2009年12月27日日曜日

ヒト乳がんにおける体細胞ゲノム再編成の複雑な全体像

2009年年末最後(に近い)論文はNatureのarticleである。ここでの再構成はgene duplicationに焦点が当たっているようだ。全ゲノム解析でゲノム量の多寡を検索することは実は容易でない。まだ本文を読んでいないが、この世界もだんだんデータ量が増えてきて全体像をつかむのが困難になりつつある。


Nature 462, 1005-1010 (24 December 2009)

遺伝: ヒト乳がんにおける体細胞ゲノム再編成の複雑な全体像

Complex landscapes of somatic rearrangement in human breast cancer genomes

Philip J. Stephens1, David J. McBride1, Meng-Lay Lin1, Ignacio Varela1, Erin D. Pleasance1, Jared T. Simpson1, Lucy A. Stebbings1, Catherine Leroy1, Sarah Edkins1, Laura J. Mudie1, Chris D. Greenman1, Mingming Jia1, Calli Latimer1, Jon W. Teague1, King Wai Lau1, John Burton1, Michael A. Quail1, Harold Swerdlow1, Carol Churcher1, Rachael Natrajan2, Anieta M. Sieuwerts3, John W. M. Martens3, Daniel P. Silver4, Anita Langerd5, Hege E. G. Russnes5, John A. Foekens3, Jorge S. Reis-Filho2, Laura van t Veer6, Andrea L. Richardson4,7, Anne-Lise Brresen-Dale5,8, Peter J. Campbell1, P. Andrew Futreal1 & Michael R. Stratton1,9

  1. Wellcome Trust Sanger Institute, Hinxton, Cambridge CB10 1SA, UK
  2. Molecular Pathology Laboratory, The Breakthrough Breast Cancer Research Centre, Institute of Cancer Research, 237 Fulham Road, London SW3 6JB, UK
  3. Department of Medical Oncology, Josephine Nefkens Institute, Erasmus University Medical Center, PO Box 2040, 3000 CA, Rotterdam, The Netherlands
  4. Department of Cancer Biology, Dana-Farber Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, Massachusetts 02115, USA
  5. Department of Genetics, Norwegian Radium Hospital, Oslo University Hospital, Montebello, N-0310 Oslo, Norway
  6. The Netherlands Cancer Institute, 121 Plesmanlaan, 1066 CX Amsterdam, The Netherlands
  7. Department of Pathology, Brigham and Womens Hospital, Harvard Medical School, Boston, Massachusetts 02115, USA
  8. Department of Genetics, Institute for Cancer Research, Oslo University Hospital Radiumhospitalet, Montebello, 0310 Oslo, Norway
  9. Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey SM2 5NG, UK.

が んでは、多数の体細胞ゲノム再編成が頻繁にみられる。しかし、再編成の基盤となる過程やそのがん発生への寄与については、ほとんど解明されていない。今回 我々は、両末端(paired-end)塩基配列決定法を用いて、乳がんでの体細胞ゲノム再編成の特徴を明らかにする。一部の乳がんには、従来認められて いたよりも多くの再編成が存在した。再編成は、遺伝子領域でより高頻度にみられ、また大部分が染色体内で起こっている。多数の再編成構造が存在するが、一 部のがんでは縦列重複が特によくみられ、これはおそらくDNA維持における特異的異常を反映していると考えられる。ほとんどの再編成結合部で短い重複配列 がみられることは、これらが非相同末端結合によるDNA修復を介するものであることを示している。しかし、さまざまな配列パターンがあることから、このタ イプの過程は多数作動していると考えられる。読み枠を維持したインフレーム融合遺伝子がいくつか発現していることが明らかになったが、頻発するものはな かった。この研究は、がんゲノム解析に新しい視点をもたらすものであり、体細胞ゲノム再編成の多様性やそのがん発生への寄与の可能性をはっきり示してい る。

2009年12月26日土曜日

中国からのNEJM:新型インフルエンザ

最新号のNEJMに中国から新型インフルエンザの臨床的特徴をまとめた論文が出た。

この論文そのものは、これまで断片的に伝えられてきた新型フルの特徴、すなわち潜伏期間や毒力、若年者に多いこと、タミフルの効果を裏付ける・・・ただそれだけの「ある意味では新鮮味」に欠ける凡庸な論文に見えなくもない。ただし、10年後に今年のインフルエンザを振り返った時、基本論文になることは約束されたような論文であろうから、金字塔のような論文なのだろうと思う。

新鮮みにはかけるかもしれない・・・と直感した段階でやる気が出ない・・という研究環境。どっかで誰かがやっとかなければいけない・・・記録に残しておかなければならない・・・とすれば我々だ・・・と思える研究環境。これが彼我の違いであろうか?

従来であれば、あるいは日本の医学水準をもってすればこれ位の内容の臨床研究はお手の物のはずなのに、どういうわけか日本からはこのような論文が出ない。どうしてなのだろう?

中国の医学研究はゲノムプロジェクト終了あたりから急激に上昇してきたことは、研究者ならみな実感していると思う。北京ゲノムセンターのパワフルな研究遂行力。2週間くらい前にパンダのゲノムがサイエンスかネイチャーに載ったが、パンダのゲノムであの水準の雑誌に載せられる力量は看過できないものだ。また新型インフルエンザのワクチンについてもあっという間に初期臨床知見をまとめ夏頃にはNEJMに載ったが、この施設横断的な研究推進力はたいしたものだ。口さがない連中は「倫理規定がゆるいからできる」とか「日本のような民主的な国では、もうあのような研究を半ば強権的に国民相手にはできない」とか言うだろうが、半分は当たっているかもしれないが、しかし残りの半分は「やる気」の問題のような気がする。

10年前までは中国の医学・生物学研究は地味であった。というか中国名の筆頭著者で出てくる優秀論文はそのほとんどが米国の研究機関所属由来であった。5年位前から基礎生物学では中国本土からの研究が席巻してくるが、臨床研究はまだまだだれも顧みなかった。この1〜2年臨床研究も侮れなくなり、というか、世界の多くの研究者が参考にしたくなるような研究がどんどん出てくるようになった。2009年は完全に中国臨床研究は世界のトップレベルにあることが明らかとなった。

実際に行われているちまたの臨床レベルでは日本はまだまだ負けないとボクは思っているが・・・それにしてもだ。日本も頑張らないと。


Volume 361:2507-2517 December 24, 2009 Number 26
Clinical Features of the Initial Cases of 2009 Pandemic Influenza A (H1N1) Virus Infection in China
B. Cao and Others

