2010年11月30日火曜日

京大上本外科からNature Genetics: あっぱれ!

Continuous cell supply from a Sox9-expressing progenitor zone in adult liver, exocrine pancreas and intestine

Kenichiro Furuyama, Yoshiya Kawaguchi, Haruhiko Akiyama, Masashi Horiguchi, Sota Kodama, Takeshi Kuhara, Shinichi Hosokawa, Ashraf Elbahrawy, Tsunemitsu Soeda, Masayuki Koizumi, Toshihiko Masui, Michiya Kawaguchi, Kyoichi Takaori, Ryuichiro Doi, Eiichiro Nishi, Ryosuke Kakinoki, Jian Min Deng, Richard R Behringer, Takashi Nakamura & Shinji Uemoto

Department of Surgery, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan.

Published online: 28 November 2010: Nature Genetics (2010)

Received 02 September 2010
Accepted 03 November 2010
The liver and exocrine pancreas share a common structure, with functioning units (hepatic plates and pancreatic acini) connected to the ductal tree. Here we show that Sox9 is expressed throughout the biliary and pancreatic ductal epithelia, which are connected to the intestinal stem-cell zone. Cre-based lineage tracing showed that adult intestinal cells, hepatocytes and pancreatic acinar cells are supplied physiologically from Sox9-expressing progenitors. Combination of lineage analysis and hepatic injury experiments showed involvement of Sox9-positive precursors in liver regeneration. Embryonic pancreatic Sox9-expressing cells differentiate into all types of mature cells, but their capacity for endocrine differentiation diminishes shortly after birth, when endocrine cells detach from the epithelial lining of the ducts and form the islets of Langerhans. We observed a developmental switch in the hepatic progenitor cell type from Sox9-negative to Sox9-positive progenitors as the biliary tree develops. These results suggest interdependence between the structure and homeostasis of endodermal organs, with Sox9 expression being linked to progenitor status.

本文をまだ読めていないので軽々しく評価できないが、なんだかとてつもなく面白そうな論文である。肝と膵と腸管の発生は元来連関しているのだろうが、しかし最終的な形態は激しく異なるわけでもあり、なかなか難しい研究対象なのだ。この研究の本質はまだよくわからないが、表面的なことだけ言えばいくつか賞賛すべき点がある。
  1. まず外科の教室でNature Geneticsのしかもarticleであることが素晴らしい。(共同研究者を見たが、研究の主体は京都大学外科学教室の上本教授の研究室であることは間違いなさそうである)
  2. ついで論文提出からの期間が信じられないくらい短い。9月にサブミットして11月28日にはオンラインに載っている。余程最初から完成度が高かったということだろう。
表面的な素晴らしさだけでも、メモするに値すると思う。


2010年11月29日月曜日

気が付けば丁度3年、今年200稿目の投稿

三年前の本日(2007.11.29)、初めてブログの存在というものに気が付いて投稿を開始したときの、最初の話題が奇しくもLgr5であった。

      以上が2007.11.29の投稿内容である。

この時期クリバースの講演を拝聴したことが鮮やかに思い出される。小生の腫瘍学の興味は実に狭いことがよくわかるこの3年でもあるな。わらっちゃうくらい偏屈である。興味の対象は3年前と全く変わらない。癌とゲノム変異。幹細胞。反復配列。臨床癌研究。以上のテーマは興味津々。一方ほとんど興味が湧かない領域はmicroRNA、メチレーションを始めとするepigenomic alterationである。前者はターゲットが広すぎて曖昧模糊。後者についてはなんとなく一歩下がって見てしまうのであるが、大きな理由は方法論かもしれない。

なんにでも興味があるというわけにはとてもいかないが、これでもかなり守備範囲は広いほうだと思う。守備範囲は広くしているが、とはいえ、全てに興味があるわけではない。偏屈の由縁である。

今後目の離せない新しいテーマが出てくることを期待して来年を迎えようではないか。

パネート細胞はLgr5幹細胞のニッチである?:クリバースの最新nature

ハンス・クリバースのところから新しいLgr5の論文が出た。陰窩の底にあるLgr5幹細胞をその横に存在するパネート細胞がをサポートする、いわゆるニッチであることを明らかにした報告である。

その昔、皆が幹細胞を求めて陰窩の底を捜していた頃、横太りのパネートは大きな顔をしており、それ以外の有力な細胞を見つけることができなかった。実際Lgr5が見つかると、その陽性細胞はまるで満員電車のなかで押しつぶされそうになった細くて情けないような痩せた細胞であったため「なるほど見のがされたわけだ・・」と納得したことを思い出す。

このLgr5は初めて発表されてからもう3年になるが、クリバースは我が道をぐいぐい行っているものの、世間全体の腸管ステムの研究が全面的にLgr5にシフトしてしまったとはまだまだ思えない。クリバース以外の進展をまとめたレビューなどはないものかね。

Paneth cells constitute the niche for Lgr5 stem cells in intestinal crypts

Toshiro Sato1, Johan H. van Es1, Hugo J. Snippert1, Daniel E. Stange1, Robert G. Vries1, Maaike van den Born1, Nick Barker1, Noah F. Shroyer2, Marc van de Wetering1 & Hans Clevers1
Received
Accepted
Published online

2010年11月25日木曜日

豆状骨骨折は手根部骨折の1%以下??

入院中の骨盤骨折の患者殿(例のマルゲーヌ骨折とは別人)、手が痛いというので色々調べるがなかなかわからず、手根部のCTを撮ったところ、ようやく豆状骨骨折であることが判明した。受傷時(転落事故である)一緒に骨折していたのだね。最近ではレンドゲン技師殿がやる気満々で3D再構成画像を作ってくれるので小生のように非専門医でも一発で診断ができる。とはいえCTまで撮るのだからただ事ではない。例によって変位はほとんどない。すでに痛みはかなり引いている。整形外科の診察をお願いしたところ、骨盤骨折が良くなったら一度手の専門整形外科の診察を受けることになった。困ったことに松葉杖の荷重が一手にかかるのが当該手関節なのである。当該骨盤への荷重がようやく全荷重(体重分すべて片側の関節にかけても良い状態—ヒトは歩行する際の一歩一歩で右左にそれぞれ全荷重をかけている)許可が出たばかりであり、歩行訓練が軌道に乗ってきた矢先なのに手が使えないのは困る。困ったなあ。あちらが立てばこちらが立たない。手が大事か、歩行が大事か。

豆状骨骨折は手根骨骨折の中では比較的まれな骨折である。 豆状骨骨折の占める割合は 手根骨骨折の1%以下ではないかといわれているそうだ。

ネット上にも参考ページは少ない。北里整形の86年の論文の概要を下にまとめた。今の時代も余り変わらないようだ。


      豆状骨骨折の3例
      小林明正, 二見俊郎, 糸満盛憲, 南澤育雄, 小澤隆, 山本真
        北里大学医学部整形外科
        骨折, 8 : 206-209, 1986.

