2015年10月24日土曜日

繰り返す背部の激痛:日本医事新報とNEJM

デ・ジャブ・・・とはちと異なるが、またまたそれに似たお話。

「反復性の胸背部痛発作」 がキーワードである。

本日忙しい外来がやっと終わり医局で昼ごはんを食べながら、テーブルの上に置いてあった最新の「医事新報」を何気なく見やったところ、なにか「カチッ」とスイッチが入ったのだった。


読んでいた記事(千葉大学医学部附属病院 総合診療部  生坂政臣ほか)は「繰り返す背部の激痛」であり下には内視鏡の食道像がある。白血球が11,000であり好酸球6%とある。「研修医の診断は胸椎椎間板ヘルニア」であり、生坂先生らの正解は次ページに載っているはずである。

「カチッ」とスイッチが入ったのは前日読んでいたNEJMの最新号にEosinophilic Esophagitisの小論が載っていたのを思い出したからだ。読んだわけではない。見出しに掲載されていて、まあ読むほどのことはないだろうと思いそのままにしていたのだが、翌日今度は「医事新報」で似たような症例解説である。

それで次のページの解答は100%「好酸球性食道炎」に違いないと思った。論説を読んでいないから、これは勉強の成果ではないのだが、ほぼ確信にちかいものがある。こんなタイミングで小生の眼前に現れるならほぼ正解のはずだと思っただけだ。






















で解答は 「好酸球性食道炎」であった。

一方の Eosinophilic Esophagitisの記事はこちら









Review Article

Eosinophilic Esophagitis

Glenn T. Furuta, M.D., and David A. Katzka, M.D.
N Engl J Med 2015; 373:1640-1648 October 22, 2015

必ずしも「喘息様の発作性の繰り返す胸背部痛」という症状が前面に出てくる紹介ではないけれど、子供に多いことなどより広範な視点からこの病気を説明してくれる。

これは「この病気を勉強しときなさいよ」という天啓なのだと思う。

「反復性の胸背部痛発作でステロイドがよく効く」 がキーワードである。


2015年10月18日日曜日

考えさせられる症例: NEJMのイメージ



NEJMから考えさせられる症例を一例。













見ての通り右の眼部に青あざを認める女性である。小生の周りでは割りとよくみる病態の一つである。小生が初診で見たとすれば、視力や神経学的所見と、何よりもCTでの詳細な評価をしたあと1度は眼科に紹介する。ほとんどの方は眼科的に追加の治療がいることはなく、当方に戻ってくる。そんな方は外来・入院ともに比較的多い。

だからこんな写真をNEJMイメージであらためて見るとちょっと驚くのである。「何があるの・・・?」


ほほ~う、と唸ってしまう。眼窩周辺の静脈血栓が背後に控えていて、さらにその背後に骨洞の炎症(まあ蓄膿症みたいなものだろう)があることが遠因というのだから示唆に富む症例である。このMRIの静脈血栓は私にはとても読めない。蓄膿はわかったけど病態と直接関係しているとは普通思わないよな。

であるからこの方を掻爬を始めとする外科的治療に持って行ったことが、小生にはかなり斬新に思えるのである。これが「当たり前の医療」であれば、小生正直勉強不足を恥じるものである。

ザルツブルグからの極めて示唆に富む症例報告でした。

Slaven Pikija, M.D.
Johannes S. Mutzenbach, M.D.
Paracelsus Medical University Salzburg, Salzburg, Austria
 


A 71-year-old woman presented with 5 days of right retroauricular pain that radiated to the retrobulbar area, with accompanying putrid nasal discharge, body chills, double vision, and swelling of the right eye. Physical examination revealed right ptosis, chemosis, a visual acuity of 20/32, limited eye movements in all directions, and hypoesthesia in the ophthalmic branch of the trigeminal nerve (Panels A and B). Contrast-enhanced magnetic resonance imaging showed a partially occlusive thrombus in the right superior ophthalmic vein (Panel C), cavernous sinus (Panel D), inferior petrosal sinus (Panel E), and internal jugular vein (Panel F) (white arrows). Moreover, there was pus in the right sphenoid sinus (red arrow in Panel D). The blood cultures and sinus aspiration material grew Enterobacter cloacae complex. The patient had no obvious predisposing factors for acute sinusitis and was not immunocompromised. She was treated with surgical débridement, antibiotics, and anticoagulation and recovered completely. Sinus infection can spread through direct extension or travel from mucosal veins through a valveless system of diploic, cerebral, and emissary veins to venous sinuses, the latter being the most plausible cause in the present case.


2015年10月17日土曜日

デ・ジャブ:「クリムゾン・キングの宮殿」


これはキング・クリムゾンの最初のアルバムである。僕にとってはにくいアルバムであった。中学生であった小生が週に一回は訪れていたレコード屋にいきなり現れたのがこのLPだったのだが、タイトルにつけられたタグが

「ビートルズのアビー・ロードを抜いてチャート一位になったキング・クリムゾンのファースト・アルバム・・・」

というものだったからだ。ビートルズの中ではアビー・ロードがとりわけ好きで、同じ頃売りだされたレット・イット・ビーをなんとなく敬遠していた小生だったので、そのアルバムを抜くなんて、というのが正直な反応であった。

で聴いてみたが、一緒にいた4人の友人(というか少年バンド仲間)がいずれも衝撃を受けたのである。これが僕らがビートルズを卒業しプログレッシブ・ロック(と言われていたもの)に転向するきっかけになったアルバムであった。すぐに2枚のLPが発売された。かなり入れ込んだからか、いまでもスキゾ、墓碑銘(epitaph)、トカゲ(lizard) 、目覚め(wake: In the wake of Poseidon)という英単語は彼らのアルバムから覚えたと思っている。これらの言葉を見聞きするとかれらのアルバム・ジャケットを思い出す。





これが「ポセイドンのめざめ」


 

これが「リザード」である 


まあこの2枚はどうでもいいようなアルバムだったけどね・・・











今朝タワーレコードから届いたメールがこれだ。こういうデ・ジャブ(なぜデ・ジャブか・・・、前回の投稿を見てください。NEJMの写真)は大好きである。

でも14, 000円はないだろう。そこまでの価値を見出すヒトがまだいるのだろうか?





2015年10月13日火曜日

NEJM イメージ:久しぶりに日本(愛知県 江南厚生病院)から・・・














Images in Clinical Medicine
N Engl J Med 2015; 373:1457 
October 8, 2015

Oral Maxillary Exostosis 

Shoichiro Kitajima, D.D.S., Ph.D., and Akio Yasui, D.D.S., Ph.D.

A 73-year-old woman presented with mouth dryness and tongue soreness. The oral cavity of the patient was dry, and Candida albicans was detected on culture. On examination of the upper jaw, firm protrusions of the alveolar bone were noted. Oral exostosis, a benign overgrowth of bone, was diagnosed. In this patient, oral exostosis had been present since childhood without any disturbance in her daily life and was an incidental finding. Her presenting symptoms were caused by a fungal infection and improved with treatment.



外骨症といい外骨腫とは若干異なるようである。外骨症となるとほぼ口腔内に左右対称に突出する骨ということになるようで、歯科口腔外科以外ではみることはほとんどなさそうである。私達が初めて見たら(あるいは相談されたら)、答えに窮する可能性大であるが、左右対称というのはこの病態を思い出すヒントになるかもしれない。通常治療の対象とはならないそうである。

江南厚生病院 口腔外科
愛知県江南市高屋町大松原137

http://www.jaaikosei.or.jp/konan/

北島正一朗 (江南厚生病院 口腔外科)
安井昭夫(江南厚生病院 口腔外科)



2015年10月12日月曜日

シカゴ・マラソンで福士4位・ゴーマン美智子さんの訃報

さて本日は山陰出雲で駅伝があるようだ。小生の住む街ではあまり天気も良くないので久しぶりにテレビで観戦をしようかと思う。朝新聞をみると2つの記事に気がついた。シカゴマラソンとゴーマン美智子さんの記事である。

まずゴーマン美智子さんであるが、往年のマラソンファンにとっては鬼太鼓座の小幡キヌ子とともに、レジェンドであった。海外から活躍はおぼろげに聞こえてくるが、何しろ海外在住だけにほとんど記録以外の情報が入ってこない伝説の人であった。70年台にニューヨークマラソンができた頃優勝し非常に目立つ女性ランナーであった。彼女の輝かしい経歴を引用する。

73年に初挑戦したマラソンで非公認ながら2時間46分36秒の世界記録
74年のボストン・マラソンで初優勝
76年ニューヨークシティーでは2時間39分11秒の自己ベストをマーク
77年にはボストン、ニューヨークシティーの両マラソンで優勝。
79年の第1回東京国際女子マラソンには44歳で出場し、2時間54分9秒で16位。