2009年12月25日金曜日

ベロ毒素について

ベロ毒素

Wikiより引用・・・・


ベロ毒素


http://ja.wikipedia.org/wiki/ベロ毒素


ベロ毒素は、病原性大腸菌の一グループである腸管出血性大腸菌 (EHEC) が産生する毒素である。EHECの病原因子を探索する過程でベロ細胞Vero細胞、アフリカミドリザル腎臓上皮由来の動物培養細胞の一種で、感染実験や毒性実験などに汎用される)に対して致死性の細胞毒性を持つものとして発見されたことからその名がついた。EHECが細胞内で産生し、菌体外に分泌するタンパク質性の外毒素であり、互いによく似た構造を持つベロ毒素1(VT1)とベロ毒素2(VT2)2つが知られている。ベロ毒素1は、すでに志賀赤痢菌が産生する毒素として知られていた志賀毒素と同一であったことが後に判明した。ベロ毒素2は、ベロ毒素1と生物学的症状が似ているが、免疫学的性状、物理化学的性状が異なる。







O-157と遭遇

今年も押し詰まってきている。ブログ年間200投稿を目指しているが今年は超えそうである。

さて、
1週間前に腸炎というか下血で入院してきた19才の少年。今日退院したのだが、初日の便培が昨日になり判明し「病原性大腸菌」の可能性とのファックスが入ったのが昨日昼頃。夕方前に「VT2 陽性です」との電話が入る。「スンマセン、VT2ってなんですか?」(あきれはてたような声で、検査センターの声だけ美人のお姉さん)「べろときしんです」「はぁ・・・」なにやっているんだろうね私は。「とにかく保健所へ連絡はお願いします」と言われてしまった。

さて本人はやっと退院できるとうきうきしている。症状もないしご飯は食べられるし下痢はないので退院の方針は変えない。

あとは後始末である。夕方から関係各所への説明、書類書き、保健所への連絡、保健所からやってきた行政の人への対応と忙しかった。「
べろときしん」には2種類あるが、いずれかが陽性に出ると自動的に届け出伝染病になるのだそうだ。「病原性大腸菌」可能性だけなら届け出る必要はない。法律の一部分を引用すると・・・

平成15年10月に改正された、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」では、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌感染症、即ち、EHEC(enterohemorrhagic E.coli)、STEC(Shigatoxin-producing E.coli)は、三類感染症に規定され、便培養で、ベロ毒素(産生)が確認された場合、届出義務がある(最寄の保健所長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない)。

今日朝、元気に彼は退院していった。クラビットは今日までのんでもらう。月曜日の便培で陰性ならこれで終了である。

今年はノロ腸炎、サイトメガロ腸炎に始まりいろんな腸炎を診ました。最後はO-157でした。でもホントに最後かいな・・・あと一週間あるよ。

2009年12月24日木曜日

中性脂肪1600のヒトが入院してきたが・・・

中性脂肪は必要不可欠、しかし高値は要注意

富士通のHPより・・・・

中性脂肪は、健康体には大敵のように思われがちですが、本当はエネルギー源として重要な役割を果たしています。食事によって摂取した糖質や脂質を原 料としてつくられた中性脂肪は、血液を通して筋肉や皮下、胃や肝臓などの内臓の周囲の脂肪細胞に蓄えられます。そしてそれが必要に応じて取り出されて分解 され、そのうちの脂肪酸がエネルギー源として燃やされます。
しかし、余分な中性脂肪は体脂肪となり肥満となります。また、内臓の脂肪は動脈硬化の原因になります。

中性脂肪値が高くなる原因として、過食、アルコールの飲みすぎ、甘いもの・果物(ビタミン源としてたくさん食べてしまう場合がありますが、体に吸収されやすい果糖が多く含まれています。)の食べ過ぎが挙げられます。

中性脂肪値が150mg/dl以上の場合が異常高値で、高中性脂肪血症と呼ばれます。また、コレステロールとの関係で以下の値の場合には注意が必要です。

中性脂肪が150~1000mg/dlで総コレステロールが220mg/dlの場合

高カイロミクロン血症があり、分解酵素異常に加えて過食があると思われます。脂質・糖質の摂り過ぎに注意が必要です。

中性脂肪が150~1000mg/dlで総コレステロールが220~300mg/dl、 HDLコレステロールが低い場合

虚血性心臓病の発生率が高くなります。糖尿病の厳格な管理が必要となってきます。暴飲暴食に注意し、肥満の解消が必須となります。

中性脂肪が1000mg/dl以上で総コレステロールが300~500mg/dl

重症の高中性脂肪血症と思われます。激しい腹痛や急性膵炎などを起こすことがあるので食べ過ぎ飲みすぎに注意が必要です。

中性脂肪値が高い場合の生活上の注意

  1. 甘いもの、果物をたべすぎない
  2. アルコールは控えめにする
  3. 食べ過ぎに注意する
  4. 青い背の魚(さば・さんま・いわしなど)を積極的に食べる
  5. 食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻などを積極的に食べる
  6. 適度の運動を定期的に実行し、肥満を解消する

2009年12月18日金曜日

機嫌の良い働き手

内田樹さんのプログを読んでいたら、とても良い表現に気が付いた。そうだよ、これだよ!ボクのモットーにしよう。2010年度もボクは「機嫌の良い働き手」であることを続けよう。これまで自分で自分の矜恃としたいる最低限のエトスがなにかあるはずだと思っていたのだが、あいにく言葉にできなかった、これまで。今日、内田さんのプログの中で、見つけましたがな、ぴったりだ。

・・・なるほど、この青年は深夜レストランのウェイターという、さして「やりがいのある」仕事でもなさそうな仕事を通じて、彼にできる範囲で、彼の工夫 するささやかなサービスの積み増しを享受できる他者の出現を日々待ち望んでいるのである。もちろん、彼の控えめな気遣いに気づかずに「ああ、ありがとう」 と儀礼的に言うだけの客もいただろうし、それさえしない客もいたであろう。けれども、そのことは彼が機嫌の良い働き手であることを少しも妨げなかった。・・・

これいいよなあ。このウエイターになりたい。なりたい。なりたい。(おそらくなっている、ずーっと前から)

そして大事なことがひとつ。他人をして「機嫌の良い働き手」を求めるのはやめたいものだ、これは最低のモラル。自分が認める相手なら、相手はいかにわがままであろうが、なにかまわん。程度の低い控えめより、わくわくするほどのわがままが好きだ。これは昔からそうであったし、たぶん一生続くだろう。


で、ボクは機嫌の良い働き手であり続けたいわけだ。これがいい、一番よい。(結局、ぼくも相当わがままだということだ、結局)

2009年12月17日木曜日

一年で5例目のモンドール病(乳腺血栓性静脈炎)

