2011年6月29日水曜日

1956年頃の癌の生存率:NEJM1956年6月7日号より

NEJMのアーカイブを眺めていて、昔の癌の5年生存率を調べてみようという気になった。1956年発表のこのコネティカットの16年間の調査(1933年に始まる総計75494例)は調査スケールとしては小さなものではないので、あるレベル信頼できると考える。

現在の私たちが参考にしているがんのデータ・・・・今発行されている教科書や学会で先生方が発表されているデータ・・・・・と似たデータなのだと思うがこれらと比較検証するのも悪くはない。

わかりやすい表として1935-1940年,1941-1946年、1947-1951年の5年間づつの比較(診断を受けてから5年間の生存率:5年生存率)を見てみよう。

乳癌:     41→46%
大腸癌:    12→30%
胃癌:     4→5 or 7%   
肺癌:     0→3 or 8%

この頃は皮膚・表面に近いほど予後が良いのだろう。骨、軟部、皮膚腫瘍とならんで乳癌が比較すれば良い成績だ。一方上部消化管は(米国だということもあるが)惨憺たる成績である。大腸癌が30%というのはやはり惨憺たるというべきか。肺はこれは今の成績を考えてもこんなものであろう。
  































この論文のサマリーを訳してみよう。


『コネチカット癌登録センターは1935年から1951年にかけて総計75494例の癌患者情報を収集した。予後調査の結果いくつかの癌腫では生存率の改善が認められる。5年生存率が目まぐるしく向上したのは大腸癌、直腸癌、子宮頸癌、子宮体癌、前立腺癌そして内分泌癌であった。早期発見および現時点で使える医療技術をいかに有効に活用するかが5年生存率を向上させる2大要因である。技術の向上により近年目を見張る効果を上げてきた。生存率を向上させるためにはさらに優れた診断方法と治療手段のための研究が欠かせない。』

2011年の今頃の論文の締めくくりとそうは変わらないのだよね。

NEJMのアーカイブ閲覧(1812年創刊号から):6月30日まで

1812年創刊のNEJMは200年を迎える。今NEJMでは過去200年のアーカイブ閲覧が可能であり、時々のぞいて見ている。但し6月30日までだから明日まで。 創刊号は律儀に1月の最初の週(1月1日発行)から始まり、その最初の話題は「狭心症」である。この年は4回発行されている。ボストンを中心としたニューイングランド医師会が念には念を入れて編集したのだろう。

英語はいささか文学的だが、充分読める。レイアウトはこの200年あまり変わっていないと思う。最近では冊子体を見たことがないからあれだが、昔の冊子体から今の厚紙冊子体に変わったときに感じたほどの失望感・違和感は、この創刊号には感じない。最初の記事(というか歴史的な第一ページなのだろう)を引用してみよう。 

下の引用をクリックすると
例によってやや大きくなります。

2011年6月25日土曜日

恐怖の喉頭浮腫:NEJMそのリアル画像:都立多摩総合医療センタから

久しぶりに日本からの投稿だ。前回の投稿は九州の田舎(筑後川病院)からだったような・・・

こわいね〜〜
局麻による喉頭浮腫のリアル映像である。(A)(ステロイドiv)の一時間後が(B),翌日が(C)
これじゃ息ができないわ。

N Engl J Med 2011; 364:e55June 23, 2011

Images in Clinical Medicine
Laryngopharyngeal Edema

Kenta Watanabe, M.D., Ph.D., and Muneo Nakaya, M.D., Ph.D.
Tokyo Metropolitan Tama Medical Center, Tokyo, Japan

