2011年7月7日木曜日

急性下肢虚血についてまとめ

急性の膝窩動脈閉塞症をこの半年で2例経験した。2例目は今入院中だが実に劇的な改善を呈している。血管外科医に見放された患者なのだがね。ちょっと急性下肢虚血についてまとめておこう。

(1)四肢の急性血栓塞栓症のゴールデンタイムは?
     6時間

(2)徴候である5’P あるいは6'Psとは?
     1. pain
     2. palor
     3. pulseless
     4. paresthesia
     5. paralysis
     6. prostration

(3)病態の推移は?
     突然の強い疼痛や脱力感で発症し,
     神経障害(知覚、運動障害)から
     水疱形成,
     皮膚および筋肉壊死へと進行し,
     全身衰弱から死に至る.

(4)血栓症と塞栓症の比率は?
        7:3

(5) MNMSとは?
  • 「虚血再灌流障害」と訳されるが実は原文はmyonephropathic metabolic syndromeという。治療で血流が再開したのはいいが、やがて患肢の「毒素」が体内に逆流し悪さをすること。米国のハイモビッチさんが言い始めた。1960年のことである。なんとかゴールデンタイムで診断から手術にまで持って行って血行を再建させた血管外科医。成功に酔いしれるその外科医を次の瞬間、奈落の底に陥れる災厄である。

(6)重症度および救肢の可能性と危機の判別 (TASCIIによる分類:Trans Atlantic Inter-Society Consensus)




2009年の「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」による治療適応は


  1. 急性動脈閉塞症の診断が確定した時点で,二次血栓予防目的のためheparin投与を行う.
  2. TASC区分Ⅰ,Ⅱaは、経カテーテル直接血栓溶解療法(catheter directed thrombolysis:CDT)も可能である.
  3. 区分Ⅱbでは,血栓塞栓除去術等の外科的血行再建の適応となる.
  4. 区分Ⅲは不可逆性であり,壊死部の切断となる.
  • 塞栓症では,発症6時間(golden time)以内であれば、血栓塞栓除去術の良い適応である.
  • 血栓症では,可逆的な早期であればCDTの良い適応であると考えられている.
  • ただしCDTだけでは不十分な場合も少なくなく,この場合は適切な時期に外科的血行再建術を追加する.

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