僕はなぜか臍の周りの子宮内膜症に縁があるようだ。といっても2例見ただけだが、その一人は先週来た32才女性で、前日から臍の上部(尿膜管って上にもあったか??)に1cm大の有痛性腫瘤を認めるのだった。圧痛はかなりのもの。皮膚の発赤はない。特徴的なことは前々日から生理が始まっていたこと。子宮内膜症は鑑別診断の2番目にはきます。抗炎症剤3日で痛みは取れたが「来月生理時に再度痛んだら切りましょう」といっておいた。患者さんには悪いが、来月が楽しみである。
子宮内膜症の種類
子宮内膜症は発生場所や形態で数種類に分類できます。
内膜症の最初の細胞発生は、目には見えないそうです。知らない間に内膜症内膜は発生し、それが数ヶ月か数年かわかりませんが、1mmほどの組織に発達していくわけです。
目で見える大きさになった部分を病変といい、病変が集合している場所を病巣というそうです。
①骨盤腹膜子宮内膜症
骨盤に守られた下腹部内の腹膜(奬膜)の表面に点在するもので、腹膜病変という表現がよく使われます。
腹膜というのは、お腹の内壁や臓器(とくに奬膜という)をおおっている、じょうぶな薄い膜です。
もっとも多くの人に存在する病変ですが、画像検査ではわからないものだそうです。表面にある病巣なので、癒着が発生しやすいようです。
発生率が高い場所は、ダグラス窩、卵巣、仙骨子宮靭帯、広間膜背面で、それ以外は子宮、腸、S状結腸、直腸、膀胱子宮窩、腹壁などです。
ダグラス窩というのは、人間が立ったり座ったりしたときにお腹の中でもっとも低い位置にあるくぼみで、男性では膀胱と直腸の間にあたる場所、女性では子宮後面と直腸の間に位置します。
仙骨子宮靭帯というのは、子宮をお腹の中に固定する靭帯の一組で、ダグラス窩近くにあるひも状組織です。
広間膜とは、子宮の外側をおおう子宮奬膜が子宮の左右に伸びて広がったものです。
②卵巣チョコレート嚢胞
卵巣の内部に血液の袋ができたものです。
画像検査だけで診断されがちですが、大半の人には①もあるそうで、近くの腹膜や臓器に癒着していることが多いようです。
嚢胞の袋の皮にあたるもの全体が病変ではなく、その一部だけが本当の病変です。さらに、チョコレート嚢胞のある卵巣の表面には、腹膜病変の小さなものがよくあるそうです。
のう胞が破裂すると、激痛と強い炎症反応が起こります。何cmで破裂するかは基準は無く、5cmで破裂することもあれば、20cmでもそのままのこともあるようです。
③深部子宮内膜症
腹膜表面から5mm以上潜って発達するもので、深部病変ともいいます。
ダグラス窩の奥に発生しやすいそうです。
①②ほどの発生率はなく、痛みが強いのが特徴だそうです。
④子宮腺筋症
子宮筋層内に広がっているものです。
子宮筋層全体に広がっているタイプと、筋層の一部にとどまっているタイプがあります。
痛みが強いという特徴がありますが、病変部位が量的に少なければ、痛くない場合もあるそうです。
月経量が増えたり不正出血が起こるのは、これと子宮筋腫の一部だけで、①②③⑤ではあまり起こりません。
⑤他臓器子宮内膜症
①〜④以外の子宮内膜症もあります。
皮膚(へそ、帝王切開や会陰切開などの手術の傷跡、鼠蹊部)
胸部(横隔膜や胸膜、肺や気管支)
腸管内部(S状結腸、直腸、盲腸)
尿路(膀胱、尿管)
膣や外陰
筋骨格系(肩・膝・母指など)
リンパ節、座骨神経など。
頭に臓器名をつけて、膀胱子宮内膜症などとよびます。肺実質では喀血、胸膜では月経随伴性気胸、直腸では下血、膀胱では血尿などの特有の症状が月経時に起こります。
診断を確定するのはむずかしいことが多く、手術も場所によってはむずかしくなります。発生率は2〜3%ともいわれています。
子宮内膜症は一つの疾患ではなく、素材(異所性子宮内膜細胞)は一種類であっても、発生場所によって特徴的な状況を起こす疾患群だということを忘れてはなりません。これらの種類が数種類併発している場合が多く、これはとても重要なことです。
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