外固定期間は単独骨折例では4~6週間行えば充分である。豆状骨は種子骨の役目を果たしていることを考えると,保存療法後もなお長期にわたり疹痛が持続する場合には,豆状骨の摘出を行う方が良い。 豆状骨骨折の予後は通常良好であるが,関節面にまで骨折線がおよぶ例の中には,将来豆状・三角骨関節に変形性関節症の変化を生ずる例もあることから,長期にわたる経過観察が必要と思われる。

とのことである。

spinnaker-sail sign:最新のNEJMのイメージ

ヨットの帆を胸腺の輪郭に見立てたレ線用語として「spinnaker-sail sign」というのがあるらしい。 spinnakerというのは



のことである。三角帆。

小児の縦隔気腫の場合に胸腺が持ち上げられてその輪郭が明瞭に描出される所見である。















新生児の胸写で縦隔気腫の際に見られるという今週号のNEJMに載っている。

病気に興味が有る訳ではない。spinnakerという言葉につられただけである。


2010年11月24日水曜日

内田さんによる北朝鮮事情雑感

今回の北朝鮮の砲撃について内田樹さんが面白い解説を述べている。

独裁体制のピットフォールについて


小生もなぜに韓国は比較的冷静に事態を眺めていられるのか不思議だったので、この解説というか想像力にはなるほどと思った。ほとんど情報がないのにこのような文章が書けるということが、なんとも厚顔無恥というか、自信満々というか、素晴らしい。ほめんてんだよ、私は。

北朝鮮の体制が壊れるのは、実は小生の願うところではない。本当は心から願わなければならないのだろうがーだって拉致被害者の皆さんの安否があるのでーしかしそれでも体制崩壊は恐ろしい。壊れるなら上手に壊してほしい。非武装緩衝地帯を何らかの形で残してもらわないと、中国と韓国が国境線で対峙するgeometryはなにかとストレスフルなものとなろう。日本にとっても中国にとってもアメリカにとってもそして韓国にとっても、西側の国と中華人民共和国があの地で直接国境を接するストレスは耐え難いものであろうと思うのだ。

ノロウイルス流行の兆し

一昨日夜勤当直をしたが、嘔吐・下痢患者の多いこと。嘔吐も下痢もというタイプよりは、一方が強調されているヒトが多いという印象。ウイルス性であろうが、そんな矢先・・・


全国でノロウイルス患者増 さらに流行拡大の恐れという記事を見る。

今日の昼のおばあさんはノロっぽかったが「ノロウイルス」テストは陰性であった。いろいろいるわな。ところで嘔吐下痢症をたくさん診たせいかボクも不調である。こまるな。

去年の今頃はインフルエンザが凄かったが、今年はまだ陽性がいないようだ。昨日の休日近くの診療所当番だった院長が36人チェックして陽性ゼロだったということだ。これから大変だろうね。

2010年11月23日火曜日

電子書籍の「自炊」なる言葉をご存知か?

あ〜いやだいやだ。といいつつなす術を持たない。目の前でおかしなことが進行し始めているのに、止める手だてがないというのは情けない。今朝気がついたのだけど、ネットの世界では「自炊」という言葉が独り立ちしつつあるかのようである。

この「自炊」という言葉から何を連想されるか?


これは買ってきた本を(わざわざ)裁断、ばらばらにし、スキャナーでpdf化し、電子書籍媒体(iPadやkindle)に取り込むことを言うらしい。紙媒体で読むのではなく、わざわざiPadやkindleで読むというのかいじましい。あくまでも個人的な営為なら許されると説明されるが、本をバラバラにすることになんら抵抗感が無い、無神経な輩が増殖しているということにいらだつ。それとそんなことをすれば、いずれ個人のPCを超えてネットの世界にそのpdfは広がっていくだろうし、そうすると著作権なんていうはかない権利はきれいさっぱり消えてなくなるだろう・・・と容易に予想できるのに(余程の馬鹿でないかぎり)、そのことへの怖れも抵抗感もないという人間がいることに腹が立つ。著作権が無くなれば、著作で生計を立てる純粋職業作家が生存できなくなるということであるが、それは余りに世知辛い世界である。

とはいえ技術はその危惧を大いに凌駕しているのである。我々はこの新しい事態になんとか対処していかなければならない。前にも述べたが、本質的にiPadやkindleの世界は極めて夢のある世界なのである、そんな本質を内包している。個人が著作を発表し、long tailのどこかにランクされる。世界の中には、どこかに興味を持ってくれるヒトが必ずいる。いると思う。金を払ってでも読みたい。そんなヒトはきっといる。そんなヒトどおしで著作のやり取りが可能な世界。これがボクのイメージするiPadやkindleの世界である。

これからどうなっていくのだろうね?

2010年11月22日月曜日

神経分化とLINE挿入

Fred H. Gageという研究者のことは知らなかったが、LINEの研究では最近ずいぶん活躍しているようである。

ここ数年の研究で神経幹細胞から神経が分化していく際に、(1)ゲノム改変が起こっているようであり、その機序として(2)LINE エレメントの新たな転移機構を提唱しているが、その際(3)methyl-CpG-binding protein 2 (MeCP2)が欠失しているとLINEの活躍は激しくなることを今回示した。
  1. Coufal NG, Garcia-Perez JL, Peng GE, Yeo GW, Mu Y, Lovci MT, Morell M, O'Shea KS, Moran JV, Gage FH: L1 retrotransposition in human neural progenitor cells. Nature 460(7259):1127-1131, 2009

  2. Alisch RS, Garcia-Perez JL, Muotri AR, Gage FH, Moran JV: Unconventional translation of mammalian LINE-1 retrotransposons. Genes & development 20(2):210-224, 2006

  3. Muotri AR, Chu VT, Marchetto MC, Deng W, Moran JV, Gage FH: Somatic mosaicism in neuronal precursor cells mediated by L1 retrotransposition. Nature 435(7044):903-910, 2005

Kazazian教授のあとを継ぐのはこの研究者のラインなのか??注目しておこう。

L1 retrotransposition in neurons is modulated by MeCP2

Alysson R. Muotri, Maria C. N. Marchetto, Nicole G. Coufal, Ruth Oefner, Gene Yeo, Kinichi Nakashima & Fred H. Gage

Nature
Volume:468
Pages:443–44
Date published:(18 November 2010)


Received 27 April 2010
Accepted 30 September 2010
Online  17 November 2010

Long interspersed nuclear elements-1 (LINE-1 or L1s) are abundant retrotransposons that comprise approximately 20% of mammalian genomes1, 2, 3. Active L1 retrotransposons can impact the genome in a variety of ways, creating insertions, deletions, new splice sites or gene expression fine-tuning4, 5, 6. We have shown previously that L1 retrotransposons are capable of mobilization in neuronal progenitor cells from rodents and humans and evidence of massive L1 insertions was observed in adult brain tissues but not in other somatic tissues7, 8. In addition, L1 mobility in the adult hippocampus can be influenced by the environment9. The neuronal specificity of somatic L1 retrotransposition in neural progenitors is partially due to the transition of a Sox2/HDAC1 repressor complex to a Wnt-mediated T-cell factor/lymphoid enhancer factor (TCF/LEF) transcriptional activator7, 10. The transcriptional switch accompanies chromatin remodelling during neuronal differentiation, allowing a transient stimulation of L1 transcription7. The activity of L1 retrotransposons during brain development can have an impact on gene expression and neuronal function, thereby increasing brain-specific genetic mosaicism11, 12. Further understanding of the molecular mechanisms that regulate L1 expression should provide new insights into the role of L1 retrotransposition during brain development. Here we show that L1 neuronal transcription and retrotransposition in rodents are increased in the absence of methyl-CpG-binding protein 2 (MeCP2), a protein involved in global DNA methylation and human neurodevelopmental diseases. Using neuronal progenitor cells derived from human induced pluripotent stem cells and human tissues, we revealed that patients with Rett syndrome (RTT), carrying MeCP2 mutations, have increased susceptibility for L1 retrotransposition. Our data demonstrate that L1 retrotransposition can be controlled in a tissue-specific manner and that disease-related genetic mutations can influence the frequency of neuronal L1 retrotransposition. Our findings add a new level of complexity to the molecular events that can lead to neurological disorders.