2011年6月24日金曜日

25才女子:肛門皮膚の脂漏性角化症

25才女子が昨日やってきた。おしり(肛門)皮膚におできが出来ているという。早速見せてもらうが、肛門から20mmの所に10mm程度の黒褐色の扁平隆起が出来ている。半年前は1mm程度(彼女の表現)だったのが、だんだん大きくなったので気になってと来院。ぱっと見には「脂漏性角化症」なんだな。いわゆる「セボケラ」である。老人では本当によくみる皮膚腫瘍だ。だけど、小生はこの「脂漏性角化症」が苦手だ。メラノーマだったらどうしようといつも思ってしまう。25才だ。うら若き女子である。半年でぐっと大きくなったというのだ。簡単に生検できないし。で・・・・いつもの皮膚科にお願いした。


ご指摘の通りの
「脂漏性角化症」ですので、cryotherapyしておきましたとの返事が今日届く。液体窒素である。視診だけで治療に持っていける潔さが(勿論プロだとはいうものの)素晴らしい。

下に8枚の皮膚腫瘍写真を引用した。いずれも皮膚科関係のHP由来の写真で診断はしっかりしている(はず)というのが前提だ。
うち4枚は「脂漏性角化症」であり、4枚は「悪性黒色腫」である。ネットの写真だけでは不十分だということはよくわかるが。それでもあたりがつくものだろうか。私には無理だが・・・・・・




















2011年6月19日日曜日

Hairly cell leukemiaで驚くべき遺伝子変異!:NEJM













pathconsultから写真を引用
http://www.pathconsultddx.com/pathCon/diagnosis?pii=S1559-8675%2806%2970255-8

慢性骨髄性白血病の希なサブタイプにHairly cell leukemia(HCL)というものがある。写真は末梢血スメアであるが、白血病細胞の表面に毛が生えている。一見スメアによる機械的なアーティファクトのように見えますな。しかしこの所見がこの希な白血病の名前の由縁となっている。

今週号のNew England Journal of Medicineには驚いたのだ。Hairly cell leukemiaではBRAF変異が100%認められるという報告だ。希な病気だから興味が湧かないそこの貴方。BRAF変異なんて「なにそれ」といわれる方々よ。こんなこと(100%の遺伝子変異頻度)は、この世界に30年近くいる小生にも初めての経験なのだ。簡単にまとめてみよう。

  1. イタリアはペルージャ大学に2009年に現れた47歳の患者が発端だ。白血球減少その他からHCLと診断された。ペルージャ大学の研究者はこの患者のHCL細胞を全ゲノム・シークエンスすることとした。並行deepシークエンスである。

  2. 患者体細胞(コントロール)と比較して5カ所の変異を見出すことに成功した。そのうちの一つに研究者は非常に興奮した。 それがBRAF変異「V600E」だったからだ。これは偶然なのか??

  3. そこでペルージャ大学の研究者は47人のHCL患者サンプル(併せて195人分の他のタイプの白血病・リンパ腫サンプル)をシークエンスした。その結果195人分の他のタイプの白血病他サンプルにはBRAF変異は一切見出されなかったが、

  4. 47人の追加サンプル全てにBRAF変異‘V600E’が見出されたというのだ。ちなみにこの変異は調べる限り体細胞変異である

  5. 100%の変異率なのである。しかも遺伝性ではない。
小生はこのような遺伝子変異を一回は見てみたいものだと思っていた。本当にあるのだね、こんなことが。いやまてまて、一回の報告だからな。追加報告が見たいな。この追加報告の要求水準は高いぞ。100例中98例陽性(98%)では話にならない。かならず100%が再現されなければならない。しかしながら話の進み方からして、100%の再現性が今後の報告でも見られるような気がする。

  • 一般の骨髄性白血病ではbcr-abl変異(転座)はよく知られるが、これでも90%を越える頻度という。小生の知識ではガン・白血病での単一変異頻度としては、このbcr-ablが最高に近いものだった。だから100%というのは普通ではない。

  • こうなると「HCL」の血液学的診断精度もしっかりしたものが今後は更に要求される。

  • ちなみにHCLではこれまでGWASは行われていたそうだ。それでもBRAFは見出されていないとのことだ。これはなぜなのだ?頻度や浸透率(100%?)から、理想的な疾患モデルだったはずだが。