今年の2月に半年で4例目のモンドール病を診たと書いて以来、久しく診なかったモンドールに昨日出くわした。

60台後半の女性で左乳腺の下方に有痛性索状物があり、近医から「乳癌の疑い」ということで紹介を受けた。見た瞬間モンドールとわかるのがモンドールの由縁だが、この方も典型的モンドールであり、索状物は5mm程度であり、上方は左乳腺D領域に入る。一方下方は台12肋骨を乗り越えて腹壁に中途まで伸びている。これ、上方と下方を両手の指で固定したまま逆方向に引っ張ると、見事に血管が浮かび上がることに本日気が付いた。乳癌のデレと同様の所見であり、血管炎が周囲の組織を巻き込んでいるからそうなるのだろうこんなことは教科書には書いてない(あたりまえだ、今日ボクが見つけた)。通常の乳癌検索はMMGとエコーと触診を行ったが異常なし。ということで「良性の炎症性変化でなにも心配いらんです。癌じゃない、3週間で自然に消えると思います。薬はいらんでしょう、よかったですね」といって帰って貰った。硬く触れる物が突然自分の乳に現れるので、大抵の女性はうろたえるのだ。この病気を一年で5例も診ることになるとは思わなかった。

2009年12月16日水曜日

肩関節脱臼

朝病院に着くと早速院内ピッチが鳴る。「朝早くすいません。入院患者が肩の脱臼を起こして・・・」脱臼なんて研修医のころはいろいろみたが、肩の脱臼を最後に診てから4〜5年たつなぁ。で、病棟にあがると喘息で入院している40代の女性が起きがけに伸びをしたら、はずれちゃったらしい。5年前に一回やったことがあり、久しぶり2回目の脱臼だと。確かに肩峰が目立つし、触ると肩峰の下がぽっかり抜けている。前方脱臼である。痛い、痛い。コッヘルは当直医が試みて断念したらしい。しょうがないので、穏やかにStimson法をやることにした。ミタゾラムをゆっくり流して、看護師に3kgのリストバンドをリハの部屋から取ってこさせて、うつむけにして右肩をベッドの外に垂らしたら、あれあれSPO2が下がった。さすがに喘息じゃわい。O2を増量して、リストバンドを手首に着けて「30分待つよ。ワシ外来いくから、SPO2みといてくださいね」と病棟を離れた。外来の隙間に上に上がったら患者さんすやすや寝ている。右手をぶらぶら動かしても起きない。無理矢理起こすと、もう脱臼は解消していた。いろいろ動かしてみるが「全然痛くなくなった」と喜んでいる。ついでに鎖骨やらいろいろ調べるが合併骨折等はなさそう。写真の指示をして、三角巾で肩を保護して「3週間はいたわってやらないと、習慣性脱臼になりますよ」と告げる。うまく整復できてよかった。

Stimson法がうまくいくと本当に感謝される。コッヘルでいじめられた経験のある二度目以上の脱臼の患者だとなおさらである。うまくいかんときは困るが、でも大抵うまくいくのではないかと思うが、どうだろう?

2009年12月14日月曜日

ピアノ難曲偏差値

いつも勉強と臨床ばっかりで疲れたので音楽の話。

昼休みとなりの部屋でいつもピアノを弾いているのはPTのSさんだ。とても上手なので、こないだ褒めたら喜んでいた。褒めついでにショパン弾かないの・・といったら「ショパンは難しいけど・・・ちょうど革命練習していたろころです」と。

バラードかワルツを弾いてくれないものかね。バラードなら4番だ。ワルツなら9番がいいな。


ワルツの9番とバラードの4番の譜面を買って彼女に渡そうかな・・と思った。でも難しいのだろうか?バラードの4番は最初の方はあまり指が激しく動く曲ではなさそうに聞こえる。ボクはピアノを弾かないが、それでもショパンのピアノが難しいことくらいは知っている。やってくれるだろうか・・?でもどれ位難しいんだろう??。

調べてみるとネットにはあるのだね、「難曲偏差値」なんていうサイトが。

http://blog.goo.ne.jp/potechi9_may/e/338128d9fc0677da107cab1d7a1830ed

これは面白いわ。偏差値10の猫踏んじゃったに始まり85まで。80以上の偏差値の曲など想像もできないな。

さて残念だけどショパンのバラードの4番は70もあるよ。人に「やってよ」と勧められるレベルではなさそうだ。まあいい。渡してみよう。ワルツの9番でもバラードの4番でも。渡されても迷惑だとはおもわないと思う、Sさんなら。


85 第九4章(ベト=リスト)、こうもりパラフレ、芸術家の生涯

84 剣の舞(シフラ編)、イスラメイ、幻想ソナタ2章(スクリャ)

82 鬼火、トリッチトラッチ(シフラ編)、青きドナウ(エヴラー編)

80 鉄道、イソップ饗宴、ドン・ジョバンニ回想

78 ソナタ5(スクリャ)、ウィリアムテル序曲、練習曲25-6、ノルマ回想、ハンガリー狂詩曲5(シフラ編)

76 ダンテソナタ、メフィスト1、トリアーナ、孤独の中の神の祝福、死の舞踏S555、熊蜂(シフラ編)

75 スペイン狂詩曲、道化師朝の歌、レズギンカ、練習曲10-1、ソナタ6(プロコ)、幻想曲(スクリャ)、ロシアの踊り

74 マゼッパ、ハンガリ狂詩曲2、アンダンテスピアナと華麗大ポロ、カルメン変奏 曲、練習曲10-2、10-7

72 木枯し、リゴパラ、シャコンヌ(ブゾ編)、半音階大ギャロプ、トッカータ(ラヴェル)

70 前奏曲23-5、ソナタ29-1(ベト)、バラ4、前奏曲16(ショパ)、ペストの謝肉祭

69 舟歌(ショパ)、タランテラ(リスト)、練習曲10-4、10-10、星条旗(ホロ編)

68 ラコツィ行進曲、練習曲25-8、バラ1、幻想曲(ショパ)、カンパネラS.141-3、軽やかさ、ハンガリー狂詩曲12

66 ソナチネ3章(ラヴェル)、幻ポロ、スケ3(ショパ)、熱情3章、ワルツ形式練習曲、スペイン奇想曲(モシュコ)

65 スケ2、バラ2(ショパ)、英ポロ、トッカータ(ドビュシ)、練習曲8-12、ロンドカプリチョーソ

64 ワルトスタイン3章、水の戯れ、イタリア協奏曲3章、小人の踊り、スケ1、バラ3、子守歌(ショパ)

62 別れの曲、ウィーンの夜会6、即興曲1(ショパ)、金魚(ドビュシ)練習曲25-10、25-4、愛のワルツ(モシュコ)

