2010年7月31日土曜日

青いおむつ症候群

紫色採尿バッグ、紫色・・・・・と今朝から頭にひっかかかるのは何か・・・先ほど思い出したぜよ。学生の頃小児科で『青いおむつ症候群』というのを習ったことを思い出したぜい。で看護師に『青いおむつ症候群』というのもあるのだよといったら、「へ〜〜」であった。

この二つの疾患に関係があるとなど思いもせず、ただ紫と青でおもろいなと思っただけだが、今ネットしたら共通項はトリプトファンであり、インドールでありおむつの青もインジゴであると書いてある。これ同じなんだ。
「へ〜〜〜」

必須アミノ酸であるトリプトファンが小腸で吸収されず、大腸の腸内細菌により分解され、インドール化合物となり吸収され、尿中にインジゴ青として排泄される。-----これが『青いおむつ症候群』なのだが、これは紫色採尿バッグ症候群と原理はほとんど同じである。



今日は奇妙な経験をしたような、どうでもいいことにこだわっているような、変わった一日だった。

紫色採尿バッグ症候群

紫色採尿バッグ症候群

さきほど大腿骨頸部骨折入院患者の回診をしていたら、看護師が「先生この色、どうしたんでしょう?」といって採尿バッグを掲げた。一面紫色になったチューブとバッグであった。不詳ながら小生、初の遭遇である。3週間前の検尿でひどい細菌尿があり、創部が不潔になることもあり導尿していたわけだが、この頃は尿もきれいになり導尿チューブを抜こうかどうかといったところだった。検尿すると、すでに細菌はいない。問題のない尿であった(紫色していない)。早速チューブを抜去して私が担いで外来まで降りて泌尿器のブースに飛び込んだ。「先生これなんでしょうか?」「あっこれね。これむらさきいろさいにょうふくろ症候群』というんですよ。これ、細菌感染でくるんですよ。いま尿がきれいになら、病的意味はないので、尿に関してはこれまでですね」といわれた。

むらさきいろさいにょうふくろ症候群』

  ネットにはいろいろ出ている。

救急科専門医の独り言

というブログには参考になることが書かれていたので引用させて頂く。

  • これは紫色採尿バッグ症候群と呼ばれておます。英語ではPurple Urine Bag Syndromeです。 これは便秘の人に多く、採尿バッグが紫色に染まるのに尿が正常であるのが特徴です。高齢の寝たきり女性に多く認められます。1978年にBarlowらが初めて報告しています。病態生理は以下の通りです。

  • 便秘などにより大腸内でトリプトファンがインドールに分解される。インドールが肝臓で硫酸抱合されてインジカンとなり、尿中に大量に排泄される。ある種の細菌がインジカンをインジゴ(酸素濃度が高い場合)、あるいはインジルビン(酸素濃度が低い場合)に分解する。インジゴはバッグの表面に付着、インジルビンはバッグに溶け込む事で紫色を呈する。























そこで思いを馳せたわけだ・・・。これ小生が今ベッドサイドで初めて気が付いて、他の誰も気が付いていなくて報告もなかったとしよう。この原因を研究したいと考える。どのような戦略を練るだろうか?学生に課題として出したら最高の勉強になりそうだ。
臨床研究のよい課題ではないか!

答えは一応上にあるとおりだ。便秘が遠因になって、インドールが増え、インジゴ色素が出来るという一連の流れだ。これを知らずに研究計画を立てるのだ。なぜ紫色ができるのか?そもそも紫色を呈する物質はなんなのか?何が原因なのか?

非常に素晴らしい課題だと思った。

これを持ってきた看護師には簡単に説明したが、お前さんの義務として院内で症例報告しなさいと申しつけた。これは良い勉強をしたものだ、ふふふ。

2010年7月30日金曜日

帯状疱疹後神経痛に効く薬剤:柴苓湯や五苓散は・・・

帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛に麻薬系の鎮痛剤は効きにくい印象があります。
非癌性疼痛に対するデュロテップの使用は無痛を求めると、食欲不振や全身倦怠感などの副作用が強く出て、継続できない症例を経験しました。

急性期の帯状疱疹の痛みに対してはNSAIDsは無効例が多いようです。
禁忌でなければ神経ブロックが有効です。
場所によりますが星状神経節ブロックや、硬膜外ブロックなど交感神経に作用するものがいいですね。

