マウスは20120個と書いてあるな. チンパンジーは19000個? ヒトより42個少ないぞ!
先のフランシス・コリンズの論考の中の表1にヒトの遺伝子数を19042個と明記してあった。さりげないが、これは確信犯。これまでここまで数を明らかにした報告を知らない。この論文がゲノムプロジェクトのリーダーであったフランシス・コリンズの論文であることの意味は大きい。もちろん「数え方には色々あるし、なかなか蛋白コードを予想するのは難しいし、・・・」と言い訳は書いてあるが、敢えて数を明記したくれたことの意義は大きい。さすがに10年経ってヒト遺伝子の総数も出せないようじゃまずいでしょうな。
さてこれまでヒトの遺伝子総数は20000個前後というのが通説であった。ゲノムプロジェクトが完了して10年になろうとするのに、未だ総数が画定しない、確定したという報告がなかった。これはなぜだろう?皆さん不思議に思わなかったかな? 理由を以下に述べてみよう。
- 「遺伝子」とはなにかという定義が揺れ動いたこの10年であったこと。
- microRNAなどが見出され、修飾核酸(これも発現している)の扱いが判然としない。
- ゲノム上に蛋白をコードできるある一定の長さをもった配列が見出されることは多い。多くは未知の蛋白である。ゲノムのシークエンスを闇雲に積み重ねていったのがゲノムプロジェクトであるが、遺伝子があるかどうかは多くはコンピューターに判定させていたのが現状である。アルゴリズムに従ってある要件を満たすと「蛋白発現可能遺伝子」と判定される。発現遺伝子であるかどうかはEST libraryを見れば良いが、蛋白として発現しているかどうかは、直ちにはわからない。このような仮想遺伝子は山のようにあった。これをひとつひとつつぶしていくのには結構な労力が必要である。すべてが片づいたかどうか、小生は知らない。
- これは一番大きいのだが、ヒトの遺伝子数が他の生物よりも少ないことが「確定」してしまうことへの怖れ。プライドが許さない。
- よくいわれるスプライシングバリアントは話が別。スプライシングバリアントは一つの遺伝子から何本も違った蛋白ができるが、これはヒト以外でも当てはまる。
NEJM最新号より引用している。
Genomic Medicine — An Updated Primer
W. Gregory Feero, M.D., Ph.D., Alan E. Guttmacher, M.D., and Francis S. Collins, M.D., Ph.D
May 27, 2010
Number 21
Volume 362:2001-2011
http://content.nejm.org/cgi/content/full/362/21/2001
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