  • 今後はGWASが衰退し、並行deepシークエンスが盛んになることになるのかね
N Engl J Med 2011; 364:2305-2315  June 16, 2011

BRAF Mutations in Hairy-Cell Leukemia

Enrico Tiacci, M.D., Vladimir Trifonov, Ph.D., Gianluca Schiavoni, Ph.D., Antony Holmes, Ph.D., Wolfgang Kern, M.D., Maria Paola Martelli, M.D., Alessandra Pucciarini, Ph.D., Barbara Bigerna, B.Sc., Roberta Pacini, B.Sc., Victoria A. Wells, B.Sc., Paolo Sportoletti, M.D., Valentina Pettirossi, Ph.D., Roberta Mannucci, Ph.D., Oliver Elliott, M.Sc., Arcangelo Liso, M.D., Achille Ambrosetti, M.D., Alessandro Pulsoni, M.D., Francesco Forconi, M.D., Livio Trentin, M.D., Gianpietro Semenzato, M.D., Giorgio Inghirami, M.D., Monia Capponi, M.D., Francesco Di Raimondo, M.D., Caterina Patti, M.D., Luca Arcaini, M.D., Pellegrino Musto, M.D., Stefano Pileri, M.D., Claudia Haferlach, M.D., Susanne Schnittger, Ph.D., Giovanni Pizzolo, M.D., Robin Foà, M.D., Laurent Farinelli, Ph.D., Torsten Haferlach, M.D., Laura Pasqualucci, M.D., Raul Rabadan, Ph.D., and Brunangelo Falini, M.D.

Background

Hairy-cell leukemia (HCL) is a well-defined clinicopathological entity whose underlying genetic lesion is still obscure.

Methods

We searched for HCL-associated mutations by performing massively parallel sequencing of the whole exome of leukemic and matched normal cells purified from the peripheral blood of an index patient with HCL. Findings were validated by Sanger sequencing in 47 additional patients with HCL.

Results

Whole-exome sequencing identified five missense somatic clonal mutations that were confirmed on Sanger sequencing, including a heterozygous mutation in BRAF that results in the BRAF V600E variant protein. Since BRAF V600E is oncogenic in other tumors, further analyses were focused on this genetic lesion. The same BRAF mutation was noted in all the other 47 patients with HCL who were evaluated by means of Sanger sequencing. None of the 195 patients with other peripheral B-cell lymphomas or leukemias who were evaluated carried the BRAF V600E variant, including 38 patients with splenic marginal-zone lymphomas or unclassifiable splenic lymphomas or leukemias. In immunohistologic and Western blot studies, HCL cells expressed phosphorylated MEK and ERK (the downstream targets of the BRAF kinase), indicating a constitutive activation of the RAF–MEK–ERK mitogen-activated protein kinase pathway in HCL. In vitro incubation of BRAF-mutated primary leukemic hairy cells from 5 patients with PLX-4720, a specific inhibitor of active BRAF, led to a marked decrease in phosphorylated ERK and MEK.

Conclusions

The BRAF V600E mutation was present in all patients with HCL who were evaluated. This finding may have implications for the pathogenesis, diagnosis, and targeted therapy of HCL. (Funded by Associazione Italiana per la Ricerca sul Cancro and others.)


2011年6月17日金曜日

E. coli O104の全ゲノムシークエンス:北京ゲノム研究所より・・・

ドイツで流行している出血性大腸菌(腸管出血性大腸菌)感染症E. coli O104の全ゲノムシークエンスが公表された。

The complete map of the Germany E. coli O104 genome released

BGI releases the complete map of the Germany E. coli O104 genome and attributed the strain as a category of Shiga toxin-producing enteroaggregative Escherichia coli (STpEAEC)

