2011年1月22日土曜日

帝王切開術後創部に発生した腹壁子宮内膜症の1例

本日の32歳のヤングママの病理が子宮内膜症だったので結構ショックだった。というのは、小生は腹壁の子宮内膜症の経験がこれまで2例あったにも関わらず、今回の症例では全くそのことが念頭にのぼらなかったからだ。

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2009年2月8日日曜日

臍周囲炎と子宮内膜症

僕はなぜか臍の周りの子宮内 膜症に縁があるようだ。といっても2例見ただけだが、その一人は先週来た32才女性で、前日から臍の上部(尿膜管って上にもあったか??)に1cm大の有 痛性腫瘤を認めるのだった。圧痛はかなりのもの。皮膚の発赤はない。特徴的なことは前々日から生理が始まっていたこと。子宮内膜症は鑑別診断の2番目にはきます。抗炎症剤3日で痛みは取れたが「来月生理時に再度痛んだら切りましょう」といっておいた。患者さんには悪いが、来月が楽しみである。
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この女性は下腹部の帝王切開創皮下にしこりが触れ、それが痛いということで外来に現れた。3ヶ月前のことである。エコーで15mmの不整型、境界やや不明瞭腫瘤(髙エコー)であった。先日やはり痛みがありエコー再検で17mmであり、残糸膿瘍あるいは残糸肉芽腫を考え局麻で切除したのだ。本日の病理で「子宮内膜の腺腔巣が認められ、子宮内膜症である」との所見に驚いた。二番目の文献にあるとおり「創部子宮内膜症は帝王切開後に出来やすい」とあり、なるほどこのママさんもそうだったのである。言葉は適切ではないが「播種」したのであろう。そして増殖した。子宮内膜はちょっと不思議な「正常組織」なのであるな。

下に引用したのは子宮内膜症が術創部に認められた症例報告である。

引用元
(1) 日本臨床外科学会雑誌Vol. 69 (2008) , No. 5 p.1232-1237

帝王切開術後創部に発生した腹壁子宮内膜症の1例
奥野 厚志1), 越川 尚男1)
1) 住友重機械健康保険組合浦賀病院外科
(受付 2008-01-21)
(採用 2008-03-19)



帝王切開術後創部に発生した腹壁子宮内膜症の1例を経験した.症例は30歳,女性.6年前の第2子出産時に帝王切開の既往がある.疼痛を伴い,次第に増大する腹壁創部腫瘤を主訴に来院した.画像検査所見では手術創部やや右側を中心にほぼ全長にわたる腫瘤が存在しており,月経周期に一致して症状が変化 し,CA125の変動も参考に腹壁子宮内膜症の診断で摘出手術を施行した.内膜組織の残存がないように周囲の健常組織を含めて切除を行い,筋・筋膜欠損部 にはメッシュによる補修を必要とした.術後1年以上経過しても症状の再燃はなく,画像検査でも再発徴候のない良好な結果を得た.腹壁子宮内膜症は非常に稀 な疾患とされるが,婦人科手術の既往があり,月経随伴症状を伴う手術創部腫瘤に対しては,本症を念頭におく必要がある.


子宮内膜症・良性腫瘍
・皮膚子宮内膜症の3例


野口 唯, 松島 隆, 深見 武彦, 島田 博美, 米澤 美令, 佐藤 杏月, 中川 道子, 立山 尚子, 西田 直子,
土居 大祐, 可世木 久幸, 朝倉 啓文
日本医科大学武蔵小杉病院産婦人科

子宮内膜症のうち皮膚に生じるものを皮膚子宮内膜症といい帝切術後創部に好発するため産婦人科領域では常に念頭に置く必要がある.皮膚子宮内膜症の3例を経験したので報告する.

症例1;38歳1経妊1経産(帝切1回)主訴;側腹部痛術後1年頃より創部皮下腫瘤が増大.創部右側に弾性硬,可動性不良,圧痛の ない腫瘤を触知.CA125は正常範囲.経腹超音波にて皮下に29×17mmの高・低輝度が混在する充実性腫瘤を,CT検査にて腹部皮下に38×18mm 大の軟部組織腫瘤を認めた.

症例2;39歳 2経妊2経産(帝切1回)主訴;帝王切開術創部痛術後1年頃から創部上端に腫瘤出現.徐々に増大し月経周期と 一致し疼痛出現.創部上端に圧痛を伴う可動性良好の腫瘤を触知しCA125が49U/mlと上昇.経腹超音波上直径26.2mm内部均一単胞性の低輝度領 域を,MRI上T1/T2強調像ともに腫瘤内に顆粒状高信号域を認めた.

症例3:37歳 1経妊1経産(帝切1回)主訴;帝王切開術創部痛術後3年頃から 創部近傍皮下に腫瘤出現.徐々に増大・月経周期と一致して疼痛が増悪.創部上端に圧痛を伴う可動性良好の腫瘤を触知しCA125が42U/mlと上昇.経 腹超音波上直径18.1mm内部均一単胞性の低輝度領域を,MRI上腹直筋に接しT1低信号T2高信号の腫瘤性病変を認めた.

上記3例とも腫瘤摘出術施行 し病理にて診断確定.術後再発なく経過中.

まとめ:本疾患は全子宮内膜症の1.9%を占め,うち80%が帝切創部に発生するとされている.最終診断は病理所 見によるため術前正診率は低い.婦人科領域の手術瘢痕に結節を見た場合本疾患を念頭に置くべきと思われた.

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