皮膚科の先生の意見では、早期のステロイド治療が帯状疱疹後神経痛の予防に有効だそうですが、感染症に使うのはためらいがありますね。

代わる方法として、ステロイド様作用のあるとされ、水毒の治療薬の柴苓湯や五苓散などがお勧めです。

2010年7月28日水曜日

ロジャー・バニスター:サブ4マイラー&神経内科医

GoogleでSir Roger Bannisterを検索してみよう。するとトップにはWikipediaがくる。次にSir Roger Bannister & publicationと入れてみる。するとアマゾンが上がってくるが、本のリストが微妙である。

  1. Clinical Neurology (Oxford Medicine Publications) Lord Walter Russell Brain Sir Roger Bannister (1978/8/17)
  2. Brain and Bannister's Clinical Neurology (Oxford Medical Publications) Roger Bannister (1992/3)
  3. Autonomic Failure: A Textbook of Clinical Disorders of the Autonomic Nervous System (Oxford Medical Publications) Christopher J. Mathias Roger Bannister (2002/12/5)

といった神経内科の専門書が並ぶなかに

  1. The First Four Minutes Sir Roger Bannister (2004/2/24)
  2. The Ultimate Athlete George Leonard (2000/9/30)

といった陸上本が混じってくるからだ。

バニスターは人生の前半ではオリンピックに出るほどの陸上の名選手であり、1952年には人類初のサブ4マイラーとなったことで有名になった。サブ4マイラーというのはややこしい表現だが、1マイル走るのに初めて4分を切ったアスリートという意味である。このころ彼はロンドンの医学生であった。

陸上にはマイルストーンになる数字がいくつかあって、100mでは10秒、マラソンでは男子では2時間10分(クレイトン)、女子では2時間20分(高橋尚子)等々キレのイイ数字が好まれる。日本ではマイル表示に馴染みがないのでマイルレースは有名ではないがそれでも唐津10マイル等々は歴史と伝統のレースだ。1マイルは1609mであるからほぼ1500mに相当する。トラックだと400m を4周とちょいである。まあ中距離レースの典型であり元来中距離が好まれるヨーロッパでは人気の種目だ。簡単に言えば一周400mを一分以内で4回走り抜く感じである。バニスターは一躍有名になり、この功績でサーの称号を得た。その後医学の分野に進んだバニスターはこちらでも大変な活躍ぶりで、神経内科の先生方には学問での活躍の方が身近で有名かもしれない。1929年生まれであるから今81歳である。


陸上競技で名前を残し、医学の専門書を残すのだから素晴らしい人生だと思うな。尊敬する。

なぜバニスターを思い出したかというと、今朝のNHKのロンドンオリンピック特集にこれまた懐かしいヒトが出ていたからだ。セバスチャン・コーである。今オリンピック組織委員会会長なんですと。スティーブ・オベットスティーブ・クラムとともに中距離界では素晴らしい活躍をしたよ、80年代。白人がこの種目で優勢だった最後の世代さ。

2010年7月26日月曜日

インセプションを観た

午後が有休であり、たまには真面目に有休を取らないといかんでしょう・・・ということで映画を見に行った。またまた出かけるまでなんの映画をやっているかよくわからない状態であった。「踊る捜査線」でも観ましょうか、と思っていたが丁度3時過ぎから「Inception」をやっていたので、これ観ました。  感想はだね、ムムムというところ。

ボクはこれまで映画を観て寝てしまったことなど余りないのだが、本日のこの映画では3回くらい意識を失ってしまった。これまで小生が寝た映画は良く覚えている。例えば19歳ころみたベルイマンの「処女の泉」は全く理解できずに寝てしまった。この他「第7の封印」も寝たな。なんだお前ベルイマンばかりではないか・・・しょせん君にはベルイマンは無理なのよ・・・と言われるかもしれない。でもね、これだけベルイマンを見に行ったということはだね、感動した映画も多くてたとえば「夜の儀式」には打ち震えたし、「沈黙」にも感動した。だからベルイマンは好きな監督といっていい。ベルイマンで得た教訓。わからんと思えば、堂々と「理解できません」と表明しなくてはいけないということだ。

