2009年3月27日金曜日
胃癌で術後補助化学療法といえばTS-1しかない・・のか??
TS-1の難しい症例は以下の通り
結論:ないようだ。
最近のゲノム遺伝学ときたら・・・酵母の新世界
2月19日号であるが、「酵母で正しいことはヒトでも正しい」のであろう。transcriptomeがこれほど魑魅魍魎の世界になってしまっては研究者は途方にくれるばかりである。なんなんだ、これは!!
転写後のプロセシングによって5'側が修飾されたさまざまな長鎖および短鎖RNAが作り出される
Post-transcriptional processing generates a diversity of 5'-modified long and short RNAs p1028
Affymetrix/Cold Spring Harbor Laboratory ENCODE Transcriptome Project
doi:10.1038/nature07759
両方向性プロモーターは酵母で広範囲の転写を引き起こす
Bidirectional promoters generate pervasive transcription in yeast p1033
Zhenyu Xu, Wu Wei, Julien Gagneur, Fabiana Perocchi, Sandra Clauder-Münster, Jurgi Camblong, Elisa Guffanti, Françoise Stutz, Wolfgang Huber & Lars M. Steinmetz
doi:10.1038/nature07728
日本語要約 | Full Text | PDF (1,183K) | Supplementary information
広範囲に存在する双方向性プロモーターが酵母の隠れた転写物の主要な供給源となる
Widespread bidirectional promoters are the major source of cryptic transcripts in yeast p1038
Helen Neil, Christophe Malabat, Yves d'Aubenton-Carafa, Zhenyu Xu, Lars M. Steinmetz & Alain Jacquier
doi:10.1038/nature07747
2009年3月17日火曜日
ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝
ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝
この本は最近の医学生物学分野の出版物の中では出色の面白さである。以前
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面白い時代だったなあ。
河合塾に行ってみる
2009年3月15日日曜日
膵臓癌患者の心筋梗塞
虚実は明日以降にならないとわからないが、膵癌の患者さんに心筋梗塞のエピソードなんてね。危ないところだった。本当に外来はなにが起こるかわからない。
2009年3月13日金曜日
リウマチ性多発筋痛症
概念
1888 年にBruceが老人性リウマチ性痛風と呼ぶ高齢者の疾患を報告。1957年にBarberがリウマチ性多発筋痛症と名付けた。高齢者(50歳から増加し 70歳代でピーク)。男女比は1対2で女性に多い。肩や腰などの四肢近位部の疼痛と朝方のこわばりを訴え、炎症(血沈、CRP上昇)を伴うがCPKなどの筋酵素は上昇しない。血中IL-6濃度が病気の活動性や経過のよい指標となる。欧米では側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)の合併が多く(PMRの20%)、共通の病因が考えられている。北欧に多いため遺伝素因が疑われている。
MRI、または、超音波検査にて肩峰下滑液包炎、三角筋下滑液包炎、転子滑液包炎が殆どの症例に認められる。こうした炎症による肩や上腕の疼痛により上肢挙上の障害、大腿部の疼痛により起立動作の障害が生じる。関節リウマチと異なり手指関節は侵されにくい。強い炎症を伴い発熱、体重減少、食欲不振、抑うつ症状などの全身症状を呈することがある。
PMR の診断に際してChuangらの基準、Healeyの基準、Birdの基準の3つが使用される。側頭動脈炎は1990年のACR診断基準を参考にする。側頭動脈炎患者は日本では約700人。側頭動脈の怒張、触診による圧痛、脈の減弱に気をつける。頭蓋内動脈、大動脈弓が侵されることがある。予後は良いが眼動脈に炎症がおきると失明の原因にもなる。
ステロイド治療(プレドニンで10-20mg)に良好に(すみやか、かつ効果的に)反応するが、平均11ヶ月で中止できたという報告から、ステロイド使用率が2年後で8割前後という報告もある。抗TNF抗体は有効とする報告と無効とする報告がある。抗IL-6受容体抗体の効果に関しては興味深いところである。
鑑別
- 高齢発症の関節リウマチでは、明らかな対称性の末梢関節病変、リウマトイド因子、抗CCP抗体、骨びらん、関節外病変などが見られることよりPMRと異なる。
- RS3PEでは急激に両側手指に発症し、著明な圧痕を残す浮腫を手首、手指に認める。腱滑膜炎の像を呈し、PMRの亜型との意見もある。
- 高齢発症の強直性脊椎炎の症状もPMRに似るが、強直性脊椎炎は、HLA-B27陽性、レントゲン上で仙腸関節炎の像を呈し、ぶどう膜炎の合併も多い。
- 線維筋痛症は通常PMRより若年で発症し、朝方のこわばりを欠き、炎症反応も正常である。
