2012年5月23日水曜日

最近あの遺伝子たちはどうしてるのかしら・・・・

なにごとも経過観察は大事である。臨床しかり。研究もまたしかり。鳴り物入りで登場した遺伝子変異などは、続報で追認されて初めて本物らしさが受け入れられていくことになる。

数年経ってreview誌に取り上げられる遺伝子変異であれば、かなりの確度で本物である。そこに引用されている論文を見れば、大体のことはわかる。ところが続報の多くはビッグジャーナルには載らないので、ともすれば見逃してしまうことも多い。「そういえば、あの遺伝子どうなったかなあ?」

ここ5年くらい変異遺伝子発見のラッシュが続き、研究者がフォローするのがなかなかに困難な状況が続いている。日本語の良い総説があればよいのだが、見当たらないようだ。実際、日本の代表的な月刊誌「実験医学」「細胞工学」の目次を過去2年眺めてみたが、癌ゲノム遺伝子変異を特集した冊子(あるいは特集記事)がないことに気がついた。これには驚いた。遺伝子変異という研究領域は日本の研究者の皆様の興味から離れてしまっているらしい。残念でならないが、どうしたことだろうね。

ひとつには全体を通観できる雑誌編集者がいないということなのだろうと思うな。
あるいは、全体を見渡せる研究者もいないようだ。無理も無い。ある日は乳癌から、ある日は前立腺癌から、ある日は髄芽細胞腫(脳腫瘍)から変異遺伝子が報告されるのである。全部に通じている研究者などいるはずもない。また最近の大きな研究ではdeep sequencingで大量のデータが出てくるので、これらのデータの渦の中から関連遺伝子情報を拾い上げるのはなかなか努力(論文付属のサプリメント・エクセルファイルなどをじっと読み込む努力)が必要なのである。

日本語で、癌関連遺伝子変異情報の現況をフォローするのは困難である。せめて自分がこのブログでノートした新規遺伝子のその後くらいはフォローしておかないといけない。最近、しみじみとそう思うな。ぼつぼつやっていこうと思うのだ。

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