直腸脱の治療:日本とアメリカ
直腸脱とは文字通り直腸粘膜と筋層が肛門外に脱出してくる病態でご老体に多い。痔核が大きく陥噸様に突出する脱肛とは全くことなる病態である。後者が緊張と緊満で切羽詰まった病態を呈するのに対し、前者は弛緩と脱力でいわば「だらしない」病態であり切迫感はおよそない。粘膜の色が違うよな。前者は通常きれいなピンク色である。
治療法であるが日本では長い間、初期治療としては「三輪—Gant法」が用いられてきた。全身麻酔がいらず、お腹を開けずにーすなわち侵襲度が低いことが、ご老体への負担を考えるとバランス良いと考えられるからである。小生など外来で遭遇するたびに、いっそこのまま看護師相手に無麻酔で縫縮してしまおうかと思うくらいだ。この辺りは無痛領域だし縫っても痛くないはずなんだがなあ・・。
Thierschという大げさな名前のついたバンド縫縮術を追加することもある。
これでだめならお腹を開けて直腸をたぐり人工布を巻いて仙骨と固定する方法があるが、当然全身麻酔で侵襲も高い(腹腔鏡でもだ)。
この他にデロルメ法とアルトマイヤー法というのがある。
ところで治療法が多岐にわたるというのは決してほめられたことではなく、決定的な方法が無いと言うことの裏返しである。そこで米国の推奨治療がどうなっているか眺めてみた。
まず米国はメイヨークリニック
http://www.mayoclinic.org/rectal-prolapse/treatment.html?mc_id=comlinkpilot&placement=bottom
- Perineal proctectomy (Altemeier or modified Delorme procedure). The surgeon removes the prolapsed rectum via an incision in the protruding rectum. Perineal proctectomy can be performed using regional anesthetic, which reduces the risk of complications and speeds your recovery.
- Sigmoid resection and rectopexy. The surgeon makes an incision in the abdomen and removes the sigmoid colon, the part of the large intestine closest to the rectum and anus. The rectopexy procedure anchors the rectum to the sacrum (a bony structure attached to the lower spine and pelvis). In most cases it is possible to perform this operation using minimally invasive surgery, which results in smaller incisions and a shorter hospital stay than conventional surgery.
- 非開腹法として局所麻酔下でのデロルメかアルトマイヤー法、開腹法としてS状結腸切除と直腸固定術がお薦めの方法である。後者では大部分の患者で腹腔鏡を使うと・・・
http://www.debakeydepartmentofsurgery.org/home/content.cfm?proc_name=rectal+prolapse+repair&content_id=274
- ここではまずThiersch法が勧められる。しかしこのThierschでは約半数の患者で人工物が拒絶され結局取り除かれると書いてあるな。ついでデロルメ法が推奨される。90%の患者はこれで上手くいくとのこと。これで再発する場合は最後に腹腔鏡による直腸固定術が推奨される
日本とアメリカでは随分趣が異なる。
- 三輪—Gant法,
- Thiersch法
- Delorme法
- Altemeier法
- 直腸固定術
この5つが取り得る手段なのだろう。
ところで日本でDelorme法、Altemeier法を積極的に行っている施設もあるようだ。
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