9月19日に80歳で亡くなられたそうだ。ご冥福を祈ります。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

さてシカゴであるが福士加代子が2時間24分25秒で4位入賞だ。35kまでは6人で先頭を争っていたようだが、最後にスパートされている。ただし40km以降順位を上げているのでまだまだ福士には期待ができそうだ。好きなランナーだけに期待したい。

Fukushi, Kayoko (JPN)










SplitTimeDiffmin/mile
05K  00:16:34  16:34 05:20
10K   00:33:05  16:31   05:19
15K  00:49:42  16:37 05:21
20K  01:06:39  16:57    05:28
HALF  01:10:27  03:48   05:35
25K  01:24:01  13:34   05:36
30K  01:41:20  17:19   05:35
35K  01:58:45   17:25   05:37
40K  02:16:32  17:47   05:44
Finish  02:24:25  07:53   05:48


一方男子の優勝はChumba, Dickson(KEN)であるが2時間9分25秒とシカゴにしては異例の低レベルである。下のラップを見て欲しいがここまで極端なnegative splitも珍しい。










SplitTime  Diff  min/mile
05K 00:15:31  15:31  05:00
10K  00:30:46  15:15  04:55
15K 00:46:00  15:14  04:55
20K 01:01:46  15:46  05:05
HALF 01:05:13  03:27  05:05
25K 01:17:24  12:11  05:02
30K 01:33:16  15:52  05:07
35K 01:47:52  14:36  04:42
40K 02:02:43  14:51  04:47
Finish 02:09:25  06:42  04:55























































2015年10月11日日曜日

2015年日本癌学会観戦記

いつも書くことであるが、研究者として現役の頃よりよほど真面目に学会に出るようになった。もちろん学会に出席できる回数が極端に減ったことが大きく、一回の学会で出来るだけたくさんのことを知りたいからだ。3日間朝から夕方までほとんどどこかの会場にいた。昼はランチョン・セミナーを聴いた。自分がこの年齢でこれだけ真面目になれることが信じられない思いだ。driving forceは未知のものへの好奇心である。流行りの言葉で言うと「知の地平の拡大」とでもいおうか。とにかく面白かった。これに尽きる。

今回は名古屋であり74回の癌学会である。初めて参加したのが43回なのでもう30年以上になる。

学会に参加すると勉強になる。今回はできるだけ多くがんゲノムシークエンスの発表を聞こうと頑張ってみた。発表の中には聞かなきゃ良かったと思うものも多かったが、ためになるものも多かった。ためになる発表の多くは大学発の発表であった。一方諸がんセンターから発表された研究は???であるというのが小生の印象である。このセンターというのは複数の施設である。相当な研究費を使っているだろうに、世界と戦っていないのが情けない。あるいは目的がよく見えない。なかにはあまりに未熟なデータで恥ずかしくないのかという発表もあった。全部ではもちろんない。でも発表前にセンター内部で「恥ずかしいから止めておけ」という声が出なかったのか・・・そんな発表につきあわせられたのでたまらなかった。 5年後で良いから、きちっと落とし前をつけてほしい。小生は今回発表した発表者(発表施設)の今後5年の経過をきちっとフォローしていくつもりだ。いい加減なレベルで終わらせるわけにはいかない。
 

小生が今回の学会で面白かった話題は一細胞シークエンスである。ようやく話ができるレベルになってきているのがわかった。初日のランチョンセミナーでは近畿の西尾先生からcfDNAシークエンスの現状を聴いた。次いで午後のセッションで10数題のゲノムシークエンスの話を聞いたがあまりのデータの多さに15分程度の時間ではとてもその全貌をつかむことは難しいと感じた。そのような中で札幌医大病理の鳥越教授から子宮内膜癌が肉腫様変化を示す症例における一細胞シークエンス解析があったがこれはとても面白かった。病理はこんな素晴らしく面白いデータを、形態情報に戻す努力を(困難であっても)しなくてはいけない。それが21世紀の病理学だと思うのだ。

たくさんの報告を聞いてこの手のシークエンス情報発表の弱点だとは思ったことは、実験手技・精度がどれくらい担保されているのが今ひとつわからないことである。多くの発表でシークエンス深度が数百から1000を超えると発言していたが、小生にはこんな深度を必要とする研究が果たして信用できるのだろうかと逆に思ってしまうのだ。木を見て森を見ていないのではないだろうか?それとも深度を深めなくてはいけない、よほどの理由があるのだろうか?

sequence depthといえば、ほんの数年前までエクソームで30回〜、ゲノムでせいぜい100回というのが相場ではなかったのではないか? 

融合遺伝子についても現状がつかめてありがたかった。大規模シークエンスをやっても消化器癌ではやはりまれな変異であることが確認できた。rucurrentな融合イベントは少ない。更に多くは肉腫・白血病である。よほど特異的な抗癌剤(ALKomaのような)が出現したら、再度その遺伝子に限って融合イベントを徹底的に調べることは必要だろうが、今後包括的検索が必要であるとは思えなくなったのが小生の認識である。そろそろオシマイで良いかもしれない。

最終日のランチョンセミナーで東大の秋光先生が話した「トランスクリプトームデータの再解釈」はなかなか示唆に富むお話であった。miRNAやlong non-coding RNAの話に加えて3' UTRの長さのheterogeneityの話がなかなか面白かった。癌でpoly A tailの長さが異なる(したがって安定性に欠ける)mRNAが作られているという内容であった。

この他北大腫瘍病理の津田さんが発表した「再発膠芽腫の獲得変異の同定」という発表も面白かった。治療後の再発腫瘍のゲノム解析であるが、この中にmutually exclusiveという再発腫瘍が含まれていたので驚いた。初発腫瘍にあるドライバー変異を一つも持たない再発腫瘍というのである。これには本当に驚いた。癌ゲノムの時系列・進化学も幅が広い。癌腫によってかなり様相が異なるようなのだ。癌ゲノムの時系列・進化学は今後ますます大事なフィールドになると思う。

最終日の午後に小生がぶっ飛んだのは「がんのシステム的理解を飛躍させる挑戦的課題」という東大ゲノムの宮野先生のコーナーであった。二人目ののスピーカー医科歯科の岡田さんの「ビッグデータと疾患ゲノム」が聞きたくて参入したのだが、最初のスピーカーLuonan Chenさんの話にぐいぐい引きこまれてしまった。病気の発症前診断の話であるが、Omicsでいえば発症後の特徴的変化と全くことなる変化が発症前に起こっているという話だ。この魅力的なテーゼを「マウスの肺障害と肺炎」「肝臓がんの発症」「インフルエンザの発症」「糖尿病」という4つの疾患に分けて語ってくれた。必ずしもわかりやすい英語ではなかったが、僕の周りでも食い入るように魅入られている聴衆が多かった。こんな聴衆をみるのは久しぶりだ。もちろん僕も一語も聞き漏らすまいと必死である。一人25分の枠だったのに40分くらい喋らせた宮野教授も偉かった。中国おそるべしである。あっぱれであった。

これは実に驚異的なテーマではないだろうか?今後の発展には注意深く見守っていこうと思った次第である。 

というわけで最終日に飛行機の時間さえなければまだまだ聞いていたかった今年の癌学会であった。学会は面白い。テーマを探しに行ってもあまりろくなことはないが、意外な出会いがたまらない。Luonan Chenって一体何者なのだろう?ぶっ飛ぶわ、この人。


(追記)Luonan ChenさんのいうDNB(Dynamic Network Biomarkers)というのはこんなやつだ。






論文の一つはこれ 





 


2015年9月30日水曜日

9月唯一の投稿

9月は前半に夏休みを取り伊勢神宮などにでかけてみた。確かに大変荘厳な場所であり、素晴らしいテーマパークであるが、もう少しご本尊に近づけないものかしら。いろいろ本を読んでみたが、江戸までの伊勢神宮と明治以降の伊勢神宮は随分違ったもののようだ。
もう少しおおらかな伊勢神宮に戻してみてはと思った。

その後も比較的休みが多かったが、当直はあるし大変な患者さんが多く入院してきたため、ブログへの余裕がなかった。

初診でいきなり最終ステージの進行がんの方がつぎからつぎへと入院してくる。しかも30代から50代の方と若いだけに、小生の悩みも深い。長く医者をやっているが、こんなのも珍しい。

2015年8月22日土曜日

世界陸上2015:男子マラソンの予想

マラソンが好きだったから世界陸上は興味がないわけではないが、昔ほど思い入れがないだけに、実は本朝あるなんて知らなかった。日本時間であと一時間後にスタートである。8月のこの暑さの中を、公害で強烈なスモッグの毒のような環境の中を走るアスリートはご苦労である。最近の世界陸上やオリンピックは半分が耐久レースであるから、マラソンも面白くない。さらにマラソンがそれも男子マラソンが長い大会の初日の最初の種目だというのだからマラソンもなめられたものだ。