- 悪性腫瘍随伴症状としてPMR様の筋痛を呈することがあるが、朝方のこわばりの少ない、より広範な痛みである。PMRでプレドニンに対する反応性の悪いときはさらなる検索が必要。
2009年3月9日月曜日
この頃のサイエンスの論文
Submitted on January 21, 2009
Accepted on February 20, 2009
FA 因子群と DNA 相同組換え修復との関連をさらに強く示唆することになったのは,2002 年D'Andrea らによる FANCD1 患者において BRCA2 遺伝子の両アリルに変異があるという報告であった.BRCA2 は家族性乳がんの原因遺伝子として同定され,相同組換え修復の中心因子 RAD51 を制御する重要な因子であることが明らかになっている.確かに他の相補群の FA 患者由来の細胞では RAD51の核内フォーカス形成能に明らかな異常がないのに対し,FANCD1 患者由来の細胞では RAD51 の核内フォーカス形成が著しく妨げられるさらに,近年新たな FA 原因遺伝子として BRCA2 と相互作用し,機能的なパートナーと考えられている PALB2(Partner and Localizer of BRCA2)が FANCN 原因遺伝子であることが報告され,FA 経路と相同組換え修復との関連がより明確になった.
Exomic Sequencing Identifies PALB2 as a Pancreatic Cancer Susceptibility Gene
Siân Jones 1, Ralph H. Hruban 2, Mihoko Kamiyama 3, Michael Borges 3, Xiaosong Zhang 1, D. Williams Parsons 1, Jimmy Cheng-Ho Lin 1, Emily Palmisano 4, Kieran Brune 4, Elizabeth M. Jaffee 2, Christine A. Iacobuzio-Donahue 2, Anirban Maitra 2, Giovanni Parmigiani 2, Scott E Kern 2, Victor E. Velculescu 5, Kenneth W. Kinzler 5, Bert Vogelstein 1, James R. Eshleman 2, Michael Goggins 6, Alison P. Klein
1 Ludwig Center for Cancer Genetics and Therapeutics and Howard Hughes Medical Institute, Baltimore, MD 21231, USA.; Department of Oncology, The Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center, The Johns Hopkins Medical Institutions, Baltimore, MD 21231, USA.
Through complete sequencing of the protein-coding genes in a patient with familial pancreatic cancer, we identified a germline, truncating mutation in PALB2 that appeared responsible for this patient’s predisposition to the disease. Analysis of 96 additional patients with familial pancreatic cancer revealed three distinct protein-truncating mutations, thereby validating the role of PALB2 as a susceptibility gene for pancreatic cancer. PALB2 mutations have been previously reported in patients with familial breast cancer and, interestingly, the PALB2 protein is a binding partner for BRCA2. These results illustrate that complete, unbiased sequencing of protein-coding genes can lead to the discovery of a gene responsible for a hereditary disease.
娘の大学受験(5)終日杳相同
仰臥 人 唖(おし)の如く
黙然として大空を見る
大空に雲動かず
終日 杳(はる)かにして相い同じ
仰臥人如唖
黙然見大空
大空雲不動
終日杳相同
2009年3月7日土曜日
健康診断・満漢全席
- 基本肝機能腎機能他
- 腫瘍マーカー:CEA, CA19-9, PSA
- 心電図
- 腹部超音波エコー
- 急速造影CT(胸部、腹部、骨盤:三相撮影)
- 上部消化管内視鏡 + 下部消化管内視鏡
イオメロン350シリンジ
経路:注射薬|規格:71.44%100mL1筒 |一般名:イオメプロールキット|薬価:14401 |メーカー:ブラッコ・エーザイ
以上の検査を友人にして差し上げた。8時半スタートで12時半終了の予定である。いわゆる胸写、腹単、検尿は省略。
いくらになるであろうか??
