そんな中、そういえば小生はマーラー全集を持っていなかったなと気がついたわけですな(CDでは持ってなかったってこと)。学生の頃あれだけ聞き惚れていたマーラーですが、最近では5番6番9番と時に4番を聴くことは聴くものの、例えばあれだけ好きだった3番は久しく聴いていないことに気がついたのだ。3番というのはボクのクラッシック人生でもかなりの結節点であり、この曲を早期に聴いたことで随分クラッシックの間口が広がった気がするのだ。久しぶりに3番を聴こうかな、それなら全集を手に入れようかな・・・。
ボクは大学に入った4月にバイトをして自分で初めて買ったクラッシックLPが二枚あるのだ。いずれもブルーノ・ワルターであり、一枚がベートーベンの7番と8番であり、もう一枚がマーラーの巨人であった。ボクは高校時代まではロックしか聴かなかったので、これらの3曲はもちろん全く聴いたことがなかった。大学に入ったときに「これからはクラッシックを聴こう」と決めていたとはいえ、何を根拠にこの3曲を選んだのかは今となっては覚えていない。あるいはジャケットかもしれない。ただワルターは親父が好きな指揮者だったので、これははずせない。巨人はタイトルに引かれたのかもしれない(野球ではない。どとらかというとアンチ巨人だし)。ベートーベンの7番と8番はすぐに好きになった。5番6番と9番は知っていたが、むしろ7番と8番のほうがいいのではないかとさえ思った。
さて、マーラーである。当時マーラーは余り人気のある作曲家ではなかった。晦渋という言葉があるが、ボクが晦渋という言葉を覚えたのもマーラーの評価がそうだったから。でも一番の巨人は悪くなかった。何度も何度も聴いているうちに、突然ふわっとしっくりくるようになる、そんな音楽があることを初めて知った。ロックなどポピュラー音楽は、ほとんど聴いた瞬間に好き嫌いがはっきりするものだが、ある種の芸術は瞬間的に好き嫌いで判断しないほうが良い、そうするととても損をすることに気がついたのはマーラーの音楽を聴いてからのことだ。
それから街中のレコード屋さん通いが始まる。しばらくすると店のお姉さんと仲良くなった。「マーラーなんだけど一番の次には何を聴けばいい?」と尋ねると「そこの白髪のおじさんが詳しいから尋ねてみて」という。その店の常連らしい銀髪のおじいさんにおそるおそる聴いてみました、私。間髪を入れず「3番だろうね」と返事があった。何もわからない私でしたが、そのおじいさんの余りの歯切れの良さ、瞬間の返事に半ば感動し「3番」を購入した。高かったな。二枚組で5000円くらいしたと思う。35〜36年前のことである。そのころ3番はバーンスタインとクーベリックしかレコード屋さんには置いてなかったと思う。小生が購入したのはもちろんバーンスタインである。マーラー→ワルター→バーンスタインくらいの音楽史的知識はもうすでに持っていたからな。
ところがこの3番であるが苦痛だった。まず長い。とてつもなく長い交響曲であった。100分続く。聴き始めたらまず2時間。
しかし何度も何度も何度も聴いた。聴くからには真剣に聴いた。ながら族などもってのほか。そしたら音楽のほうから、近づいてくるのだな。まず第4楽章がわかるようになった。アルトの独唱で「おお人間よ(O Mensch)」と歌いだすと、なんだか法悦の境地に陥る訳だ。クラシックはいいなあと思うようになる。そのうち(おそらく20回くらい聴いた頃)突然、全曲が神々しくなる。100分の曲だけど、ほとんど頭に入ってしまう。こうやってマーラー気違いが一人誕生したわけだ。このあと4番を聴いたら、もうこれは初めからわかるのだ。最初から好きになる。5番も6番もそうであった。9番なんか、どうしてこんな曲をいままで知らなかったんだろうと悔いたものだ。 でもマーラーならなんでも好きという訳ではない。8番は嫌いな曲であろう。7番と2番は普通だった。大地の歌はよく聴いたが当時はよくわかっていない(ということに最近気がついた)。
ちなみに当時の小生のコレクション・ラインアップ
- ワルター:コロンビア
- バーンスタイン:NYP(箱入り二枚組)
- バーンスタイン:NYP(緑色)
- ハイティンク:コンセルトヘボウ
- ショルティ:シカゴ
- バーンスタイン:NYP(紫色)
- バーンスタイン:NYP(青色)
- ショルティ:シカゴ
- バルビローリ:ハレ(だと今の今まで思っていたがひょっとするとベルリンかもしれぬ)
- 大地の歌:ワルター VPO
Mahler: the Complete Works [Import, from US]
- CD (2010/5/24)
- SPARSコード: ADD
- ディスク枚数: 16
- フォーマット: Import, from US
- レーベル: EMI Classics
ここのところ毎日通勤の行き帰りに聴いている。で、3番がいいの。これひょっとしてマーラーの交響曲のなかで一番好きかも。2番も以前より好きだな。そんなわけで、私のなかでは数十年ぶりのマーラーブームなのである。
大地の歌はこれは自分が年を取ったことがしっかり認識された。すごい曲集であったことを初めて実感しております。感無量です。
今回のラインアップ
- ジュリーニ :シカゴ(1971)
- クレンペラー:フィルハーモニア・オケ(1963)
- ラトル:バーミンガム(1997)
- ホーレンシュタイン:ロンドン(1970)
- テンシュテット:ロンドン(1988)
- バルビローリ:ニュー・フィルハーモニア・オケ(1967)
- ラトル:バーミンガム(1991)
- テンシュテット:ロンドン(1986)
- バルビローリ:ベルリンフィル(1964)
- ラトル:ロンドン(2000)
- クレンペラー:フィルハーモニア・オケ(1967):Das Lied Von Der Erde
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