さて、癌化にとって最近無視できないのがARID遺伝子変異である。ARIDってなんなんだろう?reverse geneticsではなにしろ「いきなりの脚光」が通例であるから、この遺伝子ならこの人に聞けば良い、というのがなかなかわからない。おそらく知らないのは自分だけでない。多くの場合、発見者も機能を知らないことが多いという始末だ。よく学会で出会う光景である。「貴方の発見した遺伝子の機能を教えて欲しい」と言われて、しどろもどろのスピーカー。
さてさてこのARIDというのはゲノムDNAが転写されたり、増幅したりするとき形態を変えるーすなわち、ほぐれる、ループを作る、ループを解消するー締まる、等々の変化に関連する蛋白遺伝子のようだ。SWI/SNFという遺伝子群があるが、その構成要素の一つのようだ。この遺伝子群にはとても多くの構成メンバーがあるが、これを全部列挙するのは止めておこう。ここでは癌、あくまでも癌化に関連する要素メンバーだけを挙げておこう。5つ知られている。
- SNF5
- ARID1A
- BAF180
- BRG1
- BRD7
である。実際にはSNF5とARID1Aだけ知っていれば良い。
- SNF5: Rhabdoid tumorの98%で変異を認める
- ARID1A:卵巣淡明細胞癌の50%、子宮内膜癌の 35%に変異を認める。
このパーセンテージの高さは尋常ではない。新規癌関連遺伝子としては例外的に高いのだ。
このARID1であるが、下の図(下記論文のFig 1)に登場する青い色のサブユニットである。よろしく。
図の参考文献は下
Review
Nature Reviews Cancer 11, 481-492 (July 2011)
SWI/SNF nucleosome remodellers and cancer
Abstract
SWI/SNF chromatin remodelling complexes use the energy of ATP hydrolysis to remodel nucleosomes and to modulate transcription. Growing evidence indicates that these complexes have a widespread role in tumour suppression, as inactivating mutations in several SWI/SNF subunits have recently been identified at a high frequency in a variety of cancers. However, the mechanisms by which mutations in these complexes drive tumorigenesis are unclear. In this Review we discuss the contributions of SWI/SNF mutations to cancer formation, examine their normal functions and discuss opportunities for novel therapeutic interventions for SWI/SNF-mutant cancers.
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