予定では(このメニューにはCTが入っていない)大体50000円、3割負担で15000円であった。
これに造影CTが入るが通常なら
- CT診断料450点
- CT撮影料830点(特殊撮影は950点)、造影剤を使用した場合500点加算
- 画像診断管理加算(専門の医師が診断結果を文書により主治医に報告した場合)58点
ここまでで、合計8万円で3割:24000円
あとは内視鏡的ポリープ切除があるかどうかで、総額が決まってくる。これは「治療」なのでぐぐっと高額になるのだ。
大腸だけだと
- 通常:三割で10000円(原価:30000円)
- 組織診があると:三割で14000円(原価:47000円)
- ポリペクがあると三割で26000円(原価:87000円)
2009年3月6日金曜日
20000になったら急いでなんとかしないと・・・
pro-BNPの値は南米のインフレのような感じがします。一万越えたら「ホンモノ」って感じ。2万いくと「ボヤボヤ出来ん」ってとこでしょうか「あっははは・・・」とおっしゃる。
「pro-BNPは4500」高いのはわかるが、さてどうする?
何回も腸閉塞症状で入院するSさんの最近のpro-BNPは4500である。2月は1000でした。これ健常人は50が上限なのだ。どう評価したらいい???
「健常人で例えばマラソン42.195kmだとBNPは増えない。ところが100kmマラソンだとだいたい6倍くらいのレ ベルまで、ですから出産・胎盤排泄時と同くらいのレベルまで増えてきます。トライアスロンでもほぼ同じレベルまで増えてきます。ですから、出産、 100kmマラソン、トライアスロンは心臓に負荷がかかる状態としては同程度ではないかと予測できる」という文章を見つけた。
NYHAとBNP値がみてみたいではないか!!!当然あるだろう、ネットで探す。あったが、信用できるのかどうかわからない。
NYHA分類
NYHA I度 ・・・・・BNP20pg/ml〜50pg/mll
心疾患はあるが症状はない。
NYHA II度 ・・・・・BNP50pg/ml〜100pg/mll
安静時は症状がないが活動時に症状があるもの。
NYHA III度 ・・・・・BNP100pg/ml〜200pg/mll
安静時は症状がないが活動時には強く症状が出て
日常生活が厳しく制限される。
NYHA IV度 ・・・・・BNP200pg/ml〜300pg/mll
軽度の活動でも症状が出て安静時でも心疾患発作の危険性がある。
いずれにしても私のSさんの値、1000や4500というのはオーダーが違うようであるな。循内のO先生の教示を仰ぎたい。
メルカゾールとチラージンを同時に出すか・・?
1)メルカゾール 1T 1x 隔日
2)チラージン 1T 1x
なる処方には「???」と思っていたが、同僚に尋ねるとやはり同じような処方が内分泌専門医からの引き継ぎで出るという。
ネットにもあったので引用
<気になる処方箋>
以下のような処方箋が出る。
Rp1
チラージンS(50μg) 1T
1×N(朝) 28日分
Rp2
メルカゾール(5mg) 1T
1×N(朝) 28日分
・チラージンS(レボチロキシンナトリウム)
甲状腺ホルモン(合成品)
粘液水腫・クレチン症・甲状腺機能低下症に使われる。
また甲状腺腫に使われることも(後述)
投与開始時には1日に25〜100μg。
これを徐々に増やしていき、維持量を1日あたり100〜400μgとして処方されることが多い。
基礎代謝を亢進させるホルモンなので、心臓にも負荷がかかるため狭心症・動脈硬化・高血圧などの重篤な心・血管障害のある患者に対しては慎重投与。
・メルカゾール(チアマゾール)
抗甲状腺薬。
バセドウ病のような甲状腺機能亢進症に使われるのがメイン。
5〜9歳には10〜20mgを1日2〜4回に分けて。
10〜14歳には20〜30mgを1日2〜4回に分けて。
15歳以上は30mgを1日3〜4回に分けて服用する。
(ひどい時は1日量が40〜60mgに増えることも)
維持量としては5〜10mgを1日1〜2回に分けて。
副作用として重要なのは無顆粒球症。
白血球の成分のひとつである顆粒球が減って、細菌に感染しやすくなる。
初期症状は発熱・喉の痛みといった風邪に似た症状。
この症状を早期発見するために、投与開始から2ヶ月の間は2週間に1回血液検査をするように、とされている。
上記の通り、チラージンは甲状腺ホルモン。
メルカゾールは抗甲状腺薬。
相反する二つの薬が同時に処方されるのはなぜ?
というか、どちらの症状で薬が出されているの?
そう思って色々と調べることに。
患者さんの薬歴より、今まではメルカゾールの単独処方。
ということは、この処方のメインはメルカゾール。
投与量も5mgと維持量である(青字参照)ので間違いないでしょう。
では、なぜチラージンが追加されたのか?
