2010年7月24日土曜日

ベーチェット病 関連遺伝子(多型)IL23R-IL12RB2

ベーチェット病:しばらく忘れていた病気だ。Nature Geneticsに多型解析がのったが、一つは日本チーム(猪子さん)今ひとつはトルコのチームであり、なんかほっとするのは私だけか?

  • あっ、これはもちろんベーチェットがトルコ人であるからなのである。小生は愛国者ではないが、病気が多い国は責任を持ってその病気の病因解明に尽くすべきだろうということなのである。

  • 以前触れたように、「菊池病」「川崎病」のメタゲノム解析をだれかやって、日本人が病因解明に名乗りをあげて欲しい。これはもちろん、「橋本病」「高安病」などにも当てはまる。橋本はGWAを随分されたようだが、今ひとつの観があります。違った観点から挑んでほしい。
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さて難病情報センターのHPによると

  • 未だに病因は不明であるが病態形成の機序が明らかになりつつある。ベーチェット病ではHLA-B51の陽性率が高く、発病にHLAーB51そのもの、あるいはこれに連鎖する素因の役割が重視されている。実際、日本人のHLA-B51保有者でも、ベーチェット病に罹患する相対危険率は7.9ときわめて高い。 HLAーB51以外にも、HLA-A26ほかMICAなどいくつかの遺伝子多型と疾患の関連が報告されている。こうした遺伝素因に病原微生物をはじめとし た外因が関わり、自己免疫異常や好中球機能過剰をはじめとした自然免疫系の異常を引き起こし、発症にいたると考えられている。特に、これまで注目されてき たのは細菌微生物、中でも口腔内に存在する Streptococcus sanguinisの役割が研究されてきた。その研究の過程で、細菌由来の65kd熱ショック蛋白(heat shock protein;HSP)と交差反応性を示す宿主由来HSPが自己抗原となり、自己免疫応答を惹起し、抗原特異的Th1型リンパ球の働きにより炎症病態が 発生するという仮説が示された。さらに最近、痛風や家族性地中海熱に代表される自己炎症性疾患との臨床的類似性から、病原微生物などがリンパ球の関与なし に直接的に好中球やマクロファージなどの自然免疫系を刺激する自己炎症のメカニズムがベーチェット病の病態形成により重要ではないかとする考えも提唱され ている。また自己免疫的な側面についても新しいサブセットであるTh17型細胞の役割などが検討されている。
ここで示される相対危険率7.9というのは「悪魔のように立ちはだかる組織適合抗原の壁」と呼ばれてきた、いわゆるHLAによる疾病罹患率を示す。GWA で精力的に全ゲノムを検索して得られる危険率は高々1.6前後である。この小さなブログでこれまで記録してきた多型報告でも、ことごとく1.5~1.7あたりが多かった。下のベーチェットの新しい報告でもodds ratio = 1.45である。なかなか越えられないHLAの壁。1970〜80年代には大流行だったHLAだが、その本質はまだまだ豊穣のような、未知の要素があるような気がしてならぬ。

Genome-wide association studies identify IL23R-IL12RB2 and IL10 as Behçet's disease susceptibility loci
Nobuhisa Mizuki,Akira Meguro,Masao Ota,Shigeaki Ohno,Tomoko Shiota,Tatsukata Kawagoe,Norihiko Ito,Jiro Kera,Eiichi Okada,Keisuke Yatsu,Yeong-Wook Song,Eun-Bong Lee,Nobuyoshi Kitaichi,Kenichi Namba,Yukihiro Horie,Mitsuhiro Takeno,Sunao Sugita,Manabu Mochizuki,Seiamak Bahram,Yoshiaki Ishigatsubo& Hidetoshi Inoko

Nature Genetics(2010), Received 06 April 2010, Accepted 17 June 2010, Published online11 July 2010

Article
Behçet's disease is a chronic systemic inflammatory disorder characterized by four major manifestations: recurrent ocular symptoms, oral and genital ulcers and skin lesions1. We conducted a genome-wide association study in a Japanese cohort including 612 individuals with Behçet's disease and 740 unaffected individuals (controls). We identified two suggestive associations on chromosomes 1p31.3 (IL23R-IL12RB2, rs12119179, P = 2.7 × 10−8) and 1q32.1 (IL10, rs1554286, P = 8.0 × 10−8). A meta-analysis of these two loci with results from additional Turkish and Korean cohorts showed genome-wide significant associations (rs1495965 in IL23R-IL12RB2, P = 1.9 × 10−11, odds ratio = 1.35; rs1800871 in IL10, P = 1.0 × 10−14, odds ratio = 1.45).

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