2011年1月9日日曜日

街場のマンガ論:面白かったよ。

内田樹さんの本は出来るだけ読むようにしているが、最近はなかなか追いつかない。ご自身でもでも何冊出したかわからないくらい出版数が多いのである。「断筆宣言もどき」をされたのが去年の秋ころだったか・・・。しかしその後も本は出る出る。この人の本はおなじこと、同じモチーフの繰り返しである。それでも買ってしまう。買う理由というのがある。何冊に一回は「再度腑に落ちる」ことがあるからである。

でも去年の本にはあまり共振させられることが少なかった。日本辺境論なんかは随分文章が荒れていると思ったりもした。で、今日、本屋さんに言ったら「街場のマンガ論」という本が出ているのに気が付いた。街場のシリーズは何冊かあるから随分古い本だと勘違いしていたのであろう。手に取ると昨年10月の本だという。あらま。立ち読みしている間にはまってしまった。これは久しぶりに面白い本であった。

ベトナム戦争の終焉で日本の左翼活動が事実上終わり、男子はここで引退を決め込んだが、心ある女子選手たちがその心意気を引き継いで描きつつけたのが一連の女子マンガだというのだ。この世代の心意気のある男子・女子のテーマは脱アメリカ。反アメリカ文明である。日本の女子マンガには3つの世界があり、語られる語法には7つの相があるという説明にはのけぞった。女子マンガにはまったく縁のない小生であるが、こんな処に世界に冠たる日本文化が息づいているのね。読んでみてもいいけど、リテラシーに欠ける小生には訳がわからん世界のようだな。このあたりは養老孟司の感想と同じであるが、養老さんよりは読めるかもしれないと思ったりもした。

とにかく日本の少女マンガはゲイ、同性愛から不倫、倒錯までありとあらゆるテーマを扱うが、決して題材に現れないのがアメリカの学園生活であるという。実際読んでいないので判断がつかないが、これが本当だとしたら随分面白い。アメリカ的なものを徹底的に嫌悪する姿勢、旧西欧的なものへの好感が通底しているらしい。これが日本の女性の間で強く受け入れ続けられていることが面白い。こんなマンガ論はなかなか聞いたことがなかっただけに新鮮だった。

これが本当だとしたら日本のアニメ・マンガが世界で幅広く受け入れられている理由がわかるではないか。それは「アメリカ的なものへの嫌悪」「アメリカの存立基盤であるところの旧ヨーロッパ的なものの排除:その姿勢への反発」これが日本のマンガに暗喩・通底しているからということになりそうだから。

面白いね。

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