だから久しぶりに表明しよう。小生はこの「インセプション」がわかりませんでした。すーっとするな宣言すると。

ターゲットの深層心理・潜在意識・夢の第三層に密かに予見をしのばせて欲しい。そのために皆でまず第一層におり、次に第二層におり、それぞれでありがちなストーリーをでっちあげ、第三層の「嘘」をそれらしくして頂戴というのが全体のストーリーですな。表層的には「このわかりやすいストーリーがガラス細工のようにかみ合い最後にワークする」ということでつじつまを合わせている。ただ、ここに主人公のトラウマ、妻への原罪、二人で降りた虚無の世界(これは地獄のアナロジーにも見えたぞ)、現実ー夢の境界面に突然「ふつ・ふつ」と現れる二人の子供の後ろ姿がイメージとして錯綜するところが複雑でわからない。ただし、種明かしはいらんよ。ボクにはこの映画は盛り込みすぎに思えたから、あとでいくら説明されても、もういいですおなか一杯ですから。

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正直、話が複雑すぎます。ついて行くのがやっとでした。現実の世界の他に、夢うつつの世界が三層構造になっているわけで、最深層に行くのも大変なら、戻っ てくるタイミングを同期させるのも大変。細心の注意を払って見ているつもりでも、つい見逃しているキーポイントがあるようで安心できません。第二層が無重 力になってしまう理由がわからなかった。最初と最後の画面は第何層の世界なの?メメントは複雑でも面白かったが、この映画は解釈する時間すらなくどんどん ストーリーが流れていくので、正直辛かった。

勘のにぶいお馬鹿さんは見なくてイイよと言われているようでしたな。


この映画を面白いと初見で言えるとすれば、余程SF映画慣れているかあるいは気張って見栄を張っているかとしか思えない・・・というと皆さん怒るかな(笑)。

映像美は素晴らしい。特に最も深い第三層limboの世界は主人公のいうところの「記憶に全く頼らない世界の再構築」ということなんだろうがため息がでるほど美しかった。むしろこの映像を見られただけでも小生は幸せだったかもしれない。
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この映画を例えば20歳台で観たとする。すると随分記憶に残る映画になったと思う。小生の20代での実際の映画としては「ブレードランナー」を観たときのような。映画というのは予見無く、なんとなくいきなり出会うのが一番良い。できたら前宣伝など見ないほうが良い。このインセプションはテレビCMもかなり流れているが、安心せよ。あらゆる意味でネタバレにはなっていない。

若者は大いに見に行ったほうがいいぞ、こんな訳のわかんない映画は最近では少ないからな。対してお年寄りはもう飽きたでしょう、この手の映画。もっと他の消化の良い映画にしましょう。


2010年7月25日日曜日

記憶に関する一考察:音楽は偉大かもしれない

先日NHKのフランス語講座のテーマ曲について記した。70年代の夜11時からの放送であったが、それがYouTubeに採録されており、おそらく40年ぶりくらいに聞くことができ感激したという話であった。小話や小説なら記憶を都合良く再構成、あるいは捏造してしまうのが普通であり、40年ぶりの邂逅にはきっと違和感があるのだろうが、音楽は違う。まったく記憶のままであった。これは発見である。そのことにも感激した。

人間の記憶に関してボクはかなり懐疑的だった、あるいは懐疑的になり始めていたからだ。「そのまま覚えているわけではない」「都合良く覚えている・・・そうでなければ記憶に長く残るはずがない」というのが一般的コンセンサスであり、ボク自身経験的にそう思っていた。しかし40年間も頭の中だけにしまい込まれた記憶を突然試される、それも細部にいたるまで(ある意味論理的に)試される機会を今回得た訳だが、音楽の特殊性を考えざるを得ないのだ。音楽はやはり完璧な芸術なのかもしれないね。曖昧な記憶というのが最も少ない芸術のような気がする。絵は?・・・・細部など忘れている。小説?・・・・記憶はいいようにねじ曲げられている。映画も舞台もそうかもしれぬ。