60 水の反映、エステ荘噴水、黒鍵、幻想ソナタ(モツ)、即興曲142-4、花火(ドビュシ)、練習曲25-2、25-3


58 革命、大洋、喜び島、ため息、献呈、告別3章、森の囁き、波渡るパオラ、舞踏への勧誘

55 愛の夢3 、悲愴1章、ワルツ1(ショパ)、軍ポロ、幻想即興曲、魔王、飛翔、ワルツ14(ショパ)
54 テンペスト3章、蝶々(グリグ)、即興曲90-2、4、タランテラ(ショパ)、雨の庭、パスピエ

52 月光3章、蝶々、ワルツ2(ショパ)、狩の歌(メンデル)、エオリアンハープ、モンタギュ家とキャピュレト家

50 鐘(ラフマニ)、ラプソディ79-2、間奏曲118-2、練習曲25-7、ソナチネ2章(ラヴェル)、ワルツ7(ショパ)、悲愴3章


45 雨だれ、アラベスク1(ドビュシ)、調子のよい鍛冶屋、葬送行進曲(ショパ)、練習曲2-1(スクリャ)

42 子犬ワルツ、ノクターン2、ゴリウォーク、クシコスポスト、春の歌、新練習曲3、ユモレスク(ドボル) 

38 カッコウ、楽興の時3(シュベルト)、2声インベンション12、3声インベンション6、15、コンソレーション3、月の光、

35 トルコ行進曲(モツ)、亜麻色髪の乙女、エリーゼのために、楽しき農夫、2声インベンション13、別れのワルツ

31 乙女の祈り、トロイメライ、ジムのペディ1、月光1章、3声インベンション3、5、12

25 ニ声インベンション1、貴婦人の乗馬、アヴェマリア、清らかな小川、再開(ブルグミュラ)、大田胃酸


10 猫踏んじゃった


03 かえるの歌


01 チャルメラ

一刻も早く肺塞栓症を否定したいのなら・・D-ダイマー

いつの間にかDICやDVTの診断の主役に躍り出たDダイマー

D—ダイマーが陰性なら上の二つの病態は否定してよい。


Dダイマーは何故ブレイクしたのか?
またまた金沢大学血液内科HPより・・・(大変役に立つHPである、多謝)
http://www.3nai.jp/weblog/entry/29150.html

  1. Dダイマーは、播種性血管内凝固症候群(DIC)診断用として20数年前に登場した。DIC診断のための意義は大変大きい。Dダイマーなしには、DIC診断はありえない。

  2. Dダイマーは、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)診断においても、極めて高い陰性的中率を誇ることが報告されている。DVT診断において陰性的中率98~99%と言う報告。陰性的中率が高いと言うのは、Dダイマーが正常であればDVTを否定できるという意味。かならずしも陽性的中率は高くない(Dダイマーが高値だからと言ってDVTとはいえない)。

  3. Dダイマーは、artifactが全くでない、大変信頼できる検査である一般の血液凝固検査は、採血手技などによってartifactがあり得るが、Dダイマーはそのようなこともない。

  4. Dダイマー定量は150点  ちなみにFDPは 80点

2009年12月13日日曜日

脂肪塞栓症候群

昨晩一時頃病棟より電話有り。Ns「夕方大腿骨骨折で入院したYさんですが、急に呼吸がおかしくなってきました。入院時はSPO2が95くらいだったのに、70台に落ちて酸素4Lいってます。」とのこと。いろいろやりとりしたが、だんだんある病気がこわくなってきた。88才のYさんは頚部が折れて約2時間で搬送されてきた。もともと歩行しておらず車椅子でありその他の条件もあって手術適応無しと整形に断られてしまったのだ。疼痛管理だけ行いで2〜3週間でもとの施設に戻っていただく・・・そういう予定だったのだが・・・。

ある病気とは「脂肪塞栓」である。この病院では余り詳しい検査は深夜は無理だ。理学的には肺雑音等々有意ではない。いろいろ検査して、処置して、でも結局ヘパリンも静注したよ。(おぉ長管骨の骨折直後だというのに!)どうもFESではなさそうであるが、FESであってもおかしくないので。

脂肪塞栓は20年前に一回みた。よく覚えているのは、患者が亡くなり病理解剖を行ったから。かなり衝撃的だったからボクには。


◎脂肪塞栓症候群(FES、fat embolism syndrome)(NIS、No.3909(H11/3/27)、P23)



A.はじめに
  
  1. 骨折後の重篤な合併症、脂肪滴が大量に全身循環へ流入し重篤な呼吸・神経症状をおこしたもの。
   
    大腿骨>脛骨>骨盤で上腕骨・頭蓋骨・胸骨。肋骨はすくない。
  
  2. その他原因:関節置換、hemoglobinopathy、膠原病、糖尿病、熱傷、重症感染
、骨髄炎、輸血、人工心肺、高山病、腎移植など
  
  3. 長管骨骨折の約90%で血中に脂肪粒が認められるfat embolismを起こすが、殆ど無症状。
  
  4. 頻度:0.25%(4530例中)~1.25%(7701例中)といわれ、90%は多発外傷、10%は股関節置換後。
   
      その他の原因は非常に稀。
  
  5. 小児の頻度は大人と大体おなじだろう。小児は点状出血が少ないなど診断困難。
  
  6. 死亡率:10~20%。大腿骨9.0%、脛骨3.4%、両方で20%。



B.病因、病態
  

  1. 脂肪滴の放出

    脂肪滴の由来は、骨折の髄内と周囲の脂肪組織が主体。FFSは閉鎖性骨折に多い。大腿骨の
生理学的髄内圧は30~50mmHgであるが股・膝関節置換時には800mmHg、セメントによる
骨頭置換時には1400mmHgまで上昇。これにより髄内脂肪が静脈を通じて大量に血流に流入。
    ターニケットをdeflateした時も注意。
  
  2. 塞栓
    
    1)脂肪滴が肺血管に塞栓:直径20μmの肺血管は脂肪滴で機械的に閉塞。そこに血小板や
フィブリンが付着して塞栓となる。小さな骨髄の微小塞栓が大きく成長して時には3cm径までになる。大きな塞栓は直ちに右心不全をおこし突然死の可能性もある。
    
    2)脂肪滴に含まれる物質が生化学的に変化
  
  3. 肺損傷
    
    骨髄組織中のmediatorに関連する局所反応が連鎖的な炎症反応を起こし続発的に肺血管を障害、肺リパーゼは脂肪滴中の中性脂肪を水酸化して遊離脂肪酸となるがこれも毒性を有し内皮細胞を破壊。肺の界面活性剤の不活化、毛細血管透過性亢進
    
    壊れた血小板からのセロトニンやアミンの放出、肺実質よりのヒスタミン放出など
より結局、肺血管攣縮、気管支攣縮、血管内皮細胞損傷を生ず。肺血管へのフィブ
リン沈着。
  