2010年11月19日金曜日

アート・オブ・ピアノ-20世紀の偉大なピアニストたち- [DVD]

アート・オブ・ピアノ-20世紀の偉大なピアニストたち- [DVD]

というのを随分前に購入していたが、それを一昨日、昨日で視聴した。まあ、あなたすごいのなんのって。生きたラフマニノフの演奏やパデレフスキーもすごいが、全盛期のホロビッツには息が止まった。16人のピアニストが登場するのだが、その中でボクがうれしかったのが、コルトーとホロビッツとミケランジェリだった。

  1. コルトーのショパンはこれがボクの好きだったショパンだと再度惚れ惚れもしたが、映像がいいの。無骨なオッサンなのにねえ。『子供の情景を指導するコルトーの詩的な言葉の数々も素敵だ。

  2. 驚いたのはミケランジェリ。手が、指が、なんと繊細なんだろう!あの取っつきがたい雰囲気からは想像も出来ない手。あれは女の手だ。スカルラッティの ソナタは絶品である。

  3. そしてホロビッツのセクションはなんとスローモーション映像からスタートするのだ。ショパンの練習曲 第10番であるが、あゆが踊っている姿のような、それも数十匹がしぶきを上げながら踊っているかのような不思議な手の動きである。普通の映像では我々の眼には見えないものすごい指の動きなのだ。そして全盛期のホロビッツによるスクリャービンのエチュード。これは次のカルメン変奏曲とともに人類の貴重な遺産でしょう。すごい!人間ここまでできるのか。震えがきます。最初の一音から最後まで。

というわけで、良い物を見せてもらった。買ったときは3700円くらいで高い買い物だと思ったが、決して高くない。映画2本見るよりは中身のある108分である。

2010年11月18日木曜日

jaw-thrust maneuver, 下顎挙上法

jaw-thrust maneuver, 下顎挙上法というのはやはり良いものなのだなあと思わせるビデオがNEJMに出ている。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm0910490

こうやって引っ張り上げると、気道は確かに確保できているというのがファイバー画像でわかる。なんてことない動画であるが、説得力ある。学生さんに見せるとよい教材である。

2010年11月17日水曜日

膵癌の転移巣:Vogelsteinの追加





























以前膵癌の転移巣とidentical cloneが原発巣にもあるというVogelsteinグループの論文をnoteしたが、原文にあった図表を掲載しないとそのインパクトが残らないので再掲。


左a) 剖検時の膵臓:このようにカットしていった切断面がb)であり、小さな円をくり抜いて細胞株を作成し、それぞれの癌細胞のシークエンスを行った。

b)とc)を見比べる。黄色いクローンは基本的な変異を持ついわば親株でありこれをparent cloneとc)では呼んでいる。スライス1)ではクローンAであり一番クローンが多彩なスライス3)ではD,E,F,Gがそれに相当する。

腹膜播種がこの症例では認められ、その遺伝子変異パターンはparentより若干進んでおり(新たに3遺伝子の変異が加わっている)、原発巣ではP,Q,Rクローンと同等。

2010年11月15日月曜日

マンデルブロ死去


マンデルブロが死んだ。ブノワ・マンデルブロ(Benoît B. Mandelbrot, 1924年11月20日 - 2010年10月14日)。生きておられたのですねマンデルブロ。 この方もレヴィ=ストロースと同じように、死去して初めて同時代人だったんだということを知る。



フラクタル構造、こいつ本当は相当に難しい概念なのだろうが、その現実的イメージとして例えば上の絵図などが余りにも日常的に私たちの目に触れるために、我々にとって決して縁がない構造というわけではない。その図形の輪郭をどれだけ拡大しても常に同じパターンが登場すると説明されるが、これを数学者(その創始者であるマンデルブロ)に定義させると、とてもじゃないが理解できないものとなる。何せこうくるのである↓

マンデルブロはフラクタルを「ハウスドルフ次元が位相次元を厳密に上回るような集合」と定義した。あーいやだ、いやだ。まったくわからない。さて・・・、


ところが、人体の構造説明などで突然フラクタル構造などが登場するので油断がならない。例えばこうだ↓




  • ・・・『血管の分岐構造や腸の内壁などはフラクタル構造であるが、それは次のような理由によるものだろうと考えられている。
例えば血管の配置を考えたとき、人体において体積は有限であり貴重なリソースであると言えるので、血管が占有する体積は可能な限り小さいことが望ましい。一方、ガス交換等に使える血管表面積は可能な限り大きく取れる方が良い。
このような目的からすると、有限の体積の中に無限の表面積を包含できるフラクタル構造は非常に合理的かつ効率的であることが解る。しかも、このような構造を生成するために必要な設計情報も、比較的単純な手続きの再帰的な適用で済まされるので、遺伝情報に占める割合もごく少量で済むものと考えられる。』・・・


遺伝情報に占める割合もごく少量で済むというのが、それっぽい。実際非常に不思議で複雑な絵図に見えるマンデルブロのフラクタル図形を数学的に表示すると、至って簡単なものになるのだそうだ。 とにかく視覚的イメージが面白いので、想像力は大いにかき立てられる。無限を考えるのに良い取っかかりになると思う。

2010年11月13日土曜日

マルゲーヌ骨折:骨盤骨折


乳癌の外来フォロー患者殿が家で転倒したといい来院。じっとしてるとなんでもない。立たせても何ともない。しかし「歩いてご覧なさい」といっても最初の一歩が出ない。圧痛はそこまで強くない。Xp上大腿骨はどうやら大丈夫。

その後しばらくして寝てると何ともないが起きると痛いと言い出した。そこで整形に診て貰った。

あっと驚くだな。骨盤の後と前が縦にヒビが入っている。正確に言うと腸骨の縦骨折(左仙腸関節とほぼ平行に)。および恥骨も上下枝ヒビが入っている。偏倚は目立たないからいいが、一ヶ月ベット上安静を言いつかった。
参った。参った。「歩いてご覧なさい・・・・> ご冗談もほどほどにである」

