2010年2月14日日曜日

SFのこと

子供の頃ボクは小遣いをほとんどもらっていなかったのだが、本だけは割と自由に買うことが出来たのは、親の深謀遠慮であろうが、子供のボクにもツケで本を買うことを許してくれていたからだ。「聖文堂」というのが我が町にあった最も大きな本屋さんであり、我が家はそこから月刊誌だと文藝春秋やあとお袋の本「主婦となんとか」「今日の料理」だとかを定期で買っており、週刊誌も「週間朝日」をとっていた。毎月集金にくるわけであり、あるとき(おそらく小学校4年くらいか・・)から本だけならつけといていいからと言われたのである。だからといって「やった!」とかは思わないものだよ。さすがにマンガは自制するし、普通の本なら学校の図書館にあるし、特に買いたい本があるわけではない。強いて言えば参考書のたぐいかもしれないが、それは中学生になってからだ。しかし本屋に行くのは好きだった。小学生のくせに学校が終わると自転車を駆って週に一回は本屋に行っていた。自分で本を買うと意識して買った最初の本、買うにあたっての逡巡は明瞭に覚えているし、実は今もその本を持っている。東京創元社の文庫本で「ポワロの事件簿」である。ルパンやホームズをあらかた読み尽くしたので、自然に手が出たのがアガサ・クリスティだったということだ。実はこのときもう一冊創元社の文庫本を買っている、それがハル・クレメントの「二十億の針」である。レンズマンシリーズばかりではないのだな。このころから少しずつSFに触手が伸び始めている。今考えると初めて買ったSFが「二十億の針」というのは随分渋い。これはね、創元社のブックカバーに惹かれた。強烈に惹かれた。当時は知らなかったけど、この表紙はイブ・タンギーの絵そのものだったのだ。小学生のボクはこの絵にくらくらきたのである。本当にこの絵が好きだった。中学生になると早速「SFマガジン」を定期購読し始めた。当時どのような作家が連載していたかというと、ボクが一番印象に残っているのはロバート・シルバーバーグの「時間線をのぼろう」である。今調べてみたが(ネットは便利だ)1970年の9月から12月まで4回連載なんだ。確かにボクの中学生時代だ。その当時影響力の大きかった作家はいずれもイギリス人でブライアン・オールディスJG・バラード。中学生のボクはその後バラードにはまってしまった。「結晶世界」「強風世界」「沈んだ世界」「燃える世界」と短編集を買いまくって読みまくった。特に短編集の「溺れた巨人」は好きで好きで、何回読んだかわからない。5年くらい前には原作を買って英語でも読んだ。そのバラードも去年亡くなった。バラードの次に好きになった作家はレムである。スタニスラウ・レムである。これは高校から大学にかけてであり、最初は「ソラリスの陽のもとに」に惚れ込み、ついで泰平ヨンのドタバタSFに笑い転げているうちに、ハヤカワが次々に訳本をだすようになった。このレムもつい最近2006年ころは亡くなった。昨日知ったが国書刊行会がレムの全集を出しているのだそうだ。

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