2010年10月28日木曜日

Nature:1000ゲノムプロジェクトの最初のデータ公表

つい最近1000人ゲノムプロジェクトのことを思い出したと思ったらこれだ。最新号のNatureに最初の成果が報告された。おまけにこの論文は「無料」で読める。

Nature 467, 7319 (Oct 2010)

Cover Story: 1,000人のゲノム:集団規模での遺伝子塩基配列解読のための方法を検討した予備段階の成果

1000ゲノムプロジェクトのパイロットデータの公表 今週号では、ヒトの遺伝的多様性についての公共の大規模カタログ作製をめざしている国際共同研究、1000ゲノムプロジェクトの最初の成果が報告されてい る。実際には、このプロジェクトで、世界の20集団の匿名のおよそ2,000人について塩基配列解読が行われることになっている。今回の最初の論文では、 ハイスループット基盤技術を用いる全ゲノム塩基配列解読のための3つの戦略が検討されており、このプロジェクトの予備段階の成果が示されている。ここで報 告されているのは、3つの集団の179人についての低カバー率の全ゲノム塩基配列、母・父・子という3人組の2セットについての高カバー率の塩基配列、お よび7つの集団からの697人についてのエキソンを標的とした塩基配列である(Article p.1061, N&V p.1050)。

ざっとアブストラクトを読んでみたが、蛋白コード遺伝子を調べると、ヒトは一人平均して250個から300個の機能欠失変異遺伝子を持ったまま(引き継いだまま? 新たに獲得したものもある?)生き続けているとのことである。コリンズの評価ではヒトは19042個の遺伝子を持っているそうであるから1.3%~1.6%の遺伝子は壊れているということ? これは意外に多いね。もっともデュプロイドでは機能欠失とはならないだろうがね。そうはいってもたまにはホモになるだろう。

さらにいわゆる「遺伝性疾患」の責任遺伝子では一人平均50〜100の変異(variant)を持つらしい。血族結婚をしたいヒトがいれば、当該両者のシークエンスを終えてからの方が良いと思う。ただし疾患は遺伝子の一次情報だけで引き起こされるわけではないと思うから、やはり余程のことがない限り今後も従姉妹と子供を作ることはやめておいた方がよいであろう。

また一世代におこる胚細胞レベルでの突然変異率は10の8乗に一個の割合となるようだから、30億塩基で30個。一染色体で一個程度。これは予想よりかなり少ないなあ。やはりgerm lineのDNA修理機能は素晴らしく高級なのだろう。

まあこんなことが知りたいと思っていたわけだが、それに見事に答える研究である。ボクは更に受精を経たゲノムでどこに何回遺伝子組み換えがあったか系統的に知りたい。20年来知りたかったデータの一つである。まあこれもそのうち公表されるだろう。

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