選手のコンディションを考えると、このような世界大会は秋にやるべきだ。テレビ視聴率の良いサッカーや(アメリカの)バスケット、アメフトと堂々ぶつかってもいい。秋に正しくやるべきである。こんな体たらくになったのは、遠く米国ロサンゼルスオリンピックからなのだ。高速道路の上を走らせたり、シャワーの下を走らせたりといろいろあったが、過酷すぎて当時の実力者たちは実力を出せなくて敗退した。熱中症の映像で有名になったアンデルセン選手の大会である。マラソン後進国であるアメリカに(特にアメリカのマスコミに)遠慮なんかせずにやれ、やるべきだ。

それとマラソンが全ての競技の王様として別格だった時代を思い出したいものだ。マラソンのゴールが長い陸上大会の閉会式のクライマックスに設定されていた、あの優雅で誇らしい時代を取り戻そう。開会式には聖火ランナーが華を添える。閉会式はマラソンのゴールが有終の美を飾るあの時代だ。

久しぶりにIAAFのホームページを覗いてみたらマラソンのプレビューが載っている。このマラソンの予想記事を日本の大新聞に期待するのはもう無理である。翻ってIAAFやRunner's Worldなどのメディアは変わらず報道内容が従来と変わらない。日本の情報でかつては詳しいホームページがいくつもあったものだが、いまはどうなのだろう。「寺田式陸上競技WEB」なんかは2001年以来5000万ビューの来客を集めているが、数分前、久しぶりに覗いてみたが、今回はあまり熱心ではないようだ。

というわけで IAAFの予想記事を掲載してみる。日本の選手にも言及しているのがうれしい。今井雅人が髄膜炎で出場できなくなったのは残念であるが、藤原や前田には入賞してほしい。

忙しい方々に要約。注目国はケニヤとエチオピアに加えウガンダ(!)が有力あると書いてある。その次に出てくるのが我らが日本である


Preview: men’s marathon – IAAF World Championships, Beijing 2015


Marathons have always been notoriously difficult to predict. Adding to the complexity is that championship marathons are almost invariably run as races in unfavourable conditions while most of the assessable form comes from performances in cooler conditions and often with the substantial assistance of organised pace-making.

One thing that can be said is that the men’s marathon field in Beijing has a hard act to follow. The men’s marathon at the 2008 Olympics was a classic, won by Kenya’s late Sammy Wanjiru in Olympic record time in defiance of both his competitors and the warm conditions.

The men’s marathon will be the first gold medal decided in Beijing, with the race starting at 7:30am on 22 August, the first day of competition. The point-to-point course starts from Yongdingmen Gate and passes such landmarks as The Temple of Heaven and Tian’anmen Square on its way to the finish inside the Bird’s Nest.
Kenya will again have a strong hand to play in another Beijing championship marathon. Dennis Kimetto holds the world record, his 2:02:57 mark set in Berlin last year. Yet he holds little advantage over team-mate Wilson Kipsang.
Kipsang is the previous holder of the world record, the Olympic bronze medallist, and he beat Kimetto in finishing second to Eliud Kipchoge at this year’s London Marathon.
The third member of the Kenyan team is Mark Korir, the winner of this year’s Paris marathon.
So that’s the world record-holder, the immediate past world record-holder and winner of a major big-city race making up Kenya’s three.

Lelisa Desisa looks the strongest of the Ethiopian team. The 2013 world silver medallist, second in Dubai and winner at Boston already this year, he will no doubt be motivated to go one better and break an Ethiopian men’s global marathon drought which goes back to Gezahegne Abera’s consecutive Olympic and World Championships triumphs in 2000 and 2001.
Ethiopia has named four marathoners and has yet to decide its final three. The other possible team members are Yemane Tsegaye, second to Desisa in Boston, Berhanu Lemi, the winner in Dubai at the start of the year, and Endeshaw Negesse, winner of this year’s Tokyo Marathon.
Stephen Kiprotich has proven himself to be a formidable championship racer with marathon victories at the London 2012 Olympics (ahead of 2011 and 2013 world champion Abel Kirui and Kipsang) and the 2013 World Championships (defeating Desisa).
The Ugandan athlete ran a personal best in finishing second in Tokyo this year and has proven he can handle heat and championship racing. If he wins in Beijing it would be three consecutive global championship marathons, an unprecedented feat.
Japan is normally prominent in World Championship marathon running, but has lost the fastest of its selected trio, 2:07:39 man Masato Imai, through illness. With no reserve named, that leaves experienced pair Masakazu Fujiwara and Kazuhiro Maeda as the two Japanese representatives.
Others who could feature include Bahrain’s Shumi Dechasa, European champion Daniele Meucci of Italy and Poland’s Henryk Szost

2015年8月17日月曜日

スクリャービン前奏曲集op11をYuja Wangで・・・


スクリャービンを聴く機会がなかなかない方に聴いていただきたい。

小生の若い頃スクリャービンというと『法悦の詩』という交響曲がかなり有名であり、というか、これが唯一レコード屋さんにあったスクリャービンだったような気がするのだ。法悦の詩というとまだまともだが、元の英語訳はエクスタシーなので随分物議を醸した交響曲だったのだ。

そんなイメージをお持ちのまま年を重ねられたクラシックファンもまた多かろうと思うのだが、実は小生スクリャービンはピアノ曲がすごくすごくよろしいのだということに最近気がついたのだ。

ここ数年小生のお気に入りのピアニスト「ユジャ・ワン」のおかげである。ピアノ曲を知らずにスクリャービンのことを敬遠されるのはもったいないと思う。少なくともショパンが好きな方なら、 スクリャービンのピアノ曲は無視できないと思う。何しろ小生の評価ではショパンを超えている。ショパンに似ているが、ショパンの亜流では決してない「20世紀のもうひとつのショパン」を是非聴いてほしいと思います。

ユジャ・ワンの最初の曲は前奏曲集の作品11のさらに11番であるが、これが気に入ったら前奏曲集全曲揃えてもいいと思う。24曲全てが良い。こんな作曲家がいたのだ。私は幸せな気分です。

2015年8月16日日曜日

お盆の診療は「楽」・・・ではなかった

今年はお盆に働くとことにした。この7日間は休みなしである。さすがに外来は患者さんが少ない。しかし、しかし少ない割には大物がくること、くること。

  1. 28歳女子で右下腹部痛。典型的な虫垂炎の経過であり、また臨床像なのだけど、ダマされてはいけない。卵巣嚢腫の捻転であった。CTでみると10cmの嚢腫の中に歯と思しき石灰像が見える。奇形腫なんだろう。すぐに婦人科へ。


  2. 巨大な腹壁瘢痕ヘルニア(33年前の胆石術創)。あまりに大きすぎてイレウス症状はすぐに収まったけど、そうそう嵌頓など起こしそうにない。今回は手術なしでお引取り頂いた。


  3. 「胆石発作」だとわめきながらやってきた中年女子。早速お腹を診察すると左側腹部に10cmの緊満した皮下腫瘤がある。圧痛はかなりのものだ。左である。??皮膚をよく見るとわずかに傷のあとが。「これどうしたの?」「小学生の時、入院して切ってもらった」「怪我なの?」「いや、腹膜炎だった」・・CTを撮るとこれも立派な腹壁瘢痕ヘルニアであるが、ヘルニア門は小さく、とても用手還納は無理であった。嵌頓であり緊急手術となった。中年女子の名誉のために言えば、確かに胆石の立派なものもございました。



  4.  小生にとって帯状疱疹は極めて日常的な病気の一つである。常時入院治療中の方がいるといってもいいくらいだ。今週入院してきたAさんも上肢の疱疹で典型的な症状なのだが、実は臨床経過が悩ましい。小生にとって初めての経験だ。最近は「帯状疱疹予防ワクチン」というのがある。先月のはじめにNHKの「ためしてがってん」で紹介されてから、当院の周りでも流行しているらしい。ちなみに小生はこれまで投与治療経験はないのである。さてテレビを診てワクチンを打たれた方のなかにAさんはいたのだ。つまりAさんは「帯状疱疹予防ワクチン」接種後の帯状疱疹発症ということになる。ワクチンの添付文書によると副反応としてなんと記述はあるのだ。接種後帯状疱疹の頻度は自然発症と頻度は変わらないとある。しかしねえ、実際にこの方を治療している小生としては、なんとも心境は複雑である。結構症状は重いのだ。絶対にPHNを起こしてはならない。細心の注意で先手先手の治療をするつもりである。


  5. お盆のシーズンには急性胃腸炎が多い。たいていは帰省客である。それもかなりひどい症状でやってくる。連休前まで連日極限まで仕事をして消耗しており、お盆でしかも故郷であるから羽目を外すからなのだろう、若いくせにメロメロである。



  6. Bさんは下肢閉塞性動脈硬化症でながくお付き合いのある方である。左下肢の切断術後の方でもある。右脳梗塞で左不全麻痺もある。そのBさんが「なんだか今朝からろれつが回らなくて」といいながらやってきた。Bさん呂律が回らないといいながら、長くお付き合いのある小生にもその変化がよくわからない。普通と変わらずちゃんとしゃべっている・・・ようなんだが。神経学的検査も一応やった。脳血管イベント後の方であるからなかなか難しいのだが。そこでMRIを撮ると立派な右の新鮮な小脳梗塞である。これには驚いた。むしろこの程度の症状ですんでいることに驚いた。QQ車で地域で一番の脳血管センターに行っていただいた。



  7. そんなこんなで連日入院があり外来があったのだ。結局昨日までの4日間で10人も入院させる羽目となる。全員小生が一人主治医であるから、なかなか消耗する。日曜の今日も今から病棟へ行くが、きっと昨晩の救急で一人二人は入院していることだろう。ちと憂鬱。

  8. おかげで(100%とはいわないが)お盆連休のくせに当院の病床稼働率は95%を割らない。3日前は99%であった。ボーナス特別表彰モノの活躍だと思わないか?