そう書きたくなるほど、まったく違和感なくほぼ完璧に覚えていた。この間一回も聞いたことがないのにだ。

音楽について語り始めるとやめられなくなりそうなので、ここらで話題を変える。
もうひとつ知りたいことが残っているからだ。資生堂の宣伝である。これも30〜40年の間、頭の片隅に残り続けているCMである。70年代の資生堂は今と変わらずイメージが斬新であった。ある意味今よりも先鋭だったかもしれない。団次郎や前田美波里の白黒CM(これもYouTubeで見ることができることを先ほど発見した)をナレートする女声が好きだった。この人は夜の資生堂提供番組の最後に「提供は東京・銀座・資生堂でした」と語る女のナレーターのことでもある。私だけではない。当時の私の周りの友人達はこの資生堂の宣伝をこよなく愛していた。わずかに伝わる都会の息吹というのでしょうかね。小学生の高学年から中学になったころである。テレビの音楽ではグループサウンズ全盛期だったのでしょう。しかし僕たちはラジオに夢中だった。映画では007も全盛だった。マンガは「少年」が廃刊前の最盛期を迎えていた。アトムの「史上最大のロボット」などが連載(1964年06月号〜1965年01月号)されていた。今の「プルート」へのオマージュの原型である。「おらはしんじまたっだ」はこのころだろう。のちに大好きになった風街ろまんはもう少しあとだろう。「はっぴーえんど」も最初は随分胡散臭く見えた。松本隆の歌詞の漢字は難しかったしな。もちろん四畳半フォークなどまだない、まだまだ良い時代だったのだ。フォークというのは反戦であり学生運動と等価値に見えたので、理屈が背後にあり、子供であった小生には縁遠かった。小学生や中学生のガキが岡林信康を聞くはずなどないだろう。せいぜい「友よ」くらいか。そんな時代。


さて、その資生堂のナレーターは誰だったのか?実は先日資生堂の広報室に聞いてみた。
三保敬太郎と同じ日にだ。すぐに返事がきた。このあたりNHKといい資生堂といい素晴らしい。

返事を掲載してみよう。

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XXX様

日頃は、資生堂製品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
またこの度は、1970年代の弊社提供テレビ番組に関心をお寄せくだ
さいまして、重ねてお礼申し上げます。

早速ではございますが、1970年代のCMのナレーションのほとんどは
上原一美さんが担当されていました。

以上、簡単ながらご案内申し上げます。
また何か、ご質問、ご感想などがありましたら
お気軽におよせくださいませ。

資生堂お客さま窓口  XXXXX

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だれだろう、上原一美。
三保敬太郎はネット検索するととても情報が多い。CDまで出ていたので購入してみた(廃盤であり古書ネットで手に入れたが)

上原一美さんはほとんどネット検索に引っかからない。北陸金沢あたりのローカルなアナウンサー情報がちらりと引っかかるがご本人と同一かどうか不明だ。ボクはこの人のことが知りたい。非常に興味がある。もう一度あのナレーションが聞きたい。今のテレビやラジオではあり得ない気品である。

2010年7月24日土曜日

ナルコレプシーとHLA-DR2では358倍の危険率

HLAと疾患感受性をキーワードにgoogleすると真っ先に検索されたのが「西村泰治先生」であった。やっぱりねというか流石です。

この表は何度も目にしたとことがあるが、ここ5年のWGA-studyを共時的に経験した後で、歴史を越えて改めて相関表を眺めるとHLAの相関度の高さには驚かされる。強直性脊椎炎では208倍である。ベーチェットの7.9倍はこの文献でも同じだ。ナルコレプシーの358倍ーこれは白人でも130倍であるーなど、なんと評してよいのか。

「医学のあゆみ」が今頃になって再び「HLAと疾患」(2010年6月号)なる特集を組んでいるその背景には、ここ数年の多型研究で明らかにされた相対危険率の余りの低さがある。温故知新ということね。

病理と臨床1998年(西村泰治)より引用・・・

ベーチェット病 関連遺伝子(多型)IL23R-IL12RB2

ベーチェット病:しばらく忘れていた病気だ。Nature Geneticsに多型解析がのったが、一つは日本チーム(猪子さん)今ひとつはトルコのチームであり、なんかほっとするのは私だけか?