  4. 脂肪滴の全身循環への放出

    血管内脂肪滴形を変えて肺血管を通過すると考えられ、肺のAVシャントが存在すると全身に脂肪滴が回る。(肺高血圧、肺気腫、肺化膿性疾患、肝硬変など)
  
  5. BBB(血液脳関門)の破壊
    
    脂肪栓塞事態がBBBを破壊
  
  6. 出血性ショックの関与
    
    出血性ショックの陥ったほうがFESが起こり易い。微小循環不全により血球が肺や脳の毛細血管で引っかかり血小板凝集能が亢進して肺で捕えられることより生ず。


C.病理
  
  1. 肺組織:
    血管炎(遊離脂肪酸による)、出血性間質性肺炎。無気肺。これにより肺-毛細血管の酸素運搬能が低下して低酸素血症となる。他の原因のARDSに類似。
  
  2. 脳組織
:
    白質全体に点状出血や斑状出血あり。塞栓は灰白質に多いが出血は白質に多い。
塞栓が細動脈や毛細血管を閉塞し周囲は壊死。数mmから4cmの出血性あるいは虚血
性梗塞。慢性期では白質の広範な脱髄。



D.臨床症状、診断


呼吸不全(ARDS)、中枢神経症状、皮膚の点状出血が三大症状。全部揃うのは1~5%で呼吸症状だけというのが29%存在。受傷後数時間から72時間の潜伏期を経て発症。

  
  1. 呼吸不全
    
      a.呼吸困難、頻呼吸、低酸素血症が三主徴

          b.咳、喀啖、湿性水疱音

          c.低酸素血症
    
      d.胸部レ線:両肺底部を中心とする、淡いすりがらす状陰影と細かな点状影が
混在して、snow storm shadowを呈す。
    
      e.肺動脈圧上昇、肺動脈楔入圧低下、PaO2低下。

      
  2. 中枢神経症状

          a.意識障害:不穏、傾眠傾向、深昏睡まで様々。
          b.画像:MRIが感度良好:多彩であるが、急性期には点状出血に一致してT2強調で白質に散在する高信号域の小病をみる。
    
  
  3. 皮膚の点状出血:両肩前面、前胸部、前腋下部、鎖骨上窩部、側腹部、鼠徑部
膜で、数時間で消失することもある。見逃さぬこと。
  
  4. その他の症状
    
貧血、血小板減少、血清リパーゼ上昇、血清カルシウム減少、尿中脂肪滴、眼底鏡で網膜の小梗塞あるも、特異的なものではない。
  
5.ある統計

    ・FESは長管骨骨折の0.9%に発症、低酸素血症(96%)>意識障害(59)
>点状出血(33)>39度異常の発熱(70)>120/m以上の頻脈(93)
>1.5万以下の血小板減少(37)>原因不明の貧血(67)であった。

    ・死亡率:7%。




E.治療(特異的、根本的治療はない)

  1.   呼吸管理

  2.   循環管理、血小板は通常自然回復

  3.   薬物療法
    ステロイド(抗炎症)、ヘパリン、ウリナスタチン(蛋白分解酵素)、プロスタグランジン製剤(血小板凝集阻害)が試用されたが、いずれも有効性は証明され
なかった。
  4. 
  予防が大事:術中の急な体温上昇FESの重要な兆候の一つ。

2009年12月12日土曜日

新型インフルエンザの流行が一段落してきたのは何故なのか?

新型インフルエンザの流行が一段落してきた

という報道があった。確かに全国的に先週よりも発生者が少なくなってきているようである。

  • 2009年第49週のインフルエンザの定点当たり報告数は31.82(患者報告数153,131)となり、前週よりも大きく減少した。第28週以降これまでの累積の推計患者数(暫定 値)は約1,414万人(95%信頼区間:1,396万人〜1,432万人)である。
 都道府県別定点当たり報告数は、北海道と東京都を除く45都府県で20.00を上回 り、32県で30.00を上回っているが、青森県と徳島県を除く45都道府県では前週よりも減少した。

減るときには全国一斉に減少していくのだから面白い。県別に減るところもあれば増えるところもある・・・というわけではなくほぼ一斉に減り始めるというこの現象をどう理解したらよいのだろうか?

仮説


  1. かかるべき体質を持った人はすでに罹患した。残るのは抵抗性をもったひとだけになった。この体質は住むところを問わず一定の割合で日本人には存在するので、各県一斉に飽和状態となった。

  2. ウイルス感染の一般論からすれば、普通は環境の変化を考えたくなる。温暖・湿潤化がインフルエンザの蔓延を防ぐといわれているが、12月というこの時期は、寒冷・乾燥化の時期であり考えにくい。

  3. ウイルス自体の問題:その要素は2つある。一つはウイルス自体の変化(突然変異)。もう一つはもっと感染率の高い別のウイルスの登場(季節性ウイルスへの移り変わり)。これから数週間は当初のようにウイルスの遺伝子診断をもう一度しっかりやってみた方がよいと思う。

他に一斉減少を説明できる説明はあるのであろうか?

2)についてはこれまで変異が問題となるほど蔓延しているという報告はないし、別の季節性が増えているという兆候もなさそうである。
3)については今年の夏の南半球の国々がどうであったか調べればよさそうである。季節性インフルエンザが例年どおりはやったのだろうか?新型インフルの流行のあとで・・・?

ボクは1)の仮説が最も受け入れやすいと思うが、どうであろう?

そうすると今後第二〜第三のピークがくることはなさそう・・・なのであるが、実は歴史的にはこれは間違いなのである。第二〜第三のピークがくるような流行がこれまでもあった。

一方で2009年の南半球ではどうだったか?・・これがなかったようなのだ。ピークはほぼ一回で終わっている。


2009年度冬の北半球はどうなるのであろうか?

2009年12月7日月曜日

薬の値段

臨床にどっぷり漬かると様々なことに興味が湧いてくる。不思議でしょうがないことが山のようにあるのだこの世界は。特に医療の値段は面白い。なんだい、あのとってつけたような価格体系は・・・・

この世界に30年くらいいるがほとんど理解できていないのがこの医療の値段というやつである。商売やっていて、販売価格の成り立ちが理解できていない商人はまずいないであろう。医者はそうでないのだ。自分の関わるサービスについている価格体系というものをほとんど知らないのだ、普通のお医者さんは。まったくあきれたものだ。

例えば薬を処方してもらうとする。領収書をつくるには、少なくとも以下の項目を知らなくてはいけない。

  1.調剤基本料
    調剤をするための基本料金。毎月取り扱う処方せん数などにより
     薬局によって異なる。

  2. 調剤料
    処方せんどおりに薬を調える料金。
     薬の種類・服用法・処方日数などで料金が変わる。

  3. 薬剤料
    処方した薬の料金。厚生労働省の薬価基準に基づく。
  4. 薬剤服用暦管理・指導料
    薬の服用歴を記録して飲み合わせをチェックするほか、
     処方した薬の説明や飲み方の指導に対する料金。
  
  5. その他加算料金
    1回分の薬を1袋にまとめる1包化加算
     粉薬を混ぜたり軟膏を練ったりする自家製剤加算
     営業時間外の調剤に対する時間外加算など、さまざまな加算料金がある。


薬剤師の領分のようであるが、かならずしもそうでない。やはり医師の都合により、屋根瓦が何層にも重ねられてきたとしか思えない。

この調剤基本料であるが、中身に関わらず一度処方箋を切ると発生する基本単価である。大体幾らくらいが妥当なものであろうか?
これを公に尋ねると「様々な人間が処方には関わるので適正価格と言われてもお答え出来ない・・・」という答えが返ってきそうであるが、なに薬剤師の取り分その一と考えればよい。現在の料金では200円から400円といったところである。
タクシーの基本料金よりやすいというのはおかしいとボクは考えるがなあ。

2009年12月3日木曜日

家族3人ともタミフル服用中の我が家:嗚呼!!

小生、昨晩よりタミフルを服用している。これで家族3人とも同時にタミフルを服用中ということになる。

今週の我が家は地獄である。日曜日にかみさんが発症。土曜日に咳をしていたのだが本人いわく「かかったと思う」。拙者は無視していたが、翌日朝から体温が上昇しつづけ39.6度。若くないのでこたえている。日曜の朝、病院に出たついでに検査キットとタミフル、コカールそれに点滴セットを持ち帰る。
キットは(自分でキット使うのは初めてである、たまにはイイね)良くできている。10分で陽性(弱陽性)の結果。点滴をしてやる。家庭での点滴はつるす場所に苦労するのは今も昔もかわらん。

娘と小生はウイルスから逃げようがないが、拙者はワクチンを打って一ヶ月になるのでまずかからないはず(小生はワクチンを打った年はインフルにはかからないが、ワクチンを打たなかったころは毎年罹患していたの・・)だからいいとして、娘はどうしよう。寝る場所は家内から隔離したが・・・。ところが家内が発症して3日目の夕方から娘が「喉が、いがいがする」と言い出した。拙者は無視したが、家内は「症状の出方が良く似ているし、潜伏期も良く合う。だからインフルだわよ」という。「早くタミフル、いやリレンザを用意してきなさい」と指令が下る。娘は発熱しないので拙者は無視していたが、翌朝37度6分。これでも無視していたら「受験前なのだから一刻も早く抗ウイルス薬をのませなきゃ」という。これも無視。昼職場から電話したら「39度でてきつがっている」という。さすがの小生もインフルであることを強く疑い、家内のタミフルを一個流用して娘に飲ませるように指示した。

帰宅後すぐに娘のインフルチェックをしたところ、驚いたね。キットでは鼻ぬぐい液を4滴テスト板に落とすのだが、4滴目が検査紙に濡れた瞬間、陽性バンドが出現した(ほとんど数秒以内に強陽性のバンド出現である)。家内の場合は10分後にようやく陽性バンドが出たのに!

というわけで我が家は相当量のインフルウイルスが空気中を漂っているはず。発症しない小生も、やはりこわくなってきたのでタミフルの予防服用を昨晩から始めた次第である。

ところで39度熱が出て検査強陽性の娘はタミフルを2回のんで解熱剤を一回使ったら平熱化し倦怠感も取れ食欲が猛烈に回復した。インフルエンザらしかったのはたった一日である。家内の方は3日目6カプセルのんだことにようやく平熱化したのだが、5日目だというのにダメージはまだまだ大きい。

大違いである。若いということは素晴らしいものだね。

2009年11月30日月曜日

ピロリ菌の検査法と感度・特異度

ピロリの検査法には7種類あるが、7つの検査法はいずれも感度・特異度とも90%以上あり信頼度が高い検査であり、どれを選択しても有用。

一般的に、感染診断では内視鏡検査を行い、胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断された場合、迅速ウレアーゼ試験や培養法が行われる。また、既に潰瘍と診断された除菌前診断には血清抗体検査などが行われる。

一方、除菌判定では薬剤の影響や治療後の採取時期によっては偽陰性や偽陽性が生じることがあるため、除菌治療終了1ヵ月後(初期判定)に陰性の場合、再確認するため3ヵ月〜1年後に異なった検査法による除菌判定(後期判定)を行う

  •   ボクは2ヶ月後(除菌後)に尿素呼気テストを外来予約に入れている。患者は絶飲・絶食で来院しテストを20分で終了させ、当日はボクには会わずに帰宅する。翌週(検査結果判明は4日後)来院して結果を伝える。

初期判定では尿素呼気試験、後期判定として3ヵ月後に便中抗原検査が推奨。

  • ボクはこんなめんどくさいことはしない。2ヶ月後に一回呼気テストをするだけ。だいたい便中抗原検査なんかしたことないな。
ボクはこれまで尿中と血清抗体検査の違いが(当然簡便な尿中検査の方が感度は低いものと思っていた)よくわからなかった。血清抗体の方が信頼できると思っていたが、違ったな。余り変わらんのだね。尿中抗体は20分くらいで判定が出るので、これだけ信頼できるのならこれまで以上に使っていこう。

あと抗体の陰性化についても具体的なエビデンスを知らなかったが、調べた範囲で記録しておくと・・・・

  1. IgG抗体のため感染後約1ヵ月は抗体産生されない
  2. 免疫能の十分発達していない小児やステロイド剤投与患者、高齢者などの免疫の低下した患者では偽陰性となる場合がある。
  3. 除菌後も抗体はすぐに消失せず偽陽性を示すことがあり、陰性化するには1年以上かかる場合がある。
  4. 除菌が失敗した場合は抗体価の明らかな減少はみられない。
  5. 成功例では除菌療法終了後抗体価は徐々に低下し、半年後には前値と比較して50%低下する。
  6. 抗体検査による除菌の判定は、6ヵ月以降に行い、変動率50%の低下が1つの指標とされる。
いずれにしても除菌の判定には「抗体検査」のような二次反応物は不適であると考えるのが妥当であろう。尿素呼気テストが現実的。

診療点数であるが実施料・判断料・手技料をすべて込みで最も安価なのは・・・抗体法であり血清で最大235点(2350円・・3割で700円)であり、尿素呼気テストはユービット310点入れて総計530点である。便抗原は総計294点であるから割とお得なのかもしれない。




表.各種検査法の感度と特異度
検査法 感度(%) 特異度(%)


培養法 77〜94 100
鏡検法 93〜99 95〜99
迅速ウレアーゼ試験 86〜97 86〜98



尿素呼気試験 90〜100 80〜99
血清抗体 88〜96 89〜100
尿中抗体 89〜97 77〜95
便中抗原 90〜98 87〜100

2009年11月29日日曜日

キラルと光学異性は同じような・・・違うような・・・

光学異性体のようなものである・・・と書いたが、誤解を招かないように追記:

Yahoo知恵袋より・・・

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不斉炭素原子を持つことと、光学異性体が存在することは、同じなのでしょうか?

つまり

不斉炭素原子を含んで

いるが光学異性体は存在しない。
もしくはその逆で光学異性体は存在するが不斉炭素原子は含まないということはあるのでしょうか?

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同じではありません。


「不斉炭素原子を含んでいるが光学異性体は存在しない」、「光学異性体は存在するが不斉炭素原子は含まない」というのは両方ともあり得る話です。

「不斉炭素原子を含んでいるが光学異性体は存在しない」化合物はメソ化合物といいます
不斉中心を複数持っているのに、分子内に対称面があるために光学異性体が存在しません
最も有名なのは2S,3R-酒石酸(メソ酒石酸)でしょう(構造はwikiを参照してください)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92%E7%9F%B3%E9%85%B8

逆に、「光学異性体は存在するが不斉炭素原子は含まない」例としてはアトロプ異性体というのがあります。
結合周りの回転が妨げられているので光学異性体が存在します。
例としては、BINAP、アレンなどが挙げられます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/BINAP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3_(%E5%8C%96...


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黒田玲子のNature: 巻き貝に見る右と左の決定

黒田玲子さんのNatureとは驚いた。それも巻き貝によるキラリティー。

黒田さんはそのキラルの世界の第一人者(分野が違うので正確にはわからないが、第一線で活躍されているのは間違いない)。1992年に出た新書はレベルが高く難しいのだが、なぜか魅力的であり何度か読ませて頂いたし、その後も読まれ続けている(絶版にはならない)。新書でこれだけ堅い本で17年間も版が続くのは珍しいと思う。

「生命世界の非対称性—自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書) 」

そもそもキラリティーとは化合物による右—左の回旋性、一般的には光学異性に近いものだ。僕らの分野では「サリドマイド」や「グルタミン酸」が有名だ。

  • サリドマイドは西ドイツで開発された催眠鎮静剤。1957(昭和32)年10月1日に 発売された。即効性があり、翌朝に効果を持ち越さず、更に大量服用しても致死的でなく自殺に使用できない安全性を特徴として販売された。だが、後に、妊婦が服用すると子供に手足が短いなどの独特の畸形(アザラシ肢症)が生じることが判明し、1961(昭和36)年11月26日に回収を決定した。この畸形児をサリドマイドベビーと呼ぶ。
  • 日本では海外での回収後も大日本製薬と(当時の)厚生省が販売を続けたため被害者が続出した。ちなみに米国では米国食品医薬品局(FDA)が薬自 体を認可しなかったため、殆ど被害は出ていない。
  • さて、サリドマイドの構造には不斉炭素(キラル炭素)が一つある。従ってサリドマイドには右手型と左手型が存在することになる。サリドマイドの睡眠・鎮静作用があるのは右手型(R体)であり、催畸形性による四肢の矮小化などの作用があるのは左手型(S体)である。当時はこの事実に気づかず、両者の混合物が市販されたわけだが、後の研究によりR体を服用しても体内でS体に変化することが確認されたため、問題はいずれにせよ避けられなかったと考えられる。
  • あるいは「味覚」で有名なのは身近な物ではグルタミン酸(味の素の主成分)。
味覚を感じるのは片一方のDグルタミン酸で、その鏡像体のLグルタミン酸は味覚を感じない。

さて、生物・医学的にも極めて興味深いこのキラリティーであるが、化学者としてではなく、巻き貝という生物を使って発生生物学・分子生物学的に右巻き・左巻きの謎に挑んだというのが今回のNatureの論文である。

ボクが驚くのはこの学際的なアプローチの転換(化学→生物学)を上手くなしとげ、著者数3名ながらトップネームの論文に仕立て上げたことである。失礼ながら御年62才 ではなかったかと・・。退官直前ではないか!学者としての最後の最後で見事にまた花を咲かせた。まあ元々華のある、お美しい先生だったが・・・。

ボクの印象に残ったのは「猿橋賞」のころである。猿橋賞は女性科学者だけに与えられる賞杯であるが、第一回の太田朋子さん以来、とびきり良い仕事をした人にしか与えられない、極めて質の高い科学賞である。今調べると93年に受賞されている。


さて、今回の研究であるが産経新聞から引用すると・・・

  • 右巻きと左巻きが存在する巻き貝の発生初期に細胞の配置を改変し、巻き型を逆転させることに、東大大学院総合文化研究科の黒田玲子教授らの研究グループが成功した。生物の左右性決定の“源流”に迫る成果。26日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表した。
  •  実験に使ったのは「ヨーロッパモノアラガイ」という淡水産の巻き貝。成長すると2〜3センチになり、自然界では右巻きが98%で左巻きは2%。黒田教授らは、4細胞から8細胞になる第3卵割期の胚(卵)に微小なガラス棒で力を加え、細胞の配置(ねじれの方向)を逆にした。
  •  その結果、左右を逆転させられた胚は、殻の巻き型や内臓の形、配置がすべて逆転した親貝に成長。臓器などの非対称性に関与する遺伝子も、発現部位の左右が入れ替わっていた。2細胞から4細胞になる第2卵割期に同じ操作を行っても、左右逆転は起こらなかった。
  •  人為的に誕生した「逆巻き」の貝は、本来右巻きなら左巻きに育っても右巻きの子を産み、本来左巻きの親からは左巻きの子が生まれた。これらの結果から、右巻きか左巻きかを決める遺伝情報は保存されたまま、細胞が8個に分かれた段階の配置によって右巻き型と左巻き型にわかれていると考えられる。

ということのようだ。あくなき探求心には感服する!

Nature advance online publication 25 November 2009 |
Received 29 July 2009; Accepted 22 October 2009; Published online 25 November 2009

Chiral blastomere arrangement dictates zygotic left–right asymmetry pathway in snails

Reiko Kuroda1,2,3, Bunshiro Endo2, Masanori Abe2 & Miho Shimizu2

  1. Department of Life Sciences, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-8902, Japan
  2. Kuroda Chiromorphology Team, ERATO-SORST, JST, Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-0041, Japan
  3. Department of Biophysics and Biochemistry, Graduate School of Science, The University of Tokyo, Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan

Correspondence to: Reiko Kuroda1,2,3 Correspondence and requests for materials should be addressed to R.K. (Email: ckuroda@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp).