2015年8月15日土曜日

桜島の異変:8月15日の有村坑道伸縮計の変化について

桜島が急激な山体変化を示している。8月15日朝からの変化である。報道ではなかなかつかめない変化を気象庁の資料から探ってみた。

桜島にはその地下に様々な観測坑道が掘られているが、その一つが有村坑道である。この坑道には「伸縮計」が設置されており、桜島山体がきしむと、その変化が観測されるようになっている。下図はその変化が15日の朝9時過ぎから急激に認められることを示している。


























素人にもわかる変化である。遠くない将来にかなりの爆発が起こるのであろうが、住民・近隣諸侯はなるだけ早期の避難が必要と考えたほうが良い。


2015年8月13日木曜日

NEJM image:13歳女子の腹部腫瘤

13歳女子の肥満・腹部膨満である。


Images in Clinical Medicine

Constipation Associated with a Lipoma

C. Lamar Hardy, D.O., and Gilbert Goliath, M.D. N Engl J Med 2015; 373:656August 13, 2015








原発は腸間膜の脂肪腫であり、最終診断はシークエンスによるというのが現代風である。普通これだけ巨大だと「脂肪肉腫」であることが多いのだが、術後はuneventfullであると記述がある。でも心配だな・・・・・。


C. Lamar Hardy, D.O.
Naval Medical Center Portsmouth, Portsmouth, VA

Gilbert Goliath, M.D.
Thomas Memorial Hospital, Charleston, WV









2015年8月2日日曜日

大腿骨骨折を予防するにはプラリア?

大腿骨頚部骨折を毎年何人診ているのだろう?小生が診る病気の中では最も多い病気の一つである。

「病気か?それは」と言われる貴方は認識が低い。これは立派な病気である。骨粗鬆症という病気の最終段階の病態の一つだからだ。この病気の予防をすること、進行を抑えること、骨折に至らせないこと、最悪「First frarture is your last fracture (あるいは

Make Your First Break Your Last

)」 に留めることが肝要だと思うのだ。

骨粗鬆症には通常症状がない。最初の骨折が最初の症状である人は多いこの最初の骨折を「貴方の生涯の最初で最後の骨折にする」ことが現実的には最大の目標となる患者さんは多いということだ。

骨粗鬆症でのKey phraseとして最近の勉強会で教えてもらって気になることば。
  1. 椎体骨折は大腿骨近位部骨折の前兆である
  2. 大腿骨近位部骨折を起こす患者の多くが一年以内に対側骨折を起こす
  3. 母から娘への負の連鎖を断ち切る
これは予防へのキーワード なのだ。1は意味がある。特に無症候性圧迫骨折を腹部単純Xpで認めた場合は、多少厄介でも骨密度を測定して、骨粗鬆症の治療に入ろう。2は意味がありそうであるが、実際には予防薬介入が間に合うかどうかは疑問だ。3は大いに意味がある。遺伝的素因がどれくらいあるかわからないが、予防しなくてはいけない人々の選分にはなる。さらに「骨折母の介護で腰や足を痛める娘」は切実な問題だし。


さて骨粗鬆症の学会が活発である。ガイドラインを頻回に出している。2012年に出したかとおもいきや2015年版も最近出た。御同慶の至りである。

今回のトピックはお薬のことであろう。年々歳々「骨粗鬆症」に有効なお薬は増えていく。専門家でない小生は何を使ったら良いのか本当のところは悩ましいのである。個人的な事情で「プラリア」とは相性が良いので小生の患者さんには「プラリア」が使われることが最近は多い。

「プラリア」使用は気を使う。注射薬だし、高いし、低カルシウム予防のデノタス・チュラブルというほぼ「専用薬」を飲ませなくてはいけないし。しかし小生には相性が良いのである。患者さんに感謝された経験は重いのでこの薬は気に入っている。

だから客観的なこの評価が知りたかった。もちろん「第一三共」の資料は読んでいるが、販売元だから3割増しくらいで間引かないと・・・。

さて 「骨粗鬆症」の薬効には4つのエンドポイントを設けているのが学会である。
  1. 骨密度
  2. 椎体骨折
  3. 非椎体骨折
  4. 大腿骨近位部骨折 
以上を改善できるかあるいは予防できるかというのが指標である。小生に言わせればやはり4が重要である。あ〜だこ〜だ言われても4のリスクを軽減できない薬なら意味がない。それくらい大腿骨折は重い。人生の後半をすっかり変えてしまう。だから4が全てである。そんな見方をしたくなる。最初の骨折を「貴方の生涯の最初で最後の骨折にする」ことが現実的には最大の目標となる患者さんは多いということなんだけど、その際予防薬として4に効果が無い薬はいかがなものかという話である。

自分の母親にどの薬がふさわしいか皆さんならどう考えますかね。

そんななか2015年改定版の評価表である。



























「大腿骨近位部骨折」に対する評価が得られている薬は3種類しかない。
  1. 「プレマリン」 (女性ホルモン)
  2. 「ボナロン」「フォサマック」「ベネット」「アクトネル」(ビスフォスフォネート)
  3. 「プラリア」(抗RANKL抗体)

使いにくい薬なら医師が積極的に使いやすいように誘導することが肝要。プラリアはなんといっても半年に一回打てば良いので楽ではあるが、逆に患者さんを外来に引き止めておくための何らかの理由がない場合(高血圧や糖尿病など)、治療が中断する可能性がある。プラリアは半年に一回打てば良いので楽であるが、デノタス・チュラブルを毎日飲ませなくてはいけないなら、結局同じであろうという意見もあるだろう。

じゃ、何を基準に選ぶの?

そのためのガイドラインということである。私は使いたいと思う薬なら多少厄介でも使う。

Make Your First Break Your Last

 

 

閑話休題 

 


最近お気に入りのドイツ映像界から
 Erik Johanssonの世界をどうぞ!



 


2015年7月22日水曜日

マックの自衛策

  1. 8GB以上のメモリースティックを何本も購入。「Lion」 「Moutain Lion」 「Marverics 」「Yosemite」それぞれ専用のインストールUSB memoryを作成。(これでいつでもどの時代にでも戻れるのだ)

  2. (閑話休題)インストールUSBを作るのは、実はそんなに簡単ではない。参考のために「Mountain Lion」用のディスク作成参考ページをnoteしておく。


  3. 500GB程度のハードディスクを2個新しく購入。取り敢えずCarbon Copy Clonerというソフトをダウンロードして、これを用いて外部HDDにマックの中身をすべて移す(コピー)する。大事なのは外部から立ち上げることが可能なディスクにすること


  4. (閑話休題)最近のマックはアップルストアが公式には認めないソフトのインストールを拒絶することに初めて気がついた。Carbon Copy Clonerもそんなソフトの一つであるが、その割には最近のマックのムック本には登場して有名なのだ。おかしいな。小生がダウンロードすると、最終段階で拒否される。おかしいな。ようやく辿り着いた回避策はこれだ。「システム環境設定」→「セキュリティーとプライバシー」 →「一般」の画面。よく見ると下のカラムが薄ぼんやり。ここにダウンロードしたソフトの実行許可が載っている。左下の「変更するにはカギ」をクリックすると薄ぼんやりが鮮やかな色に変わり、Carbon Copy Clonerが使えるようになるという仕組みだ。自分で責任を負うならよろしいと。これだけのことを発見するのに実は相当の時間がかかっている。


  5.  先日古くて保障の対象外であるマックはどうすることもできないと書いたが、ネットで探すと「自分でHDDを買ってきて入れ替える方法について」解説するページがある。例えば小生の「iMac Early 2008」であれば、こんなページが存在する。購入するHDDについては、こんなページがある。いずれも自己責任であるが、でも大型ゴミで捨てる前に一度は試みても良い。

