2012年3月29日木曜日

乾癬治療の変遷:抗TNFα、抗IL12/23p40に加え 抗IL17

乾癬は外来の患者さんの中にも何人かいる。広範囲の方が多く治療も大変だと思う。小生は乾癬に直接関知するわけではないのだけど、最近は治療も随分変わってきたのだということを本日知った。TNFαIL12/23p40といった分子に対する抗体が開発され臨床応用されはじめているのだIL12/23p40なんてね。ちょっと驚くではないか。




























  1. ヒュミラ皮下注40mg シリンジ 0.8ml (抗TNFα
    アダリムマブ(遺伝子組換え)キット
    40mg i.d. 薬価 71097円(月2回)→ 14万円/月

  2. レミケード点滴静注用100   (抗TNFα
    インフリキシマブ(遺伝子組換え)静注用
    薬価 100285円
    60kg 300mg d.i.v 30万円/一回 当初月2回(程度)そののち2ヶ月に一回→ 15万円/月

  3. ステラーラ皮下注45mgシリンジ  (抗IL12/23p40
    ウステキヌマブ(遺伝子組換え)キット
    薬価 426552円
    45mg i.d. 使用当初一ヶ月後、そののち3ヶ月に一回→ 14万円/月

これら3剤は乾癬に対する生物学的製剤のなかで国内で承認されたものである。承認は2010/1 〜2011/1、ごく最近である。

そしてこれらに加わるものとしてIL17への抗体、IL17Rへの抗体を使った乾癬治療のスタディが2報最新のNEJMに載っている。専門ではないので、どれくらい効果があるのかちょっと評価しずらいが、一つの病気に対する治療としてはたいした勢いで進歩していることが伺われる。

Brodalumab, an Anti–Interleukin-17–Receptor Antibody for Psoriasis

Kim A. Papp, M.D., Ph.D., Craig Leonardi, M.D., Alan Menter, M.D., Jean-Paul Ortonne, M.D., James G. Krueger, M.D., Gregory Kricorian, M.D., Girish Aras, Ph.D., Juan Li, Ph.D., Chris B. Russell, Ph.D., Elizabeth H.Z. Thompson, Ph.D., and Scott Baumgartner, M.D.

N Engl J Med 2012; 366:1181-1189March 29, 2012

Anti–Interleukin-17 Monoclonal Antibody Ixekizumab in Chronic Plaque Psoriasis

Craig Leonardi, M.D., Robert Matheson, M.D., Claus Zachariae, M.D., D.M.Sci., Gregory Cameron, Ph.D., Linda Li, M.S., Emily Edson-Heredia, M.P.H., Daniel Braun, M.D., Ph.D., and Subhashis Banerjee, M.D.

N Engl J Med 2012; 366:1190-1199March 29, 2012


これらは分子生物学が確かに臨床に応用されている実例であり、分子生物学の基礎研究は役に立つのだという例証であり、今後もますます研究と薬物開発が重要であることをサポートする報告である。


朝方のNHKで奇しくも中村祐輔教授が東京大学を退職し、シカゴ大学へ移動されることが報道されていた。教授室をかたずける中村教授が寂しそうであった。このシカゴ行きについては、いわゆるトランスレーショナルリサーチがうまくワークしないことが中村さんのフラストレーションだったと国内では報道されている。シカゴの新聞(Chicago Tribune)やシカゴ大学のHPを読んでみたが、教授転勤の説明としては「震災、原発事故により日本政府としてはトランスレーショナルリサーチどころではないのだ」という説明が更に加わっている。

これまでは薬はなかなか出てこなかった。しかし今後は本当にたくさん出てくることだろう。中外製薬のように頑張っている会社もあるのだ。日本の大学も頑張れといいたい。がんセンターにも頑張ってほしい(ほしいが、どうなんだろう、実際)

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