- 前半はマンマプリントなどが乳癌で広く用いられてきたことを中心にアレイと診断ー特に早期乳癌への治療介入が論じられている。確かに欧米におけるアレイの臨床応用は着実に進んでいるように見える。FDAも認めており、2007年にはアメリカの臨床癌学会はオンコタイプによる診断を勧奨するようになった。
- イレッサが話題になっているから書くが、EGFR変異が無い患者への奏功率は1%であるが、EGFR変異のある患者の奏功率は71%もあるという(2009年のMok et al NEJM)書き込みが印象的。
- PARPを初めとする開発中、早期治験中の分子標的薬剤の紹介も網羅的でないから読みやすい。
- 分子標的と言えばCMLのグリベックがその皓歯であるが、現在新しく診断されグリベックで治療されるCMLの5年生存率は89%もあるのだね(2006年、Drucker et al NEJM)。そのグリベックで治療されるGISTの奏功率は50%である・・・とあるがこれは参考文献がちと古すぎるな。
- この論文中で最もインパクトが大きかったのはBRAFとメラノーマのことである。70%近くのメラノーマにはBRAF変異があり、これをターゲットとした分子標的薬剤の臨床一相試験が2010年発表されたが、素晴らしい効果と書いてある(論文中には治療前後のPET画像が引用されているが、凄い効果の一例である。元論文は2010年、Flaherty et al NEJM)。メラノーマでBRAF変異が発見されたのが2002年であり、10年経たずにここまで来ているこのペースを賞賛している。確かに素晴らしい。
Results(これは参考文献からの引用)
Inhibition of Mutated, Activated BRAF in Metastatic Melanoma
Keith T. Flaherty, M.D., Igor Puzanov, M.D., Kevin B. Kim, M.D., Antoni Ribas, M.D., Grant A. McArthur, M.B., B.S., Ph.D., Jeffrey A. Sosman, M.D., Peter J. O'Dwyer, M.D., Richard J. Lee, M.D., Ph.D., Joseph F. Grippo, Ph.D., Keith Nolop, M.D., and Paul B. Chapman, M.D.
N Engl J Med 2010; 363:809-819August 26, 2010A total of 55 patients (49 of whom had melanoma) were enrolled in the dose-escalation phase, and 32 additional patients with metastatic melanoma who had BRAF with the V600E mutation were enrolled in the extension phase. The recommended phase 2 dose was 960 mg twice daily, with increases in the dose limited by grade 2 or 3 rash, fatigue, and arthralgia. In the dose-escalation cohort, among the 16 patients with melanoma whose tumors carried the V600E BRAF mutation and who were receiving 240 mg or more of PLX4032 twice daily, 10 had a partial response and 1 had a complete response. Among the 32 patients in the extension cohort, 24 had a partial response and 2 had a complete response. The estimated median progression-free survival among all patients was more than 7 months.
- 一方変異遺伝子にたいする分子標的がすべて上手くいっているわけではないことも事実である。悔しい思いをしているのはRASの研究者だろう。変異する場所もほぼ一定であり、多くの癌腫で変異が認められているのに発見以来30年で有効薬なし。しかしこのRASシグナルにも光が見えてきているという。RAS変異のある細胞ではSTK33, TBK1という分子をターゲットにすれば良いことがわかってきたらしい。
Genomics and the Continuum of Cancer Care
N Engl J Med 2011; 364:340-350
January 27, 2011
0 件のコメント:
コメントを投稿