  6. アクセス権の修復:前回マックが調子悪くなるにつれ、アクセス権が壊れているファイルが急増した・・・と書いたが、これを修復するにはディスク・ユーティリティ(あるいはOnyXという有名なソフト)が便利である。実はこれにも追加情報があり、修繕できないファイルもあるというのだ。修繕できなくても無視して良いファイルの一覧がアップルのホームページにあるのでnoteした。


  7. いすれにせよ比較的冷静に対処できている大きな理由はTime machineを初めとして、複数のデータ保存を行っているおかげである。これと「そっくりそのままHDDコピー」を行っているからだ。データがなくなったとしたら、取り返しがつきません。最近では自宅のコピーを職場に、職場Macのコピーを自宅に保存することにしている。火事にでもあったら大変だからだ。写真と音楽と落語のファイルはかけがえがないからなあ。

2015年7月19日日曜日

Macintoshに物申す

Macintoshに物申す

といいたい。初めてIIciを使ってから24年くらいになり、これまであまり文句らしい文句もなかったのだが、この一月の出来事には物申したい。手元にマックは3台あった。職場にiMac、自宅にiMacとMac Book Airである。いずれも7〜8年使っている。これが先月のある一週間の間に立て続けに不調となった。あまりの急な出来事に、ウイルスかもしれないと思った。ただ小生マックユーザーにしてはいささかウイルスには神経質であり(なんせ24年の間にはウイルス感染被害にあったことは2〜3回ある)カスペルスキーの抗ウイルスソフトは常駐させており、週に一回は最新のチェックは受けていたのだ。

  1. 最初に死亡したのは自宅の iMacである。2008年版でMoutain Lionで動かしていた。確かにファイルのアクセスに時間がかかったり、ファイルのオープンにやたら時間がかかることもあり、そろそろ買い換えようかなと思いつつ使っていた。
  2. option+restartでrecovery discに戻り、ディスクユーティリティからアクセス権の修復を行うと、やたら多くのファイルのアクセス権が壊れている状況は続いていた。右側のファイル修復では不思議と壊れたファイルはない。
  3.  アクセス権破壊は当初はiTune関連ファイルに多かったのだが、そのうち周辺ファイルに及ぶようになり、日に二度試みたこともあった。だいたいこの辺りで「事態は最終段階に近づいている」なあとは思っていた。
  4. いたが、通常業務は使えていたので、バックアップを念入りに取り(Time capusuleとHDまるごとコピーの二段構え)その日を待っていたら、ついに立ち上げが不能となった。
  5. そこでApple storeに電話をしたのだ。この電話が繋がった先が「札幌」なのである。コールセンターが地元と無関係に置かれている。いかにもアメリカである。最初に告げられたのはApple storeではなく近くの「量販店」の補修コーナーだった。どこにあるのか詳しく聞いても埒が明かない。それはそうだろう、地の利がないだけに、要領を得ないのだ。
  6. ようやく分かった「量販店」にあの重い iMacを持ち込んで、backyardに持ち込まれ10分位して店員がいうのが「お客さん、ハードディスクがやられているようです。このマックはビンテージなので、これ以上どうしようもありません」「HDDがダメだろうとは予想していた。データは別に保存しているから、データ修復等は要らないからHDDを交換してくださいな」とお願いすると「ビンテージはアップルから触ってはいけないと言われていますので・・」との答えである。だいたい「ビンテージ」って何よ?いろいろやりとりしていてわかったのは「部品の保存期間」が5年になっていること、「古い時代遅れのマックに搭載可能なHDDは手に入らない」(馬鹿野郎、探せばいくらでもあるだろう、ネット上に)ということだった。
  7. 「でも僕はこのマックを修繕したいんだ」といくらいってもダメだった。「アップルストア」に行ってくださいと言われた。重い「ビンテージマック」を抱えて、そこから500mくらい離れた「アップルストア」に出かけた。嫌な予感はしたが、根性で行ってみた。
  8. 案の定「予約がないとだめです」である。 
  9. ネットで予約をとって(5日後である!)仕事の帰りに持ち込んだが、やはり「ビンテージマック」はどうしようもないの繰り返しである。
  10. 僕が言いたいのはマックの保証期間と補修可能期間についてもう少し詳しく丁寧な案内があってもいいだろうということである。このへんがいかにもアメリカの企業なのだ、今のアップル・ジャパンは。なんど足を運ばせればいいのだ。
  11. 「7年も故障なしで使えたからいいじゃないか」 という意見にはくみしない。日本で商売したいのなら、もう少し丁寧な案内をしなさいよ。まったく。
  12. というわけで、全く久しぶりに iMacを買いました。Yosemiteという最新のOSXをしょうがないので付き合っているが、これにも文句があるのだ。
  13. 最も腹がたったのは「写真」というデータベースである。ちょっと前までiPhotoといっていたあのソフトデータベースである。10年以上じっくり溜め込んで丁寧にキャプションをつけていた私のフォトライブラリーをズタズタにしやがって!まずキャプションがそっくりなくなってどこかに飛んでいってしまった。使い勝手が極めて不良である。
  14. 昔の環境に戻りたい人には丁寧に案内してくれれば良いのに、それはやらない。OSが上がった時に「暴力的」に新しい環境に合わせろという今のやり方には全く馴染めないのだ。 
  15. 僕にはOSはMoutain Lionあたりが最も使いやすいのだ。OSのダウングレードを真剣に考えている今日このごろである。かつてMarvericsになった時に一回ダウングレードした経験はあるのだが、今のマックは「購入時のOS」の縛りがあるようで、それなら古い「生きたビンテージマシーン」をネットで買ってもよいとすら思います。
  16. ジョブズがいなくなって、アップルの「洗練」も次第に擦り切れ始めているような気がする。ああいやだいやだ。

2015年6月26日金曜日

LECSという内視鏡と腹腔鏡の合わせ技について

LECSという内視鏡と腹腔鏡の合わせ技について最近よく聞くようになった。

自分の持ち患者で最初に関係したのは二年前の正月頃にお見えになった42歳女性の噴門部GISTであった。boring Bxでは低悪性度であったため胃部分切除を考えたのだが、結局全身麻酔で腹腔鏡手術を行いながら、胃内視鏡でアシストするという手技で大した侵襲もなく切除ができたのだった。これが小生にとってのLECSの初の症例であった。

最近十二指腸腺腫で15mmくらいあるやや怪しげな症例にであった。昔ならばPD(膵頭十二指腸切除)も考えるような症例であるが、これは上手な内視鏡医にESDをお願いしたところ、LECSが良いのではないかと逆にサジェストされた。

LECS: Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery のことである。

現在どのような症例が対象になるのかしらべてみた。

腹腔鏡内視鏡合同手術研究会



というのが5年前くらいからあり今年の10月には12回目が開かれるという。消化器外科医と内視鏡医がコラボするというのだからたいしたものである。適応症例がどんどん拡大するとは思えないが、現状どんな病気が対象になるのであろうか?


研究会の抄録を8回分読んでみた。

その結果対象のほとんどは

1)胃粘膜下腫瘍
2)十二指腸病変


であることがわかった。なるほど小生の2例はこれらに当てはまる。

この他には

横行結腸巨大脂肪腫(結局開腹しても良かったのでは?・・と思われるなあ)
食道平滑筋腫(粘膜下腫瘍)などが僅かに報告されている・

今後はくれぐれも無理はしないでくださいね。と申し上げたい。

でも

1)胃粘膜下腫瘍
2)十二指腸病変

特に解剖学的に問題のある症例には絶大な効果があるというのは小生の症例で実感できた。これは本当である。


2015年6月24日水曜日

CSCI(オピオイド持続皮下注)のprotocol

CSCIとはオピオイドの持続皮下注だが、そのprotocolをメモしておく。

最近は我が社のinfusion pumpが新しいものに変わり、特にレスキュー法が更新されたので。

我が社ではフェンタニルかオキファストがよく使われる。


2015年6月14日日曜日

聴くとは、動けなくなることだ。





















ここから引用。

とても良い言葉である。 ひとは音を、言葉を、楽曲を、選んでしまう。絵も写真も文字もそうだ。視覚的にも選んでしまうようだ。端的にいえば、聞きたいから聴く。見たいから観る。でも時にハッとする。聞きたいとも、見たいとも思っていなかったものに出くわして。

