僕は新聞やネットをよく読む方だと思っていたが、この受賞スピーチについては、なぜかメディアが冷淡だったような気がしてならない。「卵」と「壁」どうしようもない戦乱の彼の地の当事者達を目の前にして、村上春樹が述べたこの崇高な比喩はさすがに文学者にしかなしえない深い深いメッセージを内蔵する。自分は「卵」の立場に立つという決意。さすがにエルサレムの市民にもこのメッセージは伝わったことだろう。
- 風の歌を聴け (1979)
- 1973年のピンボール (1980)
- 羊をめぐる冒険 (1982)
- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (1985)
- ノルウェイの森 (1987)
- ダンス・ダンス・ダンス (1988)
- 国境の南、太陽の西 (1992)
- ねじまき鳥クロニクル (1995)
- スプートニクの恋人 (1999)
- 海辺のカフカ (2002)
- アフターダーク (2004)
長編をざっと挙げてみるが、僕がこよなく好むのはスプートニクの恋人までだ。海辺のカフカは物語としては面白いが、それだけのような気がする。アフターダークは僕には理解不能である。
二つあげろと言われたら、スプートニクの恋人とノルウェイの森。3つ挙げろと言われたら、これに羊をめぐる冒険を加えたい。4つといえば1973年のピンボールを入れたい。僕にとって村上春樹は全く同時代ではないのだ。実は随分長い間見ないふりをしていた。読んだのはここ10年くらいなのだ。最初に読んだノルウェイの森にしてから、ブームが過ぎて10年くらいたってからなのだが、これほど心を揺さぶられた小説はその当時なかった。4〜5回は読み返している。学生のころならいざ知らず、この年になってまだ惹かれるものがあるのだ。もうそうそうなことでは読み返したくなるような小説には出会わない。年をとったからなあ。でも村上さんの初期の小説は、素晴らしいと思う。
村上春樹のノーベル賞スピーチを聴いてみたいものだ。まあノーベル賞はどうでもいいが、スピーチは聴いてみたい。
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