紫色採尿バッグ症候群
さきほど大腿骨頸部骨折入院患者の回診をしていたら、看護師が「先生この色、どうしたんでしょう?」といって採尿バッグを掲げた。一面紫色になったチューブとバッグであった。不詳ながら小生、初の遭遇である。3週間前の検尿でひどい細菌尿があり、創部が不潔になることもあり導尿していたわけだが、この頃は尿もきれいになり導尿チューブを抜こうかどうかといったところだった。検尿すると、すでに細菌はいない。問題のない尿であった(紫色していない)。早速チューブを抜去して私が担いで外来まで降りて泌尿器のブースに飛び込んだ。「先生これなんでしょうか?」「あっこれね。これ『むらさきいろさいにょうふくろ症候群』というんですよ。これ、細菌感染でくるんですよ。いま尿がきれいになら、病的意味はないので、尿に関してはこれまでですね」といわれた。『むらさきいろさいにょうふくろ症候群』
ネットにはいろいろ出ている。
救急科専門医の独り言
というブログには参考になることが書かれていたので引用させて頂く。
- これは紫色採尿バッグ症候群と呼ばれておます。英語ではPurple Urine Bag Syndromeです。 これは便秘の人に多く、採尿バッグが紫色に染まるのに尿が正常であるのが特徴です。高齢の寝たきり女性に多く認められます。1978年にBarlowらが初めて報告しています。病態生理は以下の通りです。
- 便秘などにより大腸内でトリプトファンがインドールに分解される。インドールが肝臓で硫酸抱合されてインジカンとなり、尿中に大量に排泄される。ある種の細菌がインジカンをインジゴ(酸素濃度が高い場合)、あるいはインジルビン(酸素濃度が低い場合)に分解する。インジゴはバッグの表面に付着、インジルビンはバッグに溶け込む事で紫色を呈する。
そこで思いを馳せたわけだ・・・。これ小生が今ベッドサイドで初めて気が付いて、他の誰も気が付いていなくて報告もなかったとしよう。この原因を研究したいと考える。どのような戦略を練るだろうか?学生に課題として出したら最高の勉強になりそうだ。臨床研究のよい課題ではないか!
答えは一応上にあるとおりだ。便秘が遠因になって、インドールが増え、インジゴ色素が出来るという一連の流れだ。これを知らずに研究計画を立てるのだ。なぜ紫色ができるのか?そもそも紫色を呈する物質はなんなのか?何が原因なのか?
非常に素晴らしい課題だと思った。
これを持ってきた看護師には簡単に説明したが、お前さんの義務として院内で症例報告しなさいと申しつけた。これは良い勉強をしたものだ、ふふふ。
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