2010年11月6日土曜日

The Nature Top Ten アクセスランキング

The Nature Top Ten アクセスランキング
2010年10月09日~2010年11月06日

  • Nature 467 (October 2010)

    子どものときの肥満と糖尿病は、親のどちらかがその症状をもつことと密接な関係があるが、父親がどのようにかかわってくるのか、その仕組みは明らかになっ ていない。ラットでの研究で、正常な雌と、高脂肪食を与えられて肥満およびグルコース不耐性になった雄との交配から産まれた雌仔は、インスリン分泌と膵臓 機能の障害によるグルコース不耐性を示すことがわかった。これは動物種で初めて、父親の食餌習慣が仔での糖尿病発症につながることがあるのを明らかにした 報告である。この研究は、環境によって誘導された父親の因子が、仔の代謝性疾患や肥満と糖尿病の増加に果たす、今まで知られていなかった役割をはっきり示 している。


  • Nature 467 (October 2010)

    単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)が細胞に侵入するには、エンベロープの糖タンパク質BとD両方に対する受容体が細胞に存在する必要がある。プロテ オミクスの手法を使って、HSV-1と相互作用する分子をさらに探索することにより、糖タンパク質Dと一緒に作用してウイルスを侵入させる機能をもつタン パク質として、非筋細胞ミオシン重鎖IIA(NMHC-IIA)が同定された。培養細胞とマウスモデルでNMHC-IIAをノックダウンするとHSV-1 感染が抑えられることから、NMHC-IIAや非筋細胞ミオシンIIA調節因子を標的とする薬剤やワクチンが、ヘルペスウイルス感染に対して効果を示す可 能性が考えられる。



  • Nature 467 (October 2010)

    1000ゲノムプロジェクトのパイロットデータの公表 今週号では、ヒトの遺伝的多様性についての公共の大規模カタログ作製をめざしている国際共同研究、1000ゲノムプロジェクトの最初の成果が報告されてい る。実際には、このプロジェクトで、世界の20集団の匿名のおよそ2,000人について塩基配列解読が行われることになっている。今回の最初の論文では、 ハイスループット基盤技術を用いる全ゲノム塩基配列解読のための3つの戦略が検討されており、このプロジェクトの予備段階の成果が示されている。ここで報 告されているのは、3つの集団の179人についての低カバー率の全ゲノム塩基配列、母・父・子という3人組の2セットについての高カバー率の塩基配列、お よび7つの集団からの697人についてのエキソンを標的とした塩基配列である(Article p.1061, N&V p.1050)。 ['1050']

  • Nature 467 (October 2010)

    脳は、外界から入るたくさんの感覚刺激のうち少数の刺激に集中して情報処理するために、刺激を常時選別しなければならない。内側側頭葉(MTL)のニュー ロンは、特定の視覚対象に選択的に応答し、その活動は認知機能によって調節されることが知られている。今回Cerfたちは、新しい脳–マシンインター フェースを構築した。これを用いて、神経外科処置を受けた被験者に2つの像が重なったコンピューター画像を見せ、一方の像をフェードインもしくはフェード アウトするよう求めたところ、被験者はすぐに、異なる大脳半球や小領域にあるMTLニューロンの活動を調節することを学習し、特定のニューロンの発火率を 上げると同時にほかのニューロンの発火率を下げて、合成画像の内容を制御できるようになった。この研究結果は、ヒトが自分の脳の内部にある視覚ニューロン の活動を調節できること、またそうした活動を解読してデバイスを制御できることの直接的な証拠となる。このようなインターフェースデバイスによって、例え ば閉じ込め症候群や運動ニューロン疾患など、さまざまな神経障害を抱える患者のコミュニケーションを補助することが、将来可能になると期待される。

  • Nature 467 (October 2010)

    消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の筋組織中に存在して電気的な律動的運動を生じるカハール介在細胞から発生する。今回Chiたちは、転写因子 ETV1がこれらの細胞の発生に必要であり、また腫瘍の発生も促進させることを示している。GISTで変異によって活性化されていることの多いKIT遺 伝子は、ETV1の安定化促進などにより、ETV1と協同してカハール介在細胞を形質転換させる。ETV1はすべてのGISTに多量に存在していて診断用 のバイオマーカー候補になると思われ、またETV1遮断薬は薬剤耐性をもつGISTに対して効力を発揮するかもしれない。

  • Nature 467 (October 2010)

    C Iacobuzio-Donahueたちは、全ゲノムにわたるエキソーム塩基配列解読により、同じ患者の原発性膵がんと複数の転移巣の解析を行った。腫瘍 は別々のサブクローンからなることがわかり、それぞれの転移性がんクローンが原発性腫瘍の中で進化してきた道筋が明らかにされ、腫瘍の進行の時間スケール が推定された。これらのデータに基づいて、膵臓での腫瘍発生から親となる非転移性腫瘍の形成までの平均期間は11.8年、指標となる転移性クローンが発生 するにはさらに6.8年かかると著者たちは推定している。このデータは、がんを比較的早期の形で検出できる可能性のある期間がかなり長いことを示してい る。一方、P Campbellたちは次世代シーケンシング技術を使って、膵臓がんの患者13人で染色体再編成を検出した。この結果は、患者間でゲノムにかなりの不均質 性があることを明らかにしており、ゲノム不安定化が現在進行中で、転移形成過程で進化が起こることを示している。しかし、調べたほとんどの患者で、見つ かった遺伝子再編成の半分以上はすべての転移性と原発性腫瘍に存在しており、これらが膵臓がんの初期および進行期での治療介入の標的候補となることが示さ れた。


  • Nature 467 (October 2010)

    真核細胞は、分裂する際に遺伝物質を2つの娘細胞に正しく分配する必要がある。この過程には、動原体とよばれる染色体上の特定領域と紡錘体微小管との相互 作用がかかわっている。Alushinたちは、動原体の必須タンパク質成分であるNdc80複合体と微小管との相互作用を、低温電子顕微鏡を使って再構築 した。得られた構造では、Ndc80複合体が自己オリゴマー形成して直線的に並び、これが微小管を袖状に覆うことが明らかになった。この並び方によって、 微小管特有の動的変化を介して染色体を動かせる。このNdc80複合体と微小管の相互作用の特性から、動原体と微小管の結合をオーロラBキナーゼがリン酸 化によって調節する仕組みが示唆される。


  • Nature 467 (October 2010)

    世界人口の半数以上は都市に住んでいる。人々のこのような密集状態は、公害や貧困、病気、犯罪など、世界が抱える重大な問題の温床となっている。しかし時 として、人類は都市で最良の状態となることもある。そして今週号の一連の特集記事や論評で述べられているように、科学は都市に重要であり、都市もまた科学 に重要である。都市には世界トップクラスの大学の大半が存在し(p.900)、科学は主要な都市問題のいくつかを解決するのに役立っている (p.902)。また、都市が今後、持続可能な形で成長していこうとするなら、多くの分野の科学者たちの多大な貢献が不可欠となるだろう(p.912)。 この特集の全容についてはp.899をご覧いただきたい。

  • Nature 467 (October 2010)

    オーストロネシア社会で使われている言語に基づく系統発生学的分析を用いて、複雑な社会の発達と衰退に関する相いれないモデルの検証が行われた。今 回の知見は、複雑性の拡大が逐次的に起こる傾向があるのに対し、衰退には急激なものがありうることを示唆している。表紙は、キャプテン・クックの2回目の 航海に同行した画家William Hodgesによる「オパルに集結したオタヘイティ(タヒチ)の艦隊」である(Article p.801,

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