さて、ハッとすることがなくなった自分に気がつくことになったらずいぶん寂しいことだろう。これからも身じろぎできないような瞬間に出会いたいものだ。

鷲田さんの折々の言葉は順調だ。鷲田清一先生は阪大総長時代にその講演をお聞きしたことがあるが、素晴らしいお話だった。それこそ身じろぎできなかった思い出である。総長にこのような人材(失礼!)を持ってこれる大阪大学の懐の深さには感心した。鷲田先生のお話は「とてつもなく深い真理」を18歳の高校卒業生の体の深いところに注ぎこむというようなお話であった。気持ちよく聞いていられるが、聞いた当初はわからない。20年くらい経つとじんじん効果が現れるというような話である。こんな話は理系の先生からは聞けないなあと今更ながら思うのは、最近国が大学の文科系学部を縮小(廃止?)するとかいう政策を打ち出したからだ。

この「折々の言葉」のようなコーナーに文科系のエッセンスーひとつの極致が現れていると思うのだが、このようなものが無駄だと思うひとがいるのだろうね。とんでもなく残念なことである。鷲田清一先生のような方を一人産むのには同じような志を持つひとが1000人はいるだろう。このようなことを述べているのが、最近の内田 樹である(たとえば「旦那芸について」)。小生は「保守」という言葉があまり好きではないが、鷲田さんや内田さんの考えておられることの根幹はまぎれもない保守のような気がする。彼らの言葉が好きな小生は、実は「保守」なのかしら。

内田さんも頑張っているのに最近はマスコミが無視を決めている。一時は「朝日新聞」もよく投稿を取り上げていたが、久しく投稿を見ない。ここ二〜三年くらいは大江健三郎とも疎遠のようだし最近「朝日新聞」まで転向しているような気がしてしょうがない。そんなことをしたらますます売れなくなりますよ朝日さん

今頑張っているのは憲法学者の先生方である。「曲学阿世」にはなりたくないという矜持があふれている。

2015年5月14日木曜日

最近のHans Cleversとの質疑応答:nature outloolk 最新号:免疫もいけるよ!



ちょっと持ち上げすぎかもしれないが、このブログは2007年にClevers_Lgr5最初の論文の話題から始まり、ある意味ではCleversとともにあるので興奮をお許しください。全く素晴らしい研究成果としかいいようがない。小生もまた研究生活に戻りたくなってきましたぜ。

最近のHans Cleversとの質疑応答
http://www.nature.com/nature/journal/v521/n7551_supp/full/521S15a.html 

 
オルガノイドの応用例として免疫治療のターゲット細胞というのが挙げられていたが、これは素晴らしいよね。
臨床免疫をやっている人間なら夢のターゲットである。

ヒト免疫研究の最大のネックは「客観的治療効果判定システム」が存在しないことであった。zeno、alo治療対象細胞は「一応」存在するが多くは細胞株であるから(昔はRajiやK562あるいは多くの腫瘍細胞株、今のそのレパートリーは知らない)掻靴掻痒であった。autoの系は細胞自体が不安定だしね、とてもターゲットとしては信頼に足らない。しかしHLAがからむからどうしても自己細胞で安定してrepeatableに再現確認実験がやりたいのは皆が数十年望んできたことだ。20例連続して体外増幅可能な自己腫瘍細胞系が可能なシステムというのは「臨床免疫家」にとっては夢のシステムである。

自己の腫瘍細胞、自己のT-B-免疫細胞システム、樹状細胞系・・・これがvitroで再現できるのだ!A研究室でやった成果がB研究室で再現できる、3年後でも再現できる。夢のようだ。




2015年5月12日火曜日

Clevers今度はCell:大腸癌のバイオバンク:連続20症例の経験

前回Cleversが素晴らしい論文を公表したとnoteしたら、今度は同じCleversの所から大腸癌臨床例で20例連続オルガノイドを作成(癌と健常上皮べつべつに・・)したとの報告である。オルガノイドはオリジナルの癌をほぼ模倣するようだ。

なによりもとても良い薬剤感受性サンプルになる。感心したのは最後のc-mab治療とras変異の相関である。従来の学説どおりなのである。 

これは臨床に使える。

2015, Cell 161, 933–945 May 7, 2015

Prospective Derivation of a Living Organoid Biobank of Colorectal Cancer Patients

Marc van de Wete, ・・・・・・and Hans Clevers

SUMMARY 

In R spondin-based 3D cultures, Lgr5 stem cells from multiple organs form ever-expanding epithelial organoids that retain their tissue identity. We report the establishment of tumor organoid cultures from 20 consecutive colorectal carcinoma (CRC) patients. For most, organoids were also generated from adjacent normal tissue. Organoids closely recapitulate several properties of the original tumor. The spectrum of genetic changes within the ‘‘living biobank’’agrees well with previous large-scale mutational analyses of CRC. Gene expression analysis indicates that the major CRC molecular subtypes are represented. Tumor organoids are amenable to high-throughput drug screens allowing detection of gene-drug associations. As an example, a single organoid culture was exquisitely sensitive to Wnt secretion (porcupine) inhibitors and carried a mutation in the negative Wnt feedback regulator RNF43, rather than in APC. Organoid technology may fill the gap between cancer genetics and patient trials, complement cell-line- and xenograft-based drug studies, and allow personalized therapy 

当該研究の概要は上記シェーマで一目瞭然。腫瘍と周辺健常組織からオルガノイドを作り、vivoをvitroへ移行する。一旦移行されたオルガノイドは増殖可能であり,様々なomicsが測定可能である。もちろん新薬(既存薬も)のスクリーニングにも最適である。




これがオルガノイドの写真である。上が原発巣のHE、下が対応する症例由来のオルガノイドである。症例7、8、17の写真。オルガノイドが球形(環形)をしているのがよくわかる。構成する細胞のある割合はlgr5陽性の幹細胞なのである。

これは症例オルガノイドを用いた治療実験である。上のAはNutlinによる治療、下は抗EGFR抗体であるCetuximab(我々ちまたの臨床家には通称”c-mab”と呼ばれている極めて日常的な分子標的薬)。右上はp53の変異症例と野生型による感受性の違いが見事だ。下右はkRAS変異の有無によるc-mabの感受性の差。これも見事である。

2015年5月7日木曜日

Cleversのところから素晴らしいヒト発癌モデル:nature


Cleversのところから4つの遺伝子を改変したヒト発癌モデルがnatureに登場した。なにげなく登場したが、この論文は凄いと思う。ヒトの大腸癌はある種の細胞にいくつかの遺伝子が突然変異を積み上げていくと発生するのだということが、わかるのである。違和感なく、初めてわかったような気がするのである。

なにをお馬鹿なことをいまごろ言っているのだと思われるかもしれないが、30年くらいこの世界にいて、これを実証してくれた論文におそらく初めて出会ったような気がするのである。ノックアウトの実験モデルとはことなるのである。min mouseでもない。体細胞(突然)変異モデルなのである。こんなことができるのだなあ。CRISPR/cas9システムは強力だなあ。

多段階発癌モデルは正しいのである。

さて、この論文を一方的に賞賛するのは片手落ちであるので、先にもう一つ2月にnature medicineに出た(今もオンラインかな?)慶応消化器内科の股野麻未/佐藤さんちの論文も紹介しておかないといけない。佐藤さんはCleversのところで立派な仕事をいくつもされた慶応の内科の先生であるが、Cleversの今回の論文とほとんど同じ方法論で大体同じ結論を得ている。

先に股野麻未/佐藤の論文の要旨をいうと
  1. 正常大腸幹細胞(lgr5陽性細胞)は体外に出してもWNTシグナルやR-spondin等々の薬味が加わった培養液中ではオルガノイドとして培養可能である。
  2. CRISPR/cas9システムを使ってこの細胞のAPC, KRAS, SMAD4, p53, PIK3CAに次々に変異を加えていく。
  3. 一つ加わるごとに先ほどの薬味が一つずつ不要になる。最終的には一つも要らなくなるわけだが、これをマウスに移植すると腫瘍を作る。
  4. この時正常大腸幹細胞由来のオルガノイドでは大腸癌を作ることができた。しかし転移をおこす腫瘍には至らなかった。
  5. 出発とする細胞をヒトの大腸腺腫由来の幹細胞にすると3つの遺伝子を変化させただけで肝転移モデルを作ることができた。以上が股野麻未/佐藤の論文である。

Cleversのところから出た論文では
  1. 出発点はあくまで正常大腸幹細胞(および十二指腸粘膜幹細胞)のみである。
  2. CRISPR/cas9システムによる変化の対象は4遺伝子APC, KRAS, SMAD4, p53でありPIK3CAは出てこない。
  3. 結果3遺伝子改変では良性腺腫と同様の腫瘍を形成することができ、
  4. 4遺伝子だと浸潤性の大腸癌を作ることができた。これが Cleversの結論である。
  5. 転移について触れられていないので、転移モデルは出来ていないと言うことであろう。

どちらも素晴らしい論文だと思う。(実は大腸粘膜だけでなく十二指腸粘膜からもオルガノイドを作成 CRISPR/cas9改変モデルを作り腫瘍作成にいたる実験もあり、この論文の説得力はかなりのものだ)。