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-06/bgi-tcm061611.php

詳しいことはよくわからないが、原因菌は二つのハイブリッド大腸菌になっているようだ。水平伝搬(horizontal transfer)というやつだ。

ゲノムの生データが必要な場合はここにある。strainとしてはE. coli O104 H112180280という株である。

  1. 2010年のハイチのコレラにおけるpacific biosciences社のシークエンサーによる迅速な菌株決定

    The Origin of the Haitian Cholera Outbreak Strain


    Chen-Shan Chin, Ph.D., Jon Sorenson, Ph.D., Jason B. Harris, M.D., William P. Robins, Ph.D., Richelle C. Charles, M.D., Roger R. Jean-Charles, M.D., James Bullard, Ph.D., Dale R. Webster, Ph.D., Andrew Kasarskis, Ph.D., Paul Peluso, Ph.D., Ellen E. Paxinos, Ph.D., Yoshiharu Yamaichi, Ph.D., Stephen B. Calderwood, M.D., John J. Mekalanos, Ph.D., Eric E. Schadt, Ph.D., and Matthew K. Waldor, M.D., Ph.D.

    N Engl J Med 2011; 364:33-42 January 6, 2011

  2. 2011年のドイツのE. coli O104における今回のシークエンス
昨年来起こった二つの流行における全ゲノムシークエンスの印象は重い。形態学、血清型、生化学等々による古典的細菌学手法を一挙に飛び越える。なにより速い。

今後感染症のepidemic ( or pandemic)の場合、全ゲノムシークエンスが第一義的に重要視されることになるであろう。
エポックな出来事が続いたと見るべきだろう。感慨深い。


それにしても、ドイツの食中毒が中国で解析されるのだ・・・・時代の推移・趨勢を感じますな。

2011年6月16日木曜日

ヤクルトが提供するnature劇場:microbiome

つい最近、ヒトの大腸細菌叢が大きく3つに分類されるという極めて面白い論文が発表されたが、今週号のnatureには最近の大腸フローラについての論文特集が掲載されている。スポンサーはヤクルトである。ざっと流し読みしたがメタゲノムの視線ではないようであり、ちと興味を削がれた。一応メモしておくだけ。

1) Intestinal networks in health and disease
Ulla Weiss

2) Intestinal homeostasis and its breakdown in inflammatory bowel disease
Kevin J. Maloy &Fiona Powrie

3) Genetics and pathogenesis of inflammatory bowel disease
Bernard Khor, Agnès Gardet & Ramnik J. Xavier

4) Microenvironmental regulation of stem cells in intestinal homeostasis and cancer
Jan Paul Medema & Louis Vermeulen

5) Human nutrition, the gut microbiome and the immune system
Andrew L. Kau, Philip P. Ahern, Nicholas W. Griffin, Andrew L. Goodman & Jeffrey I. Gordon

2011年6月15日水曜日

尿路感染症なんて簡単さ・・・・・なことない!

入院高齢患者の尿路感染症は本当に悩みの種であるが、これは排泄機能特に膀胱機能が落ちているからであるし、男性の場合これに前立腺肥大が関わるからである。ちょっとしたことで排尿障害は更に悪化する。そうやって複雑性UTIを繰り返すわけだ。

これに対し、若年者の外来初診の尿路感染は比較的単純であるとこれまで思っていた。大部分の対象患者は女性。膀胱炎が圧倒的に多い。時に腎盂腎炎がくる。腎盂腎炎の患者は典型的な症状を呈する(発熱・腰背部痛・CVA圧痛(++))。小生の外来に現れるような患者の多くはいわゆる「単純性腎盂腎炎」なのだろう、点滴・抗生剤によく反応してくれる。それだけ。腎盂腎炎なら数日の入院で「いっちょ上がり」てなもんだ。あとは外来で抗生剤を続けてください。