これをマルゲーヌ骨折というらしい。 Malgaigne骨折。そういえばあったかなというくらいのほのかな記憶である。

膀直障害と骨盤内出血にはこれからも気をつけるべしでしょう。

上の絵は交通事故110番から引用しました

2010年11月12日金曜日

Triple Negative乳癌の現状:NEJMの最新の総説

NEJMの最新号にTriple Negative乳癌の総説が掲載された。わっ!と眼を見張るような総説でもないが、なかなかの労作ではあるようだ。

前半ではTriple Negativeとbasal-likeの異同についてかなり詳細に論じているが、8割くらいはオーバーラップするのかなというのが現状。「いとこのような」と表現している。全く考え方が違う領域から出てきたカテゴリーなのに似ているのが混乱のもとなのだ。

臨床的に今のところ有効な分類はTriple Negativeなので、どうしても後半はTriple Negativeについて論が進む。

総説というのは自分の意見が書ける場であると私などは考えるのだが、そしてそうでなくては面白くないのだが、なかなか主張が出てこない。最後の最後でちらっとこんなことを述べている。

・・・・The expressions “triple-negative” and “basal-like” are essentially operational rather than diagnostic. In time, they will probably be replaced by other, more specific terminology.・・・・・ 用語としてはあまり良くないので、そのうちもっときちっとした言葉に置き換えられるだろう・・・と。

小生はbasal-likeという言葉が新しい言葉に代えられるのは全く構わないが、発現遺伝子プロファイルによるクラスタリング解析から出てきた全く新しい診断概念である「basal-like」が消えてしまうことには耐えられない。この定義(発現遺伝子解析)に沿う研究が更に進んでいくことを大いに期待するものである。

This article has no abstract; the first 100 words appear below.

A PubMed search of the medical literature shows that the first mention of “triple-negative” breast cancer was in October 2006; since then, the term has appeared in more than 600 publications.1 This increase reflects the growing recognition of the importance of triple-negative breast cancer (see the Glossary for this and other key terms) by oncologists, pathologists, and geneticists, as well as by the approximately 12 to 17% of women with breast cancer who have triple-negative breast cancer. As a group, patients with triple-negative tumors have a relatively poor outcome and cannot be treated with endocrine therapy or therapies targeted to . . .

2010年11月9日火曜日

「シャガール──ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展

「シャガール──ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展

昨日は本当に天気が良く気持ちの良い日曜日であった。かみさんがどこかに行こうよというのでバスにのり公園を散歩し美術館に行った。こんな日が一年中続いたらこの街もどんなにいいだろうと思ったことだ。

さて美術館ではシャガール展をやっていた。あまり期待せずに入ったが、それでもシャガールだから悪くはないはずだとは思った。良い意味で裏切られた。こんなに実物が良いのかと驚いた次第である。

ポスターや写真画像と実物に差のある画描きというのがあって、なかなか写真では良さがわからない人がいる。小生にとって代表的なのはポロックである。写真で見る限りこの抽象画家の絵は全く訴えるものがない。ところがNYCの近代美術館で初めて目の当たりにした本物はすばらしい質感で迫ってくるのだった。逆に色味のきれいなクレーやシャガールは実物でなくても写真で十分堪能できる絵描きである。その証拠にこれでもかというくらいにポスターやカレンダーの絵柄になっているではないか。


そのシャガールである。ほとんどの絵は画集と同様に素晴らしかった。いくつかの絵は画集より数段素晴らしかった。そして2枚の絵には涙が出るほど感激してしまった。立ちすくんでしまった。一枚は「赤い馬」であり今一枚が「家族の顕現」という絵である。

特に「家族の顕現」の「赤」—これが基調色—は、これまで見たどんな画家の赤よりも素晴らしい色合いであった。





























シャガールといえば青というのが私のイメージなのだが、違っていた。赤こそ素晴らしい。家族—すでに亡き家族も含めて—が自分の周りに現前するのを柔らかくも鮮鋭な赤みが空から包み込む絵柄とでもいえば良いのか。この展覧会では室温や照明をポンピドーセンターと同様に設定してあるとのことだ。どうか絵の前やや左側から絵を眺めて欲しい。右からのぞき込むより数段素晴らしい色合いを眼にすることだろう。


(ネット上のこの引用した絵を見て、「なんだそれ、つまらん」と言わないでほしい。本物はどきどきするぜ、きっと)


今年見た展覧会ではピカイチだと思うな。併設の(アバンギャルドであるから何人もの画描きが来ていた)カンディンスキーも良かった。

2010年11月7日日曜日

ラヴェルとクリムト


掲載の絵はクリムトの有名な絵の一つであり、描かれた女性はマルガレーテという。

この女性とラヴェルには因縁があることを最近しった。黄昏の維納(たそがれのウィーン)というのは19世紀後半のウイーンのことをいうのだと思うが、この絵が描かれた1905年というのも色濃くその雰囲気を残しているのだろう。

マーラーでいうと1905年は7番「夜の歌」であり、すでに退廃破綻している。死の影に怯えている。ラヴェルはこの女性の弟のためにピアノ協奏曲を作曲している。それが有名な「左手のためのピアノ協奏曲」である。この弟は第一次世界大戦で右手を負傷した有名なピアニストだったのだ。さて、この女性その弟といったい何物だったのだろう?


姉はクリムトに肖像画を書かせている。弟はラヴェルにピアノ協奏曲を献呈されているのだ。

さて実は彼らの兄弟にはもう1人著名人がいるのであった。この人がすべての鍵となるのかもしれない。それを最近知って驚いた次第である。

その人物こそが20世紀哲学界の超巨人「ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン」である。
ルートヴィヒの兄パウル・ウィトゲンシュタインは有名なピアニスト。
姉がクリムトの絵の主人公であるマルガレーテ・ウィトゲンシュタインというわけだ。