これはメルカゾールによって必要以上に甲状腺機能が低下したので、それをカバーするために追加されたと考えるのが妥当でしょう。
先輩曰く、このような処方は結構見かけるのだとか。
チラージンを追加せずにメルカゾールを半錠にして量を減らす、という選択も考えられるのですが、そんなことをするよりもチラージンを追加したほうが症状のコントロールがしやすいのだそうです。
それに、メルカゾール半錠にして半錠の加算料金取られるよりも1錠10円程度のチラージン追加したほうがお財布にも優しそうですし。
・補足
メルカゾールはこんな形をしています。
参考リンク:http://tinyurl.com/bl3tk
このように割線がなく、糖衣錠であるために半錠に割るには適さない錠剤です(その気になれば割れそうですが、上手く割れなかったり、コーティングが割れるのでひどく苦くなったりします)
なので、医者側としてもあまり半錠を指示しないかと思われます。
*補足:甲状腺腫へのチラージン投与。
甲状腺腫になると甲状腺ホルモンがいっぱい出ます。
それに対してメルカゾールを使うわけですが。
甲状腺機能低下症を避けながら十分な量の抗甲状腺薬(メルカゾールなど)を使いたいから、チラージンが併用されることもあるそうです。
差し引きゼロになって意味ないじゃん、と勘違いしていた自分に反省
私も反省
ちなみにこの患者殿、退院時にTSH,FT-3,FT-4測定したが、見事にノーマルレンジに入っていた。たいした匙加減であるものと感心.
2009年3月5日木曜日
FT3, FT4がほとんど0
息子「前のように食べないんです。吐き気があるようで。随分前潰瘍があったのでカメラをしてもらえませんか」
小生「いいですよ。結構ですけど、随分元気がなさそうですね。」覇気がない。皮膚の色が汚れた黄色。これは黄疸の色とも違うような・・・。
息子「久しぶりに親元に帰ってみたら、このざまです。薬も随分長い間飲んでいないようです」
小生「そうですか、どんな薬を飲んでいたんですかね・・・」と彼の手帳を見ると、ハーフジゴキシンやいろいろ大事そうな薬をどこかで処方されていたことがわかる。その中にチラージンがあった。何気なく最後の処方日をみると20年11月とある。もう三ヶ月以上飲んでいないことになる。あるいはやばいかも・・・・と思い、TSH,FT3,FT4を測定した。
翌朝の結果でFT3,FT4は小数点以下3桁くらいまでゼロが続いていた、つまり実質枯渇していたのである。よく生きていられるものだと感心する。TSHは3桁である。悲鳴を上げ続けていたわけだ。
こんな時は急に補充してはいけないらしい。
- まず副腎機能を大至急でチェックしクリーゼの発生に気を付ける。
- 虚血性心疾患が起こりやすいので厳重に管理
- チラージンSなら50ugが一錠であるが、最初は1/4T すなわち12.5ugから始める。
服用のしかた:
下垂体性甲状腺機能低下症、自己免疫性多発性内分泌腺症の場合、副腎皮質機能不全があるかどうかをかならずチェックし(ステロイドが出ないかのチェッ ク)、あれば副腎クリーゼの危険があるので副腎器質機能不全を先に治療します。甲状腺機能低下の程度(病気、年齢、虚血性心疾患の有無)から初期量、増量 速度を調整します。重篤な場合は原則として入院をお勧めし、虚血性心疾患を誘発しないように少量(12.5μg/日)から始めます。普通25μg〜 50μg/日(朝1回投与)から始め、その後副作用に注意しながら1週間に12.5〜25μgずつ増量します(迷ったら少なめに増量)。血中甲状腺ホルモ ンおよび甲状腺刺激ホルモン(TSH)をモニターし、TSHが正常上限になるようにします(正常から軽度の甲状腺機能低下症の間)。最大補充量は 3μg/kg/日(小児は5μg/kg/日)で、通常は1〜2μg/kg/日が多いです。治療中にTSHの一過性の上昇をみることがあります。50μg /kg/では少なすぎ、100μg/日では多すぎる場合、隔日で50μg/日、100μg/日、50μg/日、100μg/日・・・・・と調整します。
2009年3月4日水曜日
嘔吐下痢症とインフルエンザBの再流行
ところで今週の月曜日から突然のように「嘔吐・下痢症」が流行始めましたが、これも1月から2月になり下火と思っていたら、再燃なのだね。これは青壮年諸君が無差別にやられており、結構な数患者が出ている。ノロなのかもしれんが、入院させない限りあまり真剣には検査していない(だって、自費なんですものこの検査)。こいつは下手するとうつるかもしれん、同僚の中にはすでにやられているのがおります。困ったものだ。