  • あっ、これはもちろんベーチェットがトルコ人であるからなのである。小生は愛国者ではないが、病気が多い国は責任を持ってその病気の病因解明に尽くすべきだろうということなのである。

  • 以前触れたように、「菊池病」「川崎病」のメタゲノム解析をだれかやって、日本人が病因解明に名乗りをあげて欲しい。これはもちろん、「橋本病」「高安病」などにも当てはまる。橋本はGWAを随分されたようだが、今ひとつの観があります。違った観点から挑んでほしい。
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さて難病情報センターのHPによると

  • 未だに病因は不明であるが病態形成の機序が明らかになりつつある。ベーチェット病ではHLA-B51の陽性率が高く、発病にHLAーB51そのもの、あるいはこれに連鎖する素因の役割が重視されている。実際、日本人のHLA-B51保有者でも、ベーチェット病に罹患する相対危険率は7.9ときわめて高い。 HLAーB51以外にも、HLA-A26ほかMICAなどいくつかの遺伝子多型と疾患の関連が報告されている。こうした遺伝素因に病原微生物をはじめとし た外因が関わり、自己免疫異常や好中球機能過剰をはじめとした自然免疫系の異常を引き起こし、発症にいたると考えられている。特に、これまで注目されてき たのは細菌微生物、中でも口腔内に存在する Streptococcus sanguinisの役割が研究されてきた。その研究の過程で、細菌由来の65kd熱ショック蛋白(heat shock protein;HSP)と交差反応性を示す宿主由来HSPが自己抗原となり、自己免疫応答を惹起し、抗原特異的Th1型リンパ球の働きにより炎症病態が 発生するという仮説が示された。さらに最近、痛風や家族性地中海熱に代表される自己炎症性疾患との臨床的類似性から、病原微生物などがリンパ球の関与なし に直接的に好中球やマクロファージなどの自然免疫系を刺激する自己炎症のメカニズムがベーチェット病の病態形成により重要ではないかとする考えも提唱され ている。また自己免疫的な側面についても新しいサブセットであるTh17型細胞の役割などが検討されている。
ここで示される相対危険率7.9というのは「悪魔のように立ちはだかる組織適合抗原の壁」と呼ばれてきた、いわゆるHLAによる疾病罹患率を示す。GWA で精力的に全ゲノムを検索して得られる危険率は高々1.6前後である。この小さなブログでこれまで記録してきた多型報告でも、ことごとく1.5~1.7あたりが多かった。下のベーチェットの新しい報告でもodds ratio = 1.45である。なかなか越えられないHLAの壁。1970〜80年代には大流行だったHLAだが、その本質はまだまだ豊穣のような、未知の要素があるような気がしてならぬ。

Genome-wide association studies identify IL23R-IL12RB2 and IL10 as Behçet's disease susceptibility loci
Nobuhisa Mizuki,Akira Meguro,Masao Ota,Shigeaki Ohno,Tomoko Shiota,Tatsukata Kawagoe,Norihiko Ito,Jiro Kera,Eiichi Okada,Keisuke Yatsu,Yeong-Wook Song,Eun-Bong Lee,Nobuyoshi Kitaichi,Kenichi Namba,Yukihiro Horie,Mitsuhiro Takeno,Sunao Sugita,Manabu Mochizuki,Seiamak Bahram,Yoshiaki Ishigatsubo& Hidetoshi Inoko

Nature Genetics(2010), Received 06 April 2010, Accepted 17 June 2010, Published online11 July 2010

Article
Behçet's disease is a chronic systemic inflammatory disorder characterized by four major manifestations: recurrent ocular symptoms, oral and genital ulcers and skin lesions1. We conducted a genome-wide association study in a Japanese cohort including 612 individuals with Behçet's disease and 740 unaffected individuals (controls). We identified two suggestive associations on chromosomes 1p31.3 (IL23R-IL12RB2, rs12119179, P = 2.7 × 10−8) and 1q32.1 (IL10, rs1554286, P = 8.0 × 10−8). A meta-analysis of these two loci with results from additional Turkish and Korean cohorts showed genome-wide significant associations (rs1495965 in IL23R-IL12RB2, P = 1.9 × 10−11, odds ratio = 1.35; rs1800871 in IL10, P = 1.0 × 10−14, odds ratio = 1.45).

