一時期の養老孟司ほどではないけど内田 樹が本を出すスピードは尋常ではない。しかし内田さんが本を書くのはここ10年くらいなので、たまりにたまったものを今はき出しているんだと思えば余り不自然ではない・・・とボクは思うぞ。このあたりが斎藤孝などの面白くも何ともない本をばさばさと書く人たちとは違うと思う。出版社が「この時期、この旬のシーズンを逃すな!」とばかり書かせまくる、そんなあざといパターンをここ数年山のように・・・(しかし横目で)見てきた。おそらく内田は違う。自分の方から書きまくっている。書きたくて書きたくてしょうがない、子供みたいだね。
内田さんの興味の中で一番面白いテーマ、ボクの心を揺さぶるテーマは「鎮魂」である。西部開拓史における無名のカーボーイ達。戦争で死んでいった無言の戦士達。しっかり鎮魂しないと化けて出るぞー、という懸案事項についての考察である。集合的無知の面白さ。神話と習俗の無視できないヒント。特に人種に関わらずある種共通して引き継がれてきた神話的記憶に塗り込まれた人類学的智恵の世界は無類の面白さである。墓の無い民族はない。どこの部族も重たい石で蓋をする。死んだ人間が再び地中から出てこれないようにである。これが、それぞれ横の連絡もない民族において独自に錬り出された戦略であるところが人間・人類の面白さである。こんなことが、そんなことが内田ワールドの真骨頂である。しかもだ。今の日本のホームレスの人々のこともしっかり視野にある。
「邪悪なものの鎮め方」というのもボクにはほとんど内容が読めてしまう。というか内田ファンなら皆そうだろう。でも読みたくなる。やはり読んでみたくなります。そうやって「日本辺境論」も読んだしな。「日本辺境論」はことさら新しい話ではないが、やはり面白かった。しかしさ、ひどい日本語であったことよ。やはり書きすぎているのかもしれんね、内田さん。
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