なんとも驚くべきつながりだと思うな、私。

2010年11月6日土曜日

ラヴェル;全作品

ラヴェルの楽曲一覧

Op. 作品タイトル 作曲年 編成 備考
1 ピアノソナタの楽章 1888 pf 紛失
2 グリーグの主題による変奏曲 1888 pf
3 シューマンの主題による変奏曲 1888 pf
4 愛に死せる王女のためのバラード 1893 独唱,pf
5 グロテスクなセレナード 1892-93 pf
6 暗く果てしない眠り 1895 独唱,pf
7 古風なメヌエット 1895 pf
8 ハバネラ 1895 pf 『耳で聞く風景』第1曲
9 聖女 1896 独唱,pf
10 スピネットを弾くアンヌのこと 1896 独唱,pf 『クリマン・マロの2つの墓碑』第2曲
11 パレード 1896 pf バレエ音楽のためのスケッチ
12 ヴァイオリンソナタ 1897 vn,pf
13 鐘が鳴る中で 1897 2pf 『耳で聞く風景』第2曲
14 ワルツ ニ長調 1898 pf
15 紡ぎ車の歌 1898 独唱,pf
16 何と打ち沈んだ 1898 独唱,pf
17 シェヘラザード』序曲 1898 Orch
18 歌劇『オリンピア』 1898-99
断片のみ。
スケッチの一部は未完の交響曲に挿入
19 亡き王女のためのパヴァーヌ 1899 pf
20 フーガ 1899 pf 紛失
21 私に雪を投げたアンヌのこと 1899 独唱,pf 『クリマン・マロの2つの墓碑』第1曲
22 カンタータ『カリロエ』 1900 独唱,cho,Orch 紛失
23 フーガ ニ長調 1900 pf
24 ルベールの主題による4声のフーガ ヘ長調 1900 pf
25 舞姫 1900 独唱,cho,Orch
26 前奏曲とフーガ 1900 pf 紛失
27 フーガ ヘ長調 1900 pf
28 あらゆる物が輝いている 1900 S,混声cho,Orch
29 カンタータ『ミルラ』 1901 S,T,Br,Orch
30 水の戯れ 1901 pf
31 カンタータ『セミラミス』 1902 独唱,cho,Orch 紛失
32 フーガ 変ホ長調 1902 pf
33 1902 S,混声cho,Orch
34 カンタータ『アルキュオーネ』 1902 S,T,A,Orch
35 弦楽四重奏曲 ヘ長調 1902-03 SQ
36 フーガ ホ短調 1903 pf
37 プロヴァンスの朝 1903 S,混声cho,Orch
38 カンタータ『アリサ』 1903 S,T,Br,Orch
39 花のマント 1903 独唱,pf
40 ソナチネ 1903-05 pf
41 歌曲集『シェエラザード 1903 独唱,pf
41a 歌曲集『シェエラザード』 1903 独唱,Orch 管弦楽伴奏編曲
42 メヌエット 嬰ハ短調 1904 pf
43 1904-05 pf
44 フーガ ハ長調 1905 pf
45 1905 T,混声cho,Orch
46 序奏とアレグロ 1905 hp,cl,fl,SQ
47 おもちゃのクリスマス 1906 独唱,pf
48 激しい風が海の彼方から 1906 独唱,pf
49 歌劇『沈鐘』 1906-12
スケッチのみ
50 歌曲集『博物誌』 1906 独唱,pf 全5曲
51 ハバネラ形式のヴォカリーズ 1907 独唱,pf
52 歌劇『スペインの時計 1907

53 草の上で 1907 独唱,pf
54 スペイン狂詩曲 1907 Orch 2台ピアノ版あり
55 夜のガスパール 1908 pf 全3曲
56 眠りの森の美女のパヴァーヌ 1908 Orch 『マ・メール・ロワ』より
57 バレエ音楽『ダフニスとクロエ 1909-12 Orch
57a 『ダフニスとクロエ』第1組曲 1911 Orch
57b 『ダフニスとクロエ』第2組曲 1912 Orch
57c ピアノ組曲『ダフニスの上品な踊り』 1913 pf
58 ハイドンの名によるメヌエット 1909 pf
59 泉の聖フランソワ 1909-10 独唱,cho,Orch 紛失
60 組曲『マ・メール・ロワ 1908-10 Orch 1911年管弦楽編曲
61 高雅で感傷的なワルツ 1911 pf
61b 高雅で感傷的なワルツ 1912 Orch
62 バレエ音楽『マ・メール・ロワ』 1911-12 Orch
63 …風に 1912-13 pf 第1曲ボロディン風に
第2曲シャブリエ風に
64 ステファヌ・マラルメの3つの詩 1913 独唱,室内楽
64b ステファヌ・マラルメの3つの詩 1913 独唱,pf
65 前奏曲 1913 pf
66 ザスビアク=バット-バスク風の主題による 1913-14 pf,Orch スケッチのみ
67 ピアノ三重奏曲 イ短調 1914 pf,vn,vc
68 組曲『クープランの墓 1914-17 pf
68a 組曲『クープランの墓』 1919 Orch 第1曲、第2曲、第4曲、第5曲の編曲
69 3つの歌 1914-15 cho
70 口絵 1918 5手2pf
71 歌劇『子供と魔法 1917-25

72 ラ・ヴァルス 1919-20 Orch 副題は『管弦楽のための舞踏詩』
72b ラ・ヴァルス 1920 2pf
73 ヴァイオリンとチェロのためのソナタ 1920-22 vn,vc
74 フォーレの名による子守歌 1922 vn,pf
75 ロンサール、その魂に寄せて 1923-24 独唱,pf
75b ロンサール、その魂に寄せて 1935 独唱,Orch 編曲
76 ツィガーヌ 1924 vn,Orch(pf) 演奏会用狂詩曲
77 ヴァイオリンソナタ ト長調 1923-37 vn,pf
78 マダガスカル島民の歌 1925-26 S,fl,vc,pf
79 1927 独唱,pf
80 ファンファーレ 1927 Orch 合作バレエ『ジャンヌの扇』より
81 ボレロ 1928 Orch
81b ボレロ 1929 2pf
82 左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調 1929-30 pf,Orch
83 ピアノ協奏曲 ト長調 1929-31 pf,Orch
84 ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ 1932-33 独唱,Orch
84b ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ 1932-33 独唱,pf
85 オラトリオ『モルジャーヌ』 1932
スケッチのみ

飲み薬で水虫を治す:イトリゾールのパルス療法

飲み薬で水虫を治療できるようになって、何年たつのだろう。自分では処方しないので、実感がなかなか得られないのだが、最近イトリゾールのパルス療法という方法があるのを知ったので備忘しておこう。

  • 爪白癬(パルス療法):通常、成人は1回4カプセル(主成分として200mg)を1日2回食直後に1週間服用し、その後3週間休薬します。これを1サイクルとし3サイクル繰り返します
3ヶ月の治療であり、実質一月に一週間しか飲まなくて良いわけだ。ハルシオンを始めとして相性の悪い薬がいくつかあることを注意すれば使いやすいのだろうね?昔は肝機能を注意しなくてはいけなかったし、投薬期間もずっと長かったように記憶しているが・・・まあ一日8カプセルは数量的にちと辛いね。ちなみに1カプセルあたり463.1円であるから、一日3701円、ひと月(一週間)で26000円であり、こんなものだろう。3割負担で7800円。これで水虫が退治できるなら御の字ではないかい?

The Nature Top Ten アクセスランキング

The Nature Top Ten アクセスランキング
2010年10月09日~2010年11月06日

  • Nature 467 (October 2010)

    子どものときの肥満と糖尿病は、親のどちらかがその症状をもつことと密接な関係があるが、父親がどのようにかかわってくるのか、その仕組みは明らかになっ ていない。ラットでの研究で、正常な雌と、高脂肪食を与えられて肥満およびグルコース不耐性になった雄との交配から産まれた雌仔は、インスリン分泌と膵臓 機能の障害によるグルコース不耐性を示すことがわかった。これは動物種で初めて、父親の食餌習慣が仔での糖尿病発症につながることがあるのを明らかにした 報告である。この研究は、環境によって誘導された父親の因子が、仔の代謝性疾患や肥満と糖尿病の増加に果たす、今まで知られていなかった役割をはっきり示 している。


  • Nature 467 (October 2010)

    単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)が細胞に侵入するには、エンベロープの糖タンパク質BとD両方に対する受容体が細胞に存在する必要がある。プロテ オミクスの手法を使って、HSV-1と相互作用する分子をさらに探索することにより、糖タンパク質Dと一緒に作用してウイルスを侵入させる機能をもつタン パク質として、非筋細胞ミオシン重鎖IIA(NMHC-IIA)が同定された。培養細胞とマウスモデルでNMHC-IIAをノックダウンするとHSV-1 感染が抑えられることから、NMHC-IIAや非筋細胞ミオシンIIA調節因子を標的とする薬剤やワクチンが、ヘルペスウイルス感染に対して効果を示す可 能性が考えられる。