2010年7月23日金曜日

大衆小説家:菊池寛

大衆小説といえば中間小説であり風俗小説であり月刊誌に掲載されては小銭を稼ぐ作家たちによる娯楽小説とみなされていた・・・といいますか、これが世間の通り場であろう。代表者の一人は菊池寛であろう。この辺に異論はなかろう。そこで大衆小説家の書いた小説であるが、これを今頃読もうという奇特な御仁は少なかろう。小生が学生の頃、時間はあったが金は無かった当時、できたら避けたい本が大衆小説であったから小生は殆ど読んだことがなかったし、その実態をよく知らなかった。文学史的には菊池寛といえば「父帰る」「恩讐の彼方に」
忠直卿行状記 」等々知識はあるのだが、敢えて読む気がしなかった。

先日松岡正剛の千夜一夜リストを見ていたら、
忠直卿行状記 」が紹介されていた。これ今なら「青空文庫」で読めるので、読んでみたが面白い短編であった。で、思ったのだがこんな小説も大衆小説というのだろうか?いや、実にどうでもいいことであるが、最近書かれる小説より余程面白いのではないだろうか?

こんなのを大衆小説家の書いた小説といって読まないのは勿体ないと思った次第である。

旅行に行くのに「オール読物」をキオスクで買って乗車するのではなく、iPadに青空文庫をダウンロードして行く方が余程良いのではないだろうか?

2010年7月20日火曜日

Reservoirについて

昨日タランティーノの映画でうろ覚えでレイザア・・と書いたのが実はReservoir Dogsであることを知った。これどんな意味なんだろう?だいたいよくわからないのは邦題であるレザボア。これ英語だと普通はリザーバーとつづられるのだろうが、敢えてレザボア。確かに reservoir / rézərvwὰːr なのでアクセントが前半にありレザボアでもいいんだろうけど、なんか釈然としない。

また
reservoirというとボクには綺麗なイメージがある。これは独断かもしれないが、例えばニューヨークのセントラルパークには大きな池がありヨット遊び(模型のである)などで有名だし、映画にも出てくるしそれ以上にしばしば小説に登場する。そう言った場合この池はreservoirと呼ばれるのだ。この映画でレザボア・ドッグスという言葉でなにが言いたいのかよくわからない。

昔と違って頼れるのは辞書だけではなく、現在では例えばGoogle imageという素晴らしい仕組みがあるが、ここで
reservoirを入力してご覧なさい、それはそれは素晴らしい池や湖の写真で目白押しである。10個目くらいにはセントラルパークの池も登場する。汚れたイメージは皆無であるだけに、不思議でしょうがない。

不思議な言葉のイメージであるな
Reservoir Dogs


2010年7月19日月曜日

Mélanie Laurent

Mélanie Laurent


昨日イングロリアス/バスターズを観たのだけど非常に面白かった。タランティーノという監督は面白いね。ボクは幾つ観たのだろう?
パルプフィクション、キルビル2つとこのInglorious Bastersである。あのレイザア・・・を今度見てみよう。なぜInglorious Bastersを見たくなったかというと、例の「オーケストラ」でのヒロインMélanie Laurent に一目惚れをしてしまったからなのだが、良いですわこの女優。非常に面白い映画に誘ってくれてありがとう、てな感じですわ。金を出しても見たい映画、ヒトに薦めたくなる映画である、これは。

2010年7月17日土曜日

ラフマニノフは手が大きかった!

ラフマニノフは手が大きかった!というジョーク。笑える。

矯正歯科:一年半を25秒間で、なるほど矯正!

矯正歯科:一年半を25秒間で、なるほど矯正!

今回の参院選:秀悦なる解説

内田さんのブログで面白かったのでつい引用。
前後の説明無く一部引用はミスリードの危険性あるが、もう一度読みたくなったら

フリーズする政治   を参照のこと。

・・・・・・・・・・・・・これはダブルバインド・セッティング以外の何ものでもない
そう考えると、日本の有権者が何をしようとしているのかを伺い知ることができる。
彼らは政治過程を「フリーズ」させようとしようとしているのである。
政治家たちを「黙って嵐が過ぎるのを待つ」ようなマインドセットに追い込むことを目指しているのである。
もちろん、個々の有権者に訊ねてみれば違うことを答えるだろう。
けれども、総意としては「政治過程のフリーズ」を求めているのである。
衆院与党が3分の2に達しない「真性ねじれ国会」とは、多くの識者が指摘するとおり、「何も決まらない国会」である。
ダブルバインドの呪縛にかかった国会である。
大勝した自民党は、国会で攻勢に出て、対米外交や税制改革で民主党に大幅な譲歩を求めるかもしれない。
でも、そのときに、たぶん自民党支持率は一気に下がるだろう。
自民党の政治家たちは、「いったい、有権者は私たちに何をしてほしいのか?」と困惑して自問することだろう。
政治家たちがどうしていいかわからないで立ち尽くすこと。
それが、今回の選挙で国民が総意として選んだ政治の姿なのである。・・・・・・・・・・・・・・・・