そんな腎盂腎炎が一昨日もやってきた。26歳の女子。右側腹部痛が3日目という。2児の母親、生理は昨日終わったところ。熱が40度でCVAはノックなど出来ない、ちょっと触れるだけで痛がる。この方、腎が小生の片手で挟めるのである。優しく触診するが、これが痛いのだなあ。痩せているのであるが、これは10年変わらないという。白血球は25,000と半端なく髙い。エコーでは腎盂・尿管の拡張はない。腎実質は「やや」むくんでいる。尿検査では当たり前のように白血球がでているが、思ったほどは細菌尿ではない。若干の?はあるものの、腎盂腎炎と説明し、直ちに入院させ、治療した。昨日は解熱傾向となり、痛みも減り、食欲ももりもり出てきて「よしよし」と思っていた。ところが、夜半から再度体温上昇が41度、疼痛著しいのだと本日明け方連絡有り。朝一番で直ちにエコーしたところ、見事に膿瘍が出来ている。2cmくらいだが被膜下に小さなガス泡が見えるようである。(この膿瘍、一昨日のエコーでは気が付かれていない)これはヤバイ。ドレナージがいつでも出来るところで治療してもらおう。いつもお世話になる泌尿器に電話したところ直ぐに転院と相成った。

そこのお医者さんに一つ聞かれて一つコメントされた。「ガスがみえるということですが、その方糖尿がひどいんですか?」「被膜下の膿瘍なら場合によるが治療に1ヶ月かかるかもしれない」とのこと。

「腎盂腎炎」もなかなか奥が深いというか、足を掬われる症例があることを知った次第だ。そこでネットでいろいろ調べた。いろいろあるのだ。

用語的には「単純性腎盂腎炎」「複雑性腎盂腎炎」「実質性腎盂腎炎」「髄質性腎盂腎炎」「腎膿瘍」「膿性腎」「腎周囲炎」「腎周囲膿瘍」「気腫性腎盂腎炎」・・・・・。   なお
「気腫性腎盂腎炎」とは例えばこれだな。NEJMのイメージにあった↓。


2009年7月25日土曜日
尿路系の気腫??

ニューイングランドにはImages in Clinical Medicineというコーナーがあってなかなか楽しめる
最新号(Volume 361 — July 23, 2009 — Number 4)では以下のイメージが載っているが、見た瞬間重症糖尿病を思い浮かべるようになりたいものだ。

Air in the Urinary Tract



治療の観点から言うとこれらの病態の中にはかなりシビアに捉えなければならないものがある。例えば「膿性腎」は腎を救うことができないこともまた多いようでこの場合治療は腎摘となる。言葉の上では良く似ている「腎膿瘍」はまず腎摘はありえないが、それでも完治には時間を要する。また外科的介入を常に考えながら治療を進めなくてはいけないようだ。これらの相互関係を解読するのは、なかなか非専門医である小生には困難である。一つのキーワードは「石」あるいは「尿路閉塞」である。これがからむか絡まないかで病状は随分ことなるようだ。

非専門医としては「単純性腎盂腎炎」が実はそうではないと気が付かされるタイミングを見逃さないことがが全てだと思う。泌尿器あるいは腎専門医でない医師に相応しい指針を捜すのはなかなか難しいのだが、下の「総合内科医志望の覚書」というHPは実際的であると思った。