  • Nature 467 (October 2010)

    1000ゲノムプロジェクトのパイロットデータの公表 今週号では、ヒトの遺伝的多様性についての公共の大規模カタログ作製をめざしている国際共同研究、1000ゲノムプロジェクトの最初の成果が報告されてい る。実際には、このプロジェクトで、世界の20集団の匿名のおよそ2,000人について塩基配列解読が行われることになっている。今回の最初の論文では、 ハイスループット基盤技術を用いる全ゲノム塩基配列解読のための3つの戦略が検討されており、このプロジェクトの予備段階の成果が示されている。ここで報 告されているのは、3つの集団の179人についての低カバー率の全ゲノム塩基配列、母・父・子という3人組の2セットについての高カバー率の塩基配列、お よび7つの集団からの697人についてのエキソンを標的とした塩基配列である(Article p.1061, N&V p.1050)。 ['1050']

  • Nature 467 (October 2010)

    脳は、外界から入るたくさんの感覚刺激のうち少数の刺激に集中して情報処理するために、刺激を常時選別しなければならない。内側側頭葉(MTL)のニュー ロンは、特定の視覚対象に選択的に応答し、その活動は認知機能によって調節されることが知られている。今回Cerfたちは、新しい脳–マシンインター フェースを構築した。これを用いて、神経外科処置を受けた被験者に2つの像が重なったコンピューター画像を見せ、一方の像をフェードインもしくはフェード アウトするよう求めたところ、被験者はすぐに、異なる大脳半球や小領域にあるMTLニューロンの活動を調節することを学習し、特定のニューロンの発火率を 上げると同時にほかのニューロンの発火率を下げて、合成画像の内容を制御できるようになった。この研究結果は、ヒトが自分の脳の内部にある視覚ニューロン の活動を調節できること、またそうした活動を解読してデバイスを制御できることの直接的な証拠となる。このようなインターフェースデバイスによって、例え ば閉じ込め症候群や運動ニューロン疾患など、さまざまな神経障害を抱える患者のコミュニケーションを補助することが、将来可能になると期待される。

  • Nature 467 (October 2010)

    消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の筋組織中に存在して電気的な律動的運動を生じるカハール介在細胞から発生する。今回Chiたちは、転写因子 ETV1がこれらの細胞の発生に必要であり、また腫瘍の発生も促進させることを示している。GISTで変異によって活性化されていることの多いKIT遺 伝子は、ETV1の安定化促進などにより、ETV1と協同してカハール介在細胞を形質転換させる。ETV1はすべてのGISTに多量に存在していて診断用 のバイオマーカー候補になると思われ、またETV1遮断薬は薬剤耐性をもつGISTに対して効力を発揮するかもしれない。

  • Nature 467 (October 2010)

    C Iacobuzio-Donahueたちは、全ゲノムにわたるエキソーム塩基配列解読により、同じ患者の原発性膵がんと複数の転移巣の解析を行った。腫瘍 は別々のサブクローンからなることがわかり、それぞれの転移性がんクローンが原発性腫瘍の中で進化してきた道筋が明らかにされ、腫瘍の進行の時間スケール が推定された。これらのデータに基づいて、膵臓での腫瘍発生から親となる非転移性腫瘍の形成までの平均期間は11.8年、指標となる転移性クローンが発生 するにはさらに6.8年かかると著者たちは推定している。このデータは、がんを比較的早期の形で検出できる可能性のある期間がかなり長いことを示してい る。一方、P Campbellたちは次世代シーケンシング技術を使って、膵臓がんの患者13人で染色体再編成を検出した。この結果は、患者間でゲノムにかなりの不均質 性があることを明らかにしており、ゲノム不安定化が現在進行中で、転移形成過程で進化が起こることを示している。しかし、調べたほとんどの患者で、見つ かった遺伝子再編成の半分以上はすべての転移性と原発性腫瘍に存在しており、これらが膵臓がんの初期および進行期での治療介入の標的候補となることが示さ れた。


  • Nature 467 (October 2010)

    真核細胞は、分裂する際に遺伝物質を2つの娘細胞に正しく分配する必要がある。この過程には、動原体とよばれる染色体上の特定領域と紡錘体微小管との相互 作用がかかわっている。Alushinたちは、動原体の必須タンパク質成分であるNdc80複合体と微小管との相互作用を、低温電子顕微鏡を使って再構築 した。得られた構造では、Ndc80複合体が自己オリゴマー形成して直線的に並び、これが微小管を袖状に覆うことが明らかになった。この並び方によって、 微小管特有の動的変化を介して染色体を動かせる。このNdc80複合体と微小管の相互作用の特性から、動原体と微小管の結合をオーロラBキナーゼがリン酸 化によって調節する仕組みが示唆される。


  • Nature 467 (October 2010)

    世界人口の半数以上は都市に住んでいる。人々のこのような密集状態は、公害や貧困、病気、犯罪など、世界が抱える重大な問題の温床となっている。しかし時 として、人類は都市で最良の状態となることもある。そして今週号の一連の特集記事や論評で述べられているように、科学は都市に重要であり、都市もまた科学 に重要である。都市には世界トップクラスの大学の大半が存在し(p.900)、科学は主要な都市問題のいくつかを解決するのに役立っている (p.902)。また、都市が今後、持続可能な形で成長していこうとするなら、多くの分野の科学者たちの多大な貢献が不可欠となるだろう(p.912)。 この特集の全容についてはp.899をご覧いただきたい。

  • Nature 467 (October 2010)

    オーストロネシア社会で使われている言語に基づく系統発生学的分析を用いて、複雑な社会の発達と衰退に関する相いれないモデルの検証が行われた。今 回の知見は、複雑性の拡大が逐次的に起こる傾向があるのに対し、衰退には急激なものがありうることを示唆している。表紙は、キャプテン・クックの2回目の 航海に同行した画家William Hodgesによる「オパルに集結したオタヘイティ(タヒチ)の艦隊」である(Article p.801,

2010年11月4日木曜日

An otherwise healthy 40-year-old

NEJMの新着を眺めていたら面白い英語表現に気がついた。いつも楽しみにしているmedical imageなのだが、今週はややマニアック(私には・・)なpseudoathetosisという病態で、興味は湧かないが、症例報告の最初の一文に目を奪われた。

      An otherwise healthy 40-year-old man presented with a 3-week history of paresthesia and inability to control his hands.