2010年7月14日水曜日

本日の立ち読み


今日は休日であり本屋によったらいくつか面白い本に気が付いた。

(1)「知」の現場から---明治学院大学国際学部付属研究所公開セミナー2 (単行本)

最先端で活躍する論者たちの知が融合する……高橋源一郎、内田樹、島薗進、川上弘美、青山七恵、酒井順子、御厨貴、斎藤環、福岡伸一、姜尚中、坪内祐三。 好評を博した連続対談の記録・・・とのことである。

鉄道本なら一杯読んだ原武史さんの編集である。立ち読みで「高橋源一郎、内田樹」だけ読んだが、面白かった。買うほどの内容ではなかったが・・・。それより姜尚中が面白いんだって。あるいは福岡伸一が面白いとある。また立ち読みしてみよう。

(2)若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱) (単行本)

これも立ち読みしたが、立ち読みで十分かもしれないと思った。そこそこ面白いんだけど。

で結局買ったのは・・・・

(3)松岡正剛の書棚—松丸本舗の挑戦 (単行本)

つい買ってしまう。立ち読みで済ませようかと思ったが、カタログ的に懐かしい(千夜一夜は愛読していた。千回目と1001回目の本の予測では盛り上がったし・・・)し、佐藤優との対話が面白かったので購入してしまう。今度丸善にいったら寄ってみよう「松丸本舗」。

11PMとNHKフランス語講座のオープニング曲について考察

お気に入りの曲なので名前が知りたいのだがわからない・・・・こんな経験は誰にでもあるはずだ。小生にも30年いや40年以上気になってしょうがない曲がある。1995年ころ初めてインターネットが出てきたころ、あるいは検索可能になったかと思っていたが無理だった。それ以来15年、時々調べてみようとするのだがなかなか難しい。譜面を書けないのでイメージを具体化できない。

手がかりはあるのだ。それはNHKの語学放送のオープニング曲だったからだ。フランス語講座で夜11時頃始まる。初めて気が付いたのは小学校の5年か6年頃だ。実はこの頃は当たり前のように時に耳にしていただけだったが、そのうち大好きになる。フランス語講座を聞いていたわけでもない小生が、なぜこの番組を覚えているかというとよくわからない。ただ当時我が家に届いていたテレビ放送はNHKが二つと民放が一つだけだったので、チャネルを回すと良く耳にしていたのだろう。

小生が洋楽に目覚めた当時の音楽事情といえば、ビートルズでいえば「Come together」「 Get back」あるいは「Something」の頃である。なぜ限定できるかというと、親友だったAがレコード屋で買ってきて聞かせてくれたのを鮮明に覚えているからだ。小学校5年だったと思うぞ。一人息子で小遣い的には裕福だったAはいろんなレコードを買っては聴かせてくれたから一気に目覚めてしまったわけだ。ラジオを聞き始めた。深夜放送は始まっていなかったか、あるいは気が付いていなかったので、もっぱら日曜日夕方6時ころのNHKーFMが最新洋楽情報源だった。この番組は最新のビルボードランクで紹介する番組だった。ディスクジョッキーは石田 豊。「リクエスト・コーナー」という番組だった。・・・というようなことは今ネットで調べてようやく思い出した。実はFMではなくAMの第二放送だったということも今知った。
テープレコーダーは家にあったので、取り込み翌週学校で皆に聞かせた。ロックというくくりはまだ頭の中にはなかった。なんでも聴いていた。好き嫌いは当然あった。遅れてきた少年だったので(4ー5歳年上はビートルズと同時並行感が強く、彼らがうらやましかった)プレスリーなどが大嫌いであった。これは皆そうだったと思う。プレスリーなