する技術は驚くほどトリッキーであることも明らかになった。がんの体細胞変異は1Mbに一回くらいの希な頻度でしか起こらないので、これを間違いなく異常ととらえる為に要求されるシークエンスのバックグラウンドエラー条件は極めて厳しいものとなる。加えて偽陽性の問題がある。すなわちシークエンスエラーでありシークエンス解析技術のエラーであり、サンプル中の癌と正常細胞の比率であり、染色体異常(ploidyの問題)でもあり、がん組織に複数のクローンが存在することも原因となろう。
シークエンス深度(同じ配列を何回読むかということ)の回数が増えることにより、特異性も感度もともに上昇してきた。エクソーム解析では100から150回、ゲノムでも30回から60回は読むのが現在の状況であるが、コストさえ許せばゲノムのシークエンス回数を増やしたいと考えられている。 ・・・・・・
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というわけで、従来の回数とは比較にならないほど深く読んでいるのだ。ゲノムで60回である。先のイルミナのHiSeqなら90万円くらいということになる。1000ドルシークエンスの10倍であるが、それでも凄いよね。
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