このotherwise がいたく気に入ってしまったわけだ。
この文章「Xさえなければねえ、至って健康な人なんだが・・・」というような雰囲気がある。まあ普通に言えば「3週間続くパレステジアと両手がうまく動かせなくなったこと以外は全く健常な40歳男性・・・」と訳されるだろう。

くだけ過ぎの表現かしらん。このあたりのニュアンスがわからない。「An otherwise healthy」でググると一億件以上ヒットするので、よく使われる表現だと言うことはわかる。日本語としてはヒットしないので、これ日本人にはピットフォールの表現かもしれない。英語関係者のご意見を伺いたいものだ。

でも便利な表現だ。気に入ったぞ。もともとotherwise は昔から好きな単語だったけどねえ。

2010年11月3日水曜日

高率に変異を起こす遺伝子ARID1A:NEJM続報

先日卵巣の明細胞癌で高率に変異を起こす遺伝子ARID1Aについてサイエンスの報告をnoteしたが、NEJMにも同様の報告が載っていた。こちらも55/119 (46%) であり、この遺伝子は知られている癌関連遺伝子の中でも極めて高率に再現性良く(といっても2報)変異を起こす遺伝子ということになるかもしれないね。追加であるがendometorioid carcinoma(卵巣)でも10/33 (30%)と高率に変異を起こしている。

ARID1A Mutations in Endometriosis-Associated Ovarian Carcinomas

Kimberly C. Wiegand, B.Sc., Sohrab P. Shah, Ph.D., Osama M. Al-Agha, M.D., Yongjun Zhao, D.V.M., Kane Tse, B.Sc., Thomas Zeng, M.Sc., Janine Senz, B.Sc., Melissa K. McConechy, B.Sc., Michael S. Anglesio, Ph.D., Steve E. Kalloger, B.Sc., Winnie Yang, B.Sc., Alireza Heravi-Moussavi, Ph.D., Ryan Giuliany, B.Sc., Christine Chow, B.M.L.Sc., John Fee, B.Sc., Abdalnasser Zayed, B.Sc., Leah Prentice, Ph.D., Nataliya Melnyk, B.Sc., Gulisa Turashvili, M.D., Ph.D., Allen D. Delaney, Ph.D., Jason Madore, M.Sc., Stephen Yip, M.D., Ph.D., Andrew W. McPherson, B.A.Sc., Gavin Ha, B.Sc., Lynda Bell, R.T., Sian Fereday, B.Sc., Angela Tam, B.Sc., Laura Galletta, B.Sc., Patricia N. Tonin, Ph.D., Diane Provencher, M.D., Dianne Miller, M.D., Steven J.M. Jones, Ph.D., Richard A. Moore, Ph.D., Gregg B. Morin, Ph.D., Arusha Oloumi, Ph.D., Niki Boyd, Ph.D., Samuel A. Aparicio, B.M., B.Ch., Ph.D., Ie-Ming Shih, M.D., Ph.D., Anne-Marie Mes-Masson, Ph.D., David D. Bowtell, Ph.D., Martin Hirst, Ph.D., Blake Gilks, M.D., Marco A. Marra, Ph.D., and David G. Huntsman, M.D.

N Engl J Med 2010; 363:1532-1543October 14, 201

Background

Ovarian clear-cell and endometrioid carcinomas may arise from endometriosis, but the molecular events involved in this transformation have not been described.

Methods

We sequenced the whole transcriptomes of 18 ovarian clear-cell carcinomas and 1 ovarian clear-cell carcinoma cell line and found somatic mutations in ARID1A (the AT-rich interactive domain 1A [SWI-like] gene) in 6 of the samples. ARID1A encodes BAF250a, a key component of the SWI–SNF chromatin remodeling complex. We sequenced ARID1A in an additional 210 ovarian carcinomas and a second ovarian clear-cell carcinoma cell line and measured BAF250a expression by means of immunohistochemical analysis in an additional 455 ovarian carcinomas.

Results

ARID1A mutations were seen in 55 of 119 ovarian clear-cell carcinomas (46%), 10 of 33 endometrioid carcinomas (30%), and none of the 76 high-grade serous ovarian carcinomas. Seventeen carcinomas had two somatic mutations each. Loss of the BAF250a protein correlated strongly with the ovarian clear-cell carcinoma and endometrioid carcinoma subtypes and the presence of ARID1A mutations. In two patients, ARID1A mutations and loss of BAF250a expression were evident in the tumor and contiguous atypical endometriosis but not in distant endometriotic lesions.

Conclusions

These data implicate ARID1A as a tumor-suppressor gene frequently disrupted in ovarian clear-cell and endometrioid carcinomas. Since ARID1A mutation and loss of BAF250a can be seen in the preneoplastic lesions, we speculate that this is an early event in the transformation of endometriosis into cancer. (Funded by the British Columbia Cancer Foundation and the Vancouver General Hospital–University of British Columbia Hospital Foundation.)

2010年11月2日火曜日

17年:膵癌の17年と大腸癌の17年

ジョーンズらの大腸癌の時系列研究でも、今回の膵臓癌の研究でも最初の突然変異から最終段階までにかかる時間は17年ということであった。これ臨床家には納得のいく数字であろうか?

一般には膵癌と大腸癌では受ける印象が大違いである。膵癌は小さな腫瘍を見つけても、全く安心できない。逆に大腸癌の小さなものの場合、ほとんど良性の扱いに近いのが現状だ。物理的な大きさが同じくらいであったとしても膵癌と大腸癌では甚だしく扱いが異なるのだ。

この17年にはどんな意味があるのだろう?膵癌はもっと短期間で激しく育ってくるものと思っていたので、小生ややとまどう。
両者の17年にはどんな違いがあるのだろう??

膵癌の転移巣のゲノム解析:Vogelsteinらのnature

Vogelsteinらのグループはここ数年、大腸癌や膵臓癌のシークエンスを詳細に行い

(1)一個体あたりの平均的な突然変異数(70内外)
(2)原発巣と転移巣についての遺伝子変異の違いについての考察(原則変わらん)
(3)driver遺伝子とpassenger遺伝子の違い(driverが大事)
(4)シグナル・パスウェイ遺伝子大事(どれかがやられれば癌になる)
(5)癌の時系列(大腸癌では17年~~)
などという成果を出してきた。

今回nature誌に同様の研究で「膵臓癌」の成果を報告している。


Nature 467, 1114-1117 (28 October 2010) | Received 11 May 2010; Accepted 15 September 2010; Published online 27 October 2010

Distant metastasis occurs late during the genetic evolution of pancreatic cancer

Shinichi Yachida1,7, Siân Jones2,7, Ivana Bozic3, Tibor Antal3,4, Rebecca Leary2, Baojin Fu1, Mihoko Kamiyama1, Ralph H. Hruban1,5, James R. Eshleman1, Martin A. Nowak3, Victor E. Velculescu2, Kenneth W. Kinzler2, Bert Vogelstein2 & Christine A. Iacobuzio-Donahue1,5,6

  1. Department of Pathology, The Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center, Johns Hopkins Medical Institutions, Baltimore, Maryland 21231, USA
  2. The Ludwig Center for Cancer Genetics and Therapeutics and The Howard Hughes Medical Institute at The Johns Hopkins Kimmel Cancer Center, Baltimore, Maryland 21231, USA
  3. Program for Evolutionary Dynamics, Department of Mathematics, Department of Organismic and Evolutionary Biology, Harvard University, Cambridge, Massachusetts 02138, USA
  4. School of Mathematics, University of Edinburgh, Edinburgh EH9 3JZ, UK
  5. Department of Oncology, The Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center, Johns Hopkins Medical Institutions, Baltimore, Maryland 21231, USA
  6. Department of Surgery, The Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center, Johns Hopkins Medical Institutions, Baltimore, Maryland 21231, USA
  7. These authors contributed equally to this work.

