というようなことが、問題・課題であったのが(あるのが)乳癌検診である。
今回そのマンモグラフィーの役割に大きな影響を及ぼすであろう論文がNEJMに載った。
その論旨は「マンモグラフィーによる乳癌早期診断スクリーニング検査は、その国の乳癌死亡者を減らすことには、ほとんど役に立っていない」というものだ。
これは充分議論を尽くすべきテーマである。「この論文によって、スクリーニング・マンモグラフィーが無くなる(勧奨されなくなることにより)ことで、乳癌死亡者が今後大幅に増加すると危惧する“多くの”意見も当然ある」 更に医療政策策定側のミスリード(財政支出を減らしたい)であるという反論も当然あろう。
一方検診に対する過度の期待をしていないグループによる賛成の声もあろう。
小生としては「わかりやすい論文であるが故に、どこかに落とし穴がないか不安である」という意見、というより印象である。医療行政に大きな影響力のあるこのような論文は、いろいろな立場の専門家が意見を述べてくれないと、判断が難しい。といいながらも、なんだか残念な研究結果だなとも思う。思いっきり「違うぞ!こんな論文に引きずられるな!』という意見も聞きたい。
日本の今後の乳がん検診への影響も必須であるから、乳癌専門家にはしっかりとした見解を述べてほしいものだ。
N Engl J Med 2012; 367:1998-2005
November 22, 2012
Effect of Three Decades of Screening Mammography on Breast-Cancer Incidence
Archie Bleyer, M.D., and H. Gilbert Welch, M.D., M.P.H.
Results
The introduction of screening mammography in the United States has been associated with a doubling in the number of cases of early-stage breast cancer that are detected each year, from 112 to 234 cases per 100,000 women — an absolute increase of 122 cases per 100,000 women. Concomitantly, the rate at which women present with late-stage cancer has decreased by 8%, from 102 to 94 cases per 100,000 women — an absolute decrease of 8 cases per 100,000 women. With the assumption of a constant underlying disease burden, only 8 of the 122 additional early-stage cancers diagnosed were expected to progress to advanced disease. After excluding the transient excess incidence associated with hormone-replacement therapy and adjusting for trends in the incidence of breast cancer among women younger than 40 years of age, we estimated that breast cancer was overdiagnosed (i.e., tumors were detected on screening that would never have led to clinical symptoms) in 1.3 million U.S. women in the past 30 years. We estimated that in 2008, breast cancer was overdiagnosed in more than 70,000 women; this accounted for 31% of all breast cancers diagnosed.
米国で乳癌検診スクリーニングにマンモグラフィーが導入されたことで早期乳癌の発見数は二倍になった。すなわち10万人女性あたり年間112人だったものが234人への増加となっている、絶対数では10万人あたり122人の増加である。同時に進行癌の発見率は8%低下しーすなわち10万人女性あたり年間102人だったものが94人に低下しー絶対数では10万人あたり8人の減少をみた。乳癌の発症が一定の割合で続いていたと仮定すると、上記122人の早期発見者のうち(従来であれば)進行癌に進展したと考えられるのはわずか8人ということになる。過度のホルモン治療や40歳未満乳癌の最近の動向を除外してみよう。そこから推定されること:
「過去30年間に米国女性のうち130万人が乳癌との過剰診断を受けていたということである。」
この130万人は乳癌検診スクリーニングで乳癌と診断されたものの、本来臨床的症状を発症することは決してなかったであろう。我々の推計では2008年一年間で、7万人以上の米国女性が乳癌であるとの過剰診断を受けており、これはその年乳癌と診断を受けた患者の31%に達することになる。
以上が当論文の結果であり、以下が結論。
Conclusions
Despite substantial increases in the number of cases of early-stage breast cancer
detected, screening mammography has only marginally reduced the rate at which
women present with advanced cancer. Although it is not certain which women have
been affected, the imbalance suggests that there is substantial overdiagnosis, accounting for nearly a third of all newly diagnosed breast cancers, and that screening
is having, at best, only a small effect on the rate of death from breast cancer.
早期乳癌の発見数が充分増加しているとはいうものの、マンモグラフィーによるスクリーニングで進行乳癌を減少させる効果は限定的である。早期発見者が充分増えているのに、進行乳癌発見があまり減っていないというバランスの悪さはどこに由来するのかーーーー推察するにこれは「新たに乳癌と診断を受けた患者のほどんど3分の1が過剰診断であったということなのだろう」。
マンモグラフィーによるスクリーニングで乳癌の死亡者数を減らすことはほとんど出来ない。
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