総合内科医志望の覚書

●腎膿瘍・腎周囲膿瘍のポイント

①腎膿瘍は症状がinsidious(潜行性)である。

②GNR(腸内細菌)の他に  S.aureusによる菌血症の部分症状としてあらわれることあり

③腎盂腎炎の診断にて治療開始後 48-72時間しても解熱しないときには膿瘍の合併を疑うこと。

④1/3の症例では膿瘍が尿排泄路
と交通しておらず検尿・尿培養が正常となる。

⑤尿道カテや泌尿器的手技と
関連しない患者で尿培から  S.aureus検出したときには  菌血症を疑うことは一般的常識。

⑥infected cystでは通常尿培は
陰性である。

⑦腎膿瘍だけであれば抗生剤投与
のみで治療できることが多い。

⑧逆に腎周囲膿瘍であれば基本的には  ドレナージやOpeなど外科的Approachが必要である。  致命率も高い。重症疾患。

⑨腎膿瘍に対しては6-8Weekの長期抗生剤投与が必要。  OFFしてからも再発モニター必要。

⑩Emperic therapyとしては当然
 GNRとS.aureusをカバーする。
   
• CTX/PIPC/TMP-SMX/AG/AZT
   • CEZ/VCM

2011年6月9日木曜日

新規「山中ファクター」:mycに変わるもの「Glis1」


























今朝の新聞で話題になっていたGlis1である。mycが外せるなら素晴らしい!



J Biol Chem. 2002 Aug 23;277(34):30901-13. Epub 2002 May 31.

Identification of Glis1, a novel Gli-related, Kruppel-like zinc finger protein containing transactivation and repressor functions.

Source

Cell Biology Section, Division of Intramural Research, NIEHS/National Institutes of Health, Research Triangle Park, NC 27709, USA.

Abstract

In this study, we describe the identification and characterization of a novel Krüppel-like protein named Gli-similar 1 (Glis1). The Glis1 gene encodes an 84.3-kDa proline-rich protein. Its five tandem zinc finger motifs exhibit highest homology with those of members of the Gli and Zic subfamilies of Krüppel-like proteins. Glis1 was mapped to mouse chromosome 4C6. Northern blot analysis showed that expression of the 3.3-kb Glis1 mRNA is most abundant in placenta and adult kidney and expressed at lower levels in testis. Whole mount in situ hybridization on mouse embryos demonstrated that Glis1 is expressed in a temporal and spatial manner during development; expression was most prominent in several defined structures of mesodermal lineage, including craniofacial regions, branchial arches, somites, vibrissal and hair follicles, limb buds, and myotomes. Confocal microscopic analysis showed that Glis1 is localized to the nucleus. The zinc finger region plays an important role in the nuclear localization of Glis1. Electrophoretic mobility shift assays demonstrated that Glis1 is able to bind oligonucleotides containing the Gli-binding site consensus sequence GACCACCCAC. Although monohybrid analysis showed that in several cell types Glis1 was unable to induce transcription of a reporter, deletion mutant analysis revealed the presence of a strong activation function at the carboxyl terminus of Glis1. The activation through this activation function was totally suppressed by a repressor domain at its amino terminus. Constitutively active Ca(2+)-dependent calmodulin kinase IV enhanced Glis1-mediated transcriptional activation about 4-fold and may be mediated by phosphorylation/activation of a co-activator. Our results suggest that Glis1 may play a critical role in the control of gene expression during specific stages of embryonic development.


↓ こちらがNatureの本編

Direct reprogramming of somatic cells is promoted by maternal transcription factor Glis1

Momoko Maekawa,Kei Yamaguchi,Tomonori Nakamura,Ran Shibukawa,Ikumi Kodanaka,Tomoko Ichisaka,Yoshifumi Kawamura,Hiromi Mochizuki,Naoki Goshima & Shinya Yamanaka


Nature 474, 225–229 (09 June 2011)

Received 25 May 2010
Accepted 11 April 2011
Published online  08 June 2011

Induced pluripotent stem cells (iPSCs) are generated from somatic cells by the transgenic expression of three transcription factors collectively called OSK: Oct3/4 (also called Pou5f1), Sox2 and Klf41. However, the conversion to iPSCs is inefficient. The proto-oncogene Myc enhances the efficiency of iPSC generation by OSK but it also increases the tumorigenicity of the resulting iPSCs2. Here we show that the Gli-like transcription factor Glis1 (Glis family zinc finger 1) markedly enhances the generation of iPSCs from both mouse and human fibroblasts when it is expressed together with OSK. Mouse iPSCs generated using this combination of transcription factors can form germline-competent chimaeras. Glis1 is enriched in unfertilized oocytes and in embryos at the one-cell stage. DNA microarray analyses show that Glis1 promotes multiple pro-reprogramming pathways, including Myc, Nanog, Lin28, Wnt, Essrb and the mesenchymal–epithelial transition. These results therefore show that Glis1 effectively promotes the direct reprogramming of somatic cells during iPSC generation.

