救急隊からPHSに直電話があり(最近はこのパターンが多い)「火事場から焼き出されたおばあさんが「ちょっと煙をすった」と言われるので念のため診てもらえますか・・?」とのこと「いいすよ」と脳天気に返事をしてしまう。
一見なんてことないように見えるばあさんだが、異様に「煤と有機ガスの臭い」が強い。「どうですか」と問うと「息をするたびに喉が痛くて・・・」と言われる。覗くと何もない。喉や鼻腔は煤けていない。さて、こまったぞ。とそこに外来婦長が現れしきりにサインをボクに送る。「頼むから入院させないで欲しい」と目が訴えている。実際にベッドがなくて入院は困難であることがわかった。(それなら救急車を受けるなよ・・・と言われるだろうな、まあまあ)血ガスは全く悪くない。
でもでも、騙されてはいけないのだそうだ・・・と後から知った。ボクの論理では一酸化炭素その他が当病院では調べられないので、自然に高次病院へ依頼しなくてはいけない。少なくとも気道熱傷がある可能性は全く否定できないよな、このばあさん。というわけで、某病院救急外来へお願いした。快く引き受けてくれた。いつもながら感謝、感謝の日々である。
ところで必死のアイコンタクト看護婦には別の論理、というかトラウマがあったのだった。つまり気道熱傷で泣いた看護婦さんがたくさんいるらしい、この病院。入院時はけろっとしていて、医者が引き上げた深夜帯に急変・死亡していった人たちが、多くはないのだろうが、それでもトラウマになるくらいはいたのだそうだ。年長者の言うことは聞くものだ。
ある呼吸器内科の方のブログから転記;
●気道熱傷を疑うポイント
・密室での火災
・咳、痰、くしゃみ、息切れ、嗄声
・黒い痰、焦げた鼻毛
・咽頭浮腫、顔面や頚部の熱傷
・その他の部位の重症熱傷
・ラ音(Crackle、Wheeze)
・意識障害
SpO2がどんなに良くても、必ず10Lリザーバーマスクで酸素投与を行う。
カルボキシヘモグロビンや、メトヘモグロビンがあると、SpO2は
実際の値よりも過大評価をしてしまうため、あまり信用しないほうがよい。
●対処 ABC
1.挿管
・口腔、咽頭内に熱傷や浮腫があるとき
・頚部全周の熱傷やstridorがあるとき
・昏睡状態のとき
→ 挿管
※全身熱傷の場合、大量輸液を行うことで、気道浮腫を起こすことも。
気道熱傷がなくても、早期の気管挿管が必要
2.高容量酸素投与(COPD患者さんでも迷わずに!)
3.Β2刺激薬使用。
4.20G×2本ライン確保
5.血ガスでCO-Hb、Met-Hbチェック
6.胸部レントゲン
7.心電図(不整脈や心筋虚血が起こりうる)
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