Most animals display internal and/or external left–right asymmetry. Several mechanisms for left–right asymmetry determination have been proposed for vertebrates1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10 and invertebrates1, 2, 4, 9, 11, 12, 13, 14 but they are still not well characterized, particularly at the early developmental stage. The gastropods Lymnaea stagnalis and the closely related Lymnaea peregra have both the sinistral (recessive) and the dextral (dominant) snails within a species and the chirality is hereditary, determined by a single locus that functions maternally15, 16, 17, 18. Intriguingly, the handedness-determining gene(s) and the mechanisms are not yet identified. Here we show that in L. stagnalis, the chiral blastomere arrangement at the eight-cell stage (but not the two- or four-cell stage) determines the left–right asymmetry throughout the developmental programme, and acts upstream of the Nodal signalling pathway. Thus, we could demonstrate that mechanical micromanipulation of the third cleavage chirality (from the four- to the eight-cell stage) leads to reversal of embryonic handedness. These manipulated embryos grew to 'dextralized' sinistral and 'sinistralized' dextral snails—that is, normal healthy fertile organisms with all the usual left–right asymmetries reversed to that encoded by the mothers' genetic information. Moreover, manipulation reversed the embryonic nodal expression patterns. Using backcrossed F7 congenic animals, we could demonstrate a strong genetic linkage between the handedness-determining gene(s) and the chiral cytoskeletal dynamics at the third cleavage that promotes the dominant-type blastomere arrangement. These results establish the crucial importance of the maternally determined blastomere arrangement at the eight-cell stage in dictating zygotic signalling pathways in the organismal chiromorphogenesis. Similar chiral blastomere configuration mechanisms may also operate upstream of the Nodal pathway in left–right patterning of deuterostomes/vertebrates.

2009年11月23日月曜日

日本人のUC多型(九州大学):Nature Genetics最新online

Nature Genetics
Published online: 15 November 2009 | doi:10.1038/ng.482

A genome-wide association study identifies three new susceptibility loci for ulcerative colitis in the Japanese population


1384人の潰瘍性大腸炎患者と3057人のコントロール
3つの関連多型を見出している

1)FCGR2A (rs1801274, P = 1.56 10-12
2)rs17085007(chromosome 13q12), P = 6.64 10-8
3)SLC26A3 (rs2108225, P = 9.50 10-8).

九州大学は疫学(清原さん)が最近充実しているが、更に内科から炎症性腸疾患でこのような仕事が出たことは素晴らしい。この仕事はIBD研究を30年以上先頭に立って研究している飯田さんや松井さんの執念の産物のようにはたからは見える。本文を早く読んでみたい。

Kouichi Asano1,2,3, Tomonaga Matsushita1,2, Junji Umeno1,2, Naoya Hosono1, Atsushi Takahashi4, Takahisa Kawaguchi5, Takayuki Matsumoto2, Toshiyuki Matsui6, Yoichi Kakuta7, Yoshitaka Kinouchi7, Tooru Shimosegawa7, Masayo Hosokawa8, Yoshiaki Arimura8, Yasuhisa Shinomura8, Yutaka Kiyohara3, Tatsuhiko Tsunoda5, Naoyuki Kamatani4, Mitsuo Iida2, Yusuke Nakamura9 & Michiaki Kubo1,2,3

Ulcerative colitis is one of the principal forms of inflammatory bowel disease with complex manifestations. Although previous studies have indicated that there is a genetic contribution to the pathogenesis of ulcerative colitis, the genes influencing susceptibility to the disease have not been fully determined. To identify genetic factors conferring risk of ulcerative colitis, here we conducted a two-stage genome-wide association study and subsequent replication study using 1,384 Japanese individuals with ulcerative colitis and 3,057 control subjects. In addition to the expected strong association with the major histocompatibility complex (MHC) region, we identified three new susceptibility loci: the immunoglobulin receptor gene FCGR2A (rs1801274, P = 1.56 times 10-12), a locus on chromosome 13q12 (rs17085007, P = 6.64 times 10-8) and the glycoprotein gene SLC26A3 (rs2108225, P = 9.50 times 10-8). rs1801274 is a nonsynonymous SNP of FCGR2A that is reported to have a critical effect on receptor binding affinity for IgG and to be associated with other autoimmune diseases. Our findings provide insight into the molecular pathogenesis of ulcerative colitis.


  1. Laboratory for Genotyping Development, Center for Genomic Medicine, RIKEN, Yokohama Institute, Yokohama, Japan.
  2. Department of Medicine and Clinical Science, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Fukuoka, Japan.
  3. Department of Environmental Medicine, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Fukuoka, Japan.
  4. Laboratory for Statistical Analysis, Center for Genomic Medicine, RIKEN, Yokohama Institute, Japan.
  5. Laboratory for Medical Informatics, Center for Genomic Medicine, RIKEN, Yokohama Institute, Japan.
  6. Department of Gastroenterology, Fukuoka University Chikushi Hospital, Fukuoka, Japan.
  7. Division of Gastroenterology, Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan.
  8. First Department of Internal Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine, Sapporo, Japan.
  9. Laboratory of Molecular Medicine, Human Genome Center, Institute of Medical Science, University of Tokyo, Tokyo, Japan.

2009年11月22日日曜日

今頃のインフルエンザは何型?

夏以降外来ではインフルチェックでA陽性なら「新型」「季節性」関わりなくインフルエンザと説明している。
で、患者に聞かれるのが「新型の可能性はどれくらいでしょうか?」というものであり、じつは上部機関からの受け売りで「いまはほとんどが新型といっていいです」と答えるが、その根拠をボクは知らない。知らなかった。

下のグラフは国立感染症研究所のデータであるが、なるほど夏以降ほぼ100%新型であることがわかる。サンプル調査であるから、全例新型といって良いかどうかわからんが、事実上は「100%」であろう。ボクは勉強不足なのかね・・・他のお医者はみなこの基礎データを見てるのかな。どうも、この手のデータにボクは弱い。この手のデータが届かないのだ、ワタクシの元には・・・。最新の医学生物学にはかなり強いつもりでいるが、どうやったら「信頼できるデータ」が容易に手元に届くようになるのだろうか?



国外データなら自信があるのだが、国内データは難しい。本当に難しい。まず国の研究機関のデータがいまいち。だから取捨選択が本当に難しい。

2009年11月21日土曜日

ICD10 : 肝・胆・膵

K70-K77 肝疾患
 K80-K87 胆のう<嚢>,胆管及び膵の障害
 K90-K93 消化器系のその他の疾患