Metastasis, the dissemination and growth of neoplastic cells in an organ distinct from that in which they originated1, 2, is the most common cause of death in cancer patients. This is particularly true for pancreatic cancers, where most patients are diagnosed with metastatic disease and few show a sustained response to chemotherapy or radiation therapy3. Whether the dismal prognosis of patients with pancreatic cancer compared to patients with other types of cancer is a result of late diagnosis or early dissemination of disease to distant organs is not known. Here we rely on data generated by sequencing the genomes of seven pancreatic cancer metastases to evaluate the clonal relationships among primary and metastatic cancers. We find that clonal populations that give rise to distant metastases are represented within the primary carcinoma, but these clones are genetically evolved from the original parental, non-metastatic clone. Thus, genetic heterogeneity of metastases reflects that within the primary carcinoma. A quantitative analysis of the timing of the genetic evolution of pancreatic cancer was performed, indicating at least a decade between the occurrence of the initiating mutation and the birth of the parental, non-metastatic founder cell. At least five more years are required for the acquisition of metastatic ability and patients die an average of two years thereafter. These data provide novel insights into the genetic features underlying pancreatic cancer progression and define a broad time window of opportunity for early detection to prevent deaths from metastatic disease.

要旨概略は以下である

7例の転移性膵癌患者の原発巣と転移巣腫瘍をゲノムシークエンスし、そのクローナリティの違いをシークエンスレベルで解明したい。


まず転移巣を特徴づけるクローンは、すでに原発巣のサブクローンとして存在しており、転移巣それぞれのクローンといえども原発巣の元々のクローンから分化したクローンであることがわかった。すなわち転移巣の多型性―ヘテロなクローン集団としての転移巣―はすべて原発巣の中にすでに存在していたということ。膵臓癌の時系列解析によると最初の突然変異からオリジナルの原発巣が生じるまでに10年。転移クローンが生じるまでにそれから5年。その後平均すると2年で患者は亡くなる。

研究内容:7人の解剖例で転移巣と原発巣を採取し細胞株を作成した。この研究は2年前のジョーンズの研究の延長である。ジョーンズの研究では24例の膵臓癌を用いたが、この7人はその中に含まれる。以前の研究では388遺伝子内に426突然変異が見出された。原発巣当たり(一人あたり)61個の突然変異。

詳しいことはオリジナルを詳細に読むべきだが、概略のストーリーはこうだ。

まず膵癌では原発固有クローンの塊(みたいなもの)がありここに蓄積されている遺伝子変異をfounder変異と呼ぶ。この変異はその膵癌全体で見つかる変異遺伝子全変異の64%程度を占める。その塊の周りに小さなクローンがいくつもあり、それぞれの小クローンはfounder変異+αの変異(この付加変異をprogressor変異と呼ぶ)を更に獲得している。ある患者を例に詳細を述べよう。患者Pa8ではparentクローンが確立されたのち最初にできるサブクローンは腹膜播種を起こすクローンであった。parentクローンに新たに3個の変異を獲得したサブクローンが原発巣と播種層に見出されたわけだ。すなわち播種巣とidenticalなクローンが原発巣にもあるのだ。これ以上に複雑な6種類以上の付加クローン(それぞれ+αの数が異なる)が同定されており、最も多いクローンでは30個程度の変異が付加されている。この最大変異を持つクローンは肺転移巣と遺伝学的に同一のクローンであるが、このクローンすらも原発巣ではparental cloneのそばにいらしゃるのである。

遠隔転移巣に見られるクローンも原発巣で育ったもの・・・というのが当論文のミソである。

基本的に「癌は臨床的に見つかる時点でその遺伝子変異はほぼ完成されている」というのがVogelsteinらのグループの近年の主張であり、厳密な研究成果である。

研究の源流は ↓ にある。

1)
2007年11月29日木曜日
Laura D.Woodの大腸癌遺伝子解析

The Genomic Landscapes of Human Breast and Colorectal Cancers

Science
16 November 2007:Vol. 318. no. 5853, pp. 1108 - 1113

2)
 2008年4月26日土曜日
大腸癌肝転移全ゲノムシークエンス:Vogelstein

Comparative lesion sequencing provides insights into tumor evolution

Siân Jones, Wei-dong Chen, Giovanni Parmigiani, Frank Diehl, Niko Beerenwinkel, Tibor Antal, Arne Traulsen, Martin A. Nowak, Christopher Siegel, Victor E. Velculescu, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein, Joseph Willis, and Sanford D. Markowitz
PNAS | March 18, 2008 | vol. 105 | no. 11 | 4283-4288

2010年11月1日月曜日

イルミナのシークエンサーのアジア頒布数



東アジアの諸国にシークエンサーが何台あるのかなどという週刊誌的地図が今週号のnatureには出ている。 北京ゲノムセンター(実は香港あるいは深圳にゲノムセンターはある)にあの有名なイルミナ高速シークエンサーが数多くあることは知っていたが、なんだか情けないぞ、ニッポン。これイルミナ社の正確な販売台数に基づく正確なデータなんだろうな・・・ 我がニッポンは韓国よりも少ない。台湾とほぼ同じ。こんなに少ないとは知らなかった。

大腿骨骨折を整理する

大腿骨骨折には2種類あると考えよう。折れる場所である。旧来の分類とされる内側・外側という分類があり、これが頚部と転子部(転子下)に対応するようであるが、現状使われる用語としては頚部と転子部(転子下)骨折が主流。

頚部とそれ以外の分け方というのは、治療法(手術法)の違いと関連することになる。

  1. 頚部骨折の大多数の患者は骨頭置換術を受けることになるとみて良いであろう。余程転移のない安定した状態で病院に来た場合のみスクリューピンを打ち込まれることになる。(キャンセラススクリュー、ハンソンピン)逆に骨頭置換より大きな手術としてTHA total hip arthroplasty (人工股関節置換術)
  2. 転子部あるいは転子下の場合(骨頭が生き残る可能性が大きい)CHS (compression hip screw) と呼ばれるスクリューガンマーネイルが使われる。




図の引用は八王子整形
http://www.hachiouji-seikei.com/search/detail.php?order=eny1&recid=237






































そこで大胆にして時代に逆行するような提案あるいは疑問であるが・・・・・


本当に手術しなくては治らないのだろうか?大腿骨頸部骨折

昔はよく牽引していたものだよね。

「私はなるだけ人工物をいれる治療をしないようにしたい」と宣言し・・・・・・・

時間がかかることを患者に覚悟させ、骨壊死・偽関節化を怖れながらも、更に筋の萎縮と運動能力の低下を危惧しながらも、保存的に治療することを基本治療方針とする整形外科医はいないのだろうか?  

循環器内科のペースメーカー。外科医の消化管自動吻合器等々。整形外科医の人工関節等々。いずれも異常に高価なのだ。悪くはないんだが、すべて米国が儲かるようになっている。これでは在院日数をいくら短縮しても追いつかない。