2011年6月3日金曜日

肺腺癌と分子標的:crizotinib vs AF802、CH5424802

ALK融合遺伝子については続々と分子標的薬剤の開発/報告が続く今日このごろである。そろそろアメリカではASCO(米国癌治療学会)なる学会が始まるがどんな評価となるのやら。

小生はASCOや乳癌のSt.Gallen(サンクト・ガレン)が余り好きではない。何が気に入らないかといって、ここで標準治療とやらが決まっていくのがいやなのだ。日本にも一億2千万からの人間がいるのだから、日本オリジナルの抗がん剤標準治療ができるともっといいはずなのにといつも思う。
まあないものねだりかな。好きではないけど、この世界で仕事をする限りは無視できないのがこの学会である。ああいやだ、いやだ。もっといやなのは、この学会のこの国における速報体制である。特派員みたいな輩が、一分一秒でも速くネット上で報告を書くことがここ数年の流行りである。それを待っている一般大衆医師もだらしがない。いつの間にかよその国の標準が我が国の標準に成り下がっているのが、ここ10年の我が国の臨床腫瘍学である。情けない。情けない。ほくそ笑んでいるのが誰か、全く見えなくなってしまっている。

最近の抗がん剤・分子標的薬剤は諸外国企業(米国・ヨーロッパ)で開発されて、国民皆保険の国である日本で大量に使われ儲けさせてもらうという構造になっているような気がしてならない。そういう意味でも下記の中外製薬は健闘しているように見える。別に中外に恩義はないが、国産だからという理由だけなのだが、頑張れよといいたいのだ。

ところでこれらの薬、ASCOではどういう評価だろう?


最近のALKあるいはALK融合遺伝子に対する薬剤
  1. ファイザーのcrizotinib
  2. 中外のAF802
  3. そしてごく最近Cancer Cellに出た同じく中外のCH5424802
CH5424802, a Selective ALK Inhibitor Capable of Blocking the Resistant Gatekeeper Mutant

Cancer Cell, Volume 19, Issue 5, 679-690, 17 May 2011

Hiroshi Sakamoto, Toshiyuki Tsukaguchi, Sayuri Hiroshima, Tatsushi Kodama, Takamitsu Kobayashi, Takaaki A. Fukami, Nobuhiro Oikawa, Takuo Tsukuda, Nobuya Ishii, Yuko Aok

この論文は面白い。著者が日本の中外の研究者ばかりなのである。神奈川の鎌倉研究所というところから、Cancer Cellに載せている。製薬会社からこんな論文が出るのは、これまで余り見たことがない。AF802との違いが今ひとつわからないが、AF802は昨年からすでに先行して臨床試験が始まっているので、このCH5424802とはものが違うだろうとは思うが、調べても情報が出ていないのでよく差異がわからないのが残念だ。


さてファイザーのcrizotinibであるが、こちらも話題となっている。

  • 米国Pfizer社は5月17日、anaplastic lymphoma kinase(ALK)阻害剤であるcrizotinibについて、ALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺癌(NSCLC)を対象に米国と日本で承認申請を行ったと発表した。米国では優先審査の対象に指定されており、段階的申請が行われていた。ALK融合遺伝子陽性患者は、NSCLC患者の3%から5%を占めていると考えられている。crizotinibのALK融合遺伝子を有するNSCLC患者82人(平均年齢51歳)を対象とした拡大試験の結果が、昨年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO)で発表されている。その結果、客観的奏効率は57%、8週時の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)と安定(SD)を合わせた病勢制御率 (DCR)は87%となった。
とのことである。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201010/517156.html