転移に関しては 股野麻未/佐藤の論文は若干無理があると思うが、基本の流れは素晴らしい。

幹細胞を用意し、癌遺伝子を変異させ、癌抑制遺伝子を破壊することをいくつか続けて行くと発癌するのである。

できあがったvivoの腫瘍でのasymmetrical divisionがどうなっているのか知りたいな。

Nature
521,43–47 (07 May 2015)

Received 11 November 2014
Accepted 16 March 2015
Published online 29 April 2015

Sequential cancer mutations in cultured human intestinal stem cells


Jarno Drost, Richard H. van Jaarsveld, ・・・and  Hans Clevers

要旨:腸陰窩の幹細胞は腸の新生物の起源細胞である。マウスとヒトの腸幹細胞はどちらも、幹細胞ニッチ因子であるWNT、R-spondin、上皮増殖因子 (EGF)およびノギンを含む培地で、長期間にわたって遺伝学的および表現型的に安定性した上皮オルガノイドとして培養できる。今回我々は、 CRISPR/Cas9技術を用い、培養ヒト腸幹細胞で、大腸がんで最も変異頻度の高い4つの遺伝子[ APC P53 (別名 TP53 )、 KRAS および SMAD4 ]の標的遺伝子改変を行った。培地から個々の増殖因子を除去することで変異オルガノイトを選択できる。この4つの変異を持つ変異体は、幹細胞ニッチ因子全 てに依存せずに増殖し、P53安定化因子nutlin-3が存在しても生存できる。この4つの変異を持つ変異体をマウスに異種移植すると、浸潤がんの特徴 を持つ腫瘍として増殖する。さらに、 APC P53 を合わせて欠失させるだけで、腫瘍のプログレッションの特徴である広範な異数性が出現する。 
 
Crypt stem cells represent the cells of origin for intestinal neoplasia. Both mouse and human intestinal stem cells can be cultured in medium containing the stem-cell-niche factors WNT, R-spondin, epidermal growth factor (EGF) and noggin over long time periods as epithelial organoids that remain genetically and phenotypically stable. Here we utilize CRISPR/Cas9 technology for targeted gene modification of four of the most commonly mutated colorectal cancer genes (APC, P53 (also known as TP53), KRAS and SMAD4) in cultured human intestinal stem cells. Mutant organoids can be selected by removing individual growth factors from the culture medium. Quadruple mutants grow independently of all stem-cell-niche factors and tolerate the presence of the P53 stabilizer nutlin-3. Upon xenotransplantation into mice, quadruple mutants grow as tumours with features of invasive carcinoma. Finally, combined loss of APC and P53 is sufficient for the appearance of extensive aneuploidy, a hallmark of tumour progression. 

Nature Medicine

Received 27 June 2014
Accepted 14 January 2015
Published online 23 February 2015 

Modeling colorectal cancer using CRISPR-Cas9–mediated engineering of human intestinal organoids 

Mami Matano, Shoichi Date, ・・・・・and  Toshiro Sato 

Human colorectal tumors bear recurrent mutations in genes encoding proteins operative in the WNT, MAPK, TGF-β, TP53 and PI3K pathways1, 2. Although these pathways influence intestinal stem cell niche signaling3, 4, 5, the extent to which mutations in these pathways contribute to human colorectal carcinogenesis remains unclear. Here we use the CRISPR-Cas9 genome-editing system6, 7 to introduce multiple such mutations into organoids derived from normal human intestinal epithelium. By modulating the culture conditions to mimic that of the intestinal niche, we selected isogenic organoids harboring mutations in the tumor suppressor genes APC, SMAD4 and TP53, and in the oncogenes KRAS and/or PIK3CA. Organoids engineered to express all five mutations grew independently of niche factors in vitro, and they formed tumors after implantation under the kidney subcapsule in mice. Although they formed micrometastases containing dormant tumor-initiating cells after injection into the spleen of mice, they failed to colonize in the liver. In contrast, engineered organoids derived from chromosome-instable human adenomas formed macrometastatic colonies. These results suggest that 'driver' pathway mutations enable stem cell maintenance in the hostile tumor microenvironment, but that additional molecular lesions are required for invasive behavior.



2015年4月23日木曜日

虚は実なりて、実は虚のままにて、虚実は被膜の内と外・・・



上は実写にしか見えないCG

下はCGにしか見えない実写である。

ともに凄いが、ボクは下の実写が好き。これぞドイツ魂だな。






 更にこれもよいな




2015年4月19日日曜日

外科学会訪問記:血管外科と救急外科

小生が初めて外科学会に参加してから30年以上たつ。最盛期には癌学会を初めとしていくつの学会・研究会に参加していたか判然としないが、この年齢まできて、学会参加の意欲も時間もなくなってきつつあるなか、それでも年間いくつか出席する学会のひとつに外科学会があるのは、実はこの学会が面白いことを発見したからである。最近ますます面白くなってきた、小生的には。本当にためになるのである。

若い頃は忙しくて学会にまともに参加できる時間などないので、自分の発表する日の朝出かけ、発表が済むと、直ぐに帰ることが多かった。頑張ってもせいぜい一泊二日であった。自分の関連領域しか興味がなく、学会なんて面白くもなんともなかった時代が長かっただけに、この年で学会に目覚めるというのは実に意外である。

面白くなった理由の一つは、逆説的ではあるが「学会が真面目になった」からであろう。あるいは治療が進歩していると実感できるようになったからであろう。あるいは本当の意味で学際がワークしだしているからであろう。

もちろん研究費を初めとして獲得資金がますます逼迫しているはずの外科学会当局がこのような学会を毎年開催していくというのは、本当に大変だろうと思う。そのためか全般的に今年の学会は地味であったが、演目、フォーラム、特別講演は私にとっては非常に時宜にかなった有益なものであった。勉強になった。感謝したいと思う。自分がいつも関係している消化器・乳腺についてはあまり斬新なことはなさそうであったので、そんなセッションには参加していない。

ことし面白かったのは血管と救急であった。

血管の覚書
  1. 局麻で胸部大動脈瘤の治療をする時代になった。慈恵の大木先生は年間500例前後のステント手術を日本に戻ってきてこの10年くらいやっているが、彼のセッションで今年2015年4月のオペスケジュールというのが紹介されていた。先週の月曜日の予定であるが、朝9時半に始まりほぼ7時間で胸部・腹部大動脈瘤のステント手術を6件もこなしている。夕方4時半には6例目が終了している。これは驚異的である。こんなことが出来るようになったのも、ステント材料の進歩(細径になっていく)と局所麻酔で済ませられる症例が増えているからだろう。


  2. ステント材料についてはこれを開発していく過程で、日米(あるいは日欧)の承認時間差の大きな問題が現在克服され始めているとのことだ。彼を初めとして日本人が開発の中心に立ち、治験症例のかなりの数を日本国内でこなすことで、今年あたりから出てくる器材ではものによっては、欧米よりも国内で先に認可される製品もでてくるだろうとのことであった。手術材料が国内メーカーから得られる時代も夢ではなさそうである。


  3. こまかな技術的なことを言えば、最近のステントの特徴は、サイズの多様化、頚が振れるようになっているもの、チムニー(煙突),シュノーケルなどがトピックのようだ。チムニーといわれるステントを細径動脈(腎動脈、頸動脈や腕頭動脈)に先に入れておき、次いで大口径のステントで瘤や解離をバイパスするという方法であり、上行大動脈や弓部大動脈瘤への治療手段である。


  4. double chimneyやsnorkelに加えEVARやTEVARなどの(一見)専門ジャーゴンオンパレードの分野であるが、実はフォローするのはたいしたことではない。double chimneyはストローが二本だし、シュノーケルは大きなステントからシュノーケル様に二本の管が飛び出しており、例えばこれを腎動脈に挿入するわけだ。EVARやTEVARはそれぞれEndovascular aortic repairとThoratic endovascular aortic repairのことでこの手の治療の総称である。


  5. これくらい知っておればあとは「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2011年度版 」を参考にすれば、この世界の現状・概要はつかめるのだ。


  6. 小生のような病院にいても、年間何人かは大血管の緊急症を診る。最善はステントの上手なドクターのいる病院へ最短時間で送り込むことである。実際どの病院がアクティブなのか。これを知るにはゴア社のMRに尋ねるのが一番かもしれない。 いろんなサイズのステントを常備して、緊急に対応出来ている病院は日本全国でたった4病院なんですって、現状。
救急の覚書

  1. 救急医療の中でも外科の関係が深い領域はACSと呼ばれる。Acute Care Surgeryの略である。今から10年くらい前に米国で話題となったのは「助かったはずなのに結果的に死亡した外傷患者」の存在である。
  2. これをPTDという。Preventable Traumatic Deathの略である。
  3. この方々をを何とかしたい。病院に来るまでに亡くなる患者、なんとか到着したがそのうち亡くなってしまう患者。
  4. 当時は無視できない数の患者が亡くなっていたのである。そこでACSというシステムが立ち上がった。
  5. 具体的に外科と救急が融合した新領域であり、3つの要素からなる
    1.   ●外傷外科 trauma surgery
    2.     ●急性腹症などを含む救急外科 emergency surgery
    3.     ●集中治療管理 surgical critical care
 
  1. 今回の学会ではこのACSについて大きな分科会が3つほどあったようだ。その二つに参加した。勉強出来たかと言えばじつは怪しい。期待したほどではなかったというのが正直な感想である。ただACSのかかえている問題点は痛いほど実感された。ACSをなんとか上手に育てて欲しいというのが偽らざるところであるが、これは相当困難な課題であるなと思った。


  2. 対象症例数の問題:まず外傷外科の大きな対象である交通外傷がこの10年減っていることは大きい。大都市近郊の救命センターで複合外傷で手術になるケースは年間を通してもそう多くはない。四肢の開放骨折と肝破裂に骨盤損傷(マルゲーヌ骨折のような・・)が加わったようなケースであるが、都会の大きなセンターでも、それほど多い訳ではない。対象症例が多くないのに人的リソースは充実させておかなければいけないのがきびしいようだ。若手外科医がバリバリ手術できる環境となればいいのだが、必ずしもそうでないようだ。

  3. システムの問題:救急は昔からあるし、救急外科も昔からあるが、それを統合してACSという実態を構築するのはなかなか大変なようである。まず救急は昔から麻酔科ベースであり、外科は一般外科が古くから関わっているが、この二つ決して仲がよろしかったとはいえないこと。救急車から直接搬送できる手術室を持つセンター。CTも撮らずにいきなり開腹するシステムをメインに打ち出すセンターと従来通りに診断をある程度きちんとつけて、開腹に望むべきだとする施設がディベイトするわけだが、議論をきいているうちその両者の置かれている環境がかなり違うことを意識せざろう得なかった。


  4. それぞれの救命センターの立ち位置によってACSの課題は大きく変わる。大都市ないしは大都市近郊の救命センターと地方の救命センターさらには大学付属の救命センターと自立型の(市町村立)救命センターでは対象症例も医師の心構えもかなり異なるように見えた。これを総合的に論ずることはかなり困難であろう。つまりはこうだ。助けを求めればいくらでも専門外科医がいる大学病院所属の外科医と自分が最後の砦であることを常に意識している地方救命センターの外科医の違い。あるいはイベント発症からどれくらいの時間で患者が運び込まれてくる施設なのかも問題である。つまり本来の意味でPTDが現れるセンターPTDは篩にかけられていて、そのセンターに到達する前に亡くなっているようなセンター。お前のセンターにはPTDは実は来てないんじゃないの・・・と言いたくなるセンターがありそうなのだ。

  5.  小さくない課題の一つは外科医の専門性である。各界を代表する救急外科医に意見を聞いたところ、高度に専門的な医師を揃えろという意見と、そこそこで良いという意見で分かれた。これも立ち位置によって求められる医師像は変わる。さらには今はいろんなタイプの外科医がいるからよいだろうが、今後はそんなことはいっていられなくなりそうだ。第一この腹腔鏡全盛の時代に、戦陣医学的なbig incisionタイプの外科医をどのように育てたら良いのだ?それとも麻酔科・救急医療出身の医師が開腹手術をやるような時代がくるのであろうか?(ありえないって??、本当にそうだろうか?)

  6. まとまりのない覚書であるがAcute Care Surgeryをなんとか上手にシステム化することは大きな課題だと感じた次第である。




2015年4月8日水曜日

尊敬する研究者「大野 乾」のこと

日本の生物学者でもっとも好きな先生を1人選べと言われたら、小生は大野乾を迷わず選ぶ。大野さんにはいろんな顔がある。いつかは書きたかった大野先生である。
  1. 真のゲノム科学者:大元祖遺伝子仮説の提唱者。これに附随して無脊椎動物から脊椎動物に至る過程で、ゲノムが2回重複し、4倍体となったことは、ほとんど常識になってきています。それは教科書的には、HOXのクラスターが無脊椎動物では1つであるのに対し、脊椎動物では4つあるということで説明される。この「ゲノムが2回重複し、4倍体となった」ことが生物の飛躍的進化の基盤となっている。


  2. 先のゲノム重複は論文以上に著書(1970年)で有名である。Evolution by Gene Duplication 国内では原書は手に入らないが、米国アマゾンでは今でも94ドルで手に入る(140ページのペーパーバックにしては高すぎるが・・・)


  3. この著書は国内では1979年に翻訳が出た。遺伝子重複による進化 」(岩波オンデマンドブックス)。これは今でも手に入るが7020円である。ちなみに小生が持っているのは岩波書店の箱入りの版で1999年の版であり3600円であった。


  4. ところが科学者としての生涯をほとんど米国、カルフォルニアで過ごしたため日本国内では実際には馴染みがなかった時代が長かった。


  5.  ゲノムが好きなヒトにはたまらなく魅力的な考えを提唱したヒトであるが、彼がその考えを一般書物(大いなる仮説等々)に出版したころ、同時に「遺伝子音楽」を発表し、日本国内でそちらの方が有名になったため「きわもの」扱いされることも多かったようで、このため大野先生はかなり損をしている。


  6.  大野乾は日本語の達人である。素晴らしい文書を数多く残している。重複がキーワードの先生であるから、基本モチーフは変わらず繰り返される。ナボコフの箴言はいろんな場所で繰り替えされる。日本語の本も多く書かれているが、小生が最も好きな文章を挙げると井川洋二が編纂した「生物科学の奔流」という1983年(昭和58年)の本に載っている「馬三昧、釣三昧、研究三昧」


  7. 英語も努力されたようだ。英語でちゃんとした文章が書きたいと望まれて、シェークスピアの真似はできないが、「ローマ帝国の衰退と滅亡」を書いたギボンくらいの英語を書けるように努力されたと述べている。


  8. 馬が好きな先生であることは有名だ。若い頃から馬を所有している。


  9. 皇太子の弟である秋篠宮の学位指導教官の1人であり実質的な博士論文↓であるのlast authorであることは有名である。Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jun 25; 93(13): 6792–6795.

    Monophyletic origin and unique dispersal patterns of domestic fowls.

  10.  この研究は東南アジアの家禽類の遺伝学的系統をゲノムを武器に明らかにしたものであり、小生は同時代的に非常に興味を持って見ておりました。(このころから大野博士は「実験医学」や「細胞工学」に登場するようになった)


  11. もうひとり小生が忘れることができない研究者がいて、それは現在阪大工学部の教授である四方哲也である。この方が現在何を研究されているかはよく知りませんが、カルフォルニアの大野先生のラボから四方さん帰ってこられた頃「試験管内にゲノム構成のことなる大腸菌を2種類いれて培養するとどのようにお互いが振る舞うか」という研究をされており、この研究に小生は尋常ならざる興味を引かれたのであった。いつごろだろう、1990年台後半であろうか?分裂スピードがかなり異なる二種類の細胞を混合培養したとき、当時の常識では片方が他方を駆逐すると考えられていた。この大腸菌は元々が同じ背景を持っており、当然生物学的に依存関係はない。クローン化して継代しているうちに、分裂スピードが異なってきたのである。これを四方氏はいろんな比率で、いろんな条件(温度、異なった培地)で混合培養したのだが、分裂スピードが緩やかなクローンであるが、いくら待っても駆逐されないのだった。当時の小生にはこれが衝撃的だったわけ。大腸菌の分裂スピードは皆さんご存じのようにかなり速い。ですから分裂スピードのちょっとした差が指数関数的に広がっていくことは容易に暗算できる。にも関わらず、ほとんどの培養環境で二つのクローンはある比率で定常状態になるというのである。面白くないですか?


  12. クローン(細胞株)だけ研究してても、癌の謎は解けないなと思った次第です。


  13. 確かに今の常識では例えば1人の膵癌には遺伝学的にいろんなクローンが混在していて(ダーウイン的進化??)それが癌の多様性を作っているし、治療困難性の原因であるとされているから、今の人々にはなんてことはない研究かもしれない。


  14. しかしこの研究ひたすら培養実験をしていた当時の小生には信じられないくらい、パラダイムがひっくり返るくらいの衝撃だった。こんな研究を大野ー四方はしていたのね。つまりですな、試験管内進化を彼らも見たかったのですな。

  15. その大野先生が最近再度西欧では再評価されているらしいOhnologue (Ohnolog)という言葉があるという。


  16. 以上の様々な事由があるので、小生には「大野乾」というのは最高の研究者なのである。 

    以下、秋篠宮の論文である。

 

 

 

 

 

 

Monophyletic origin and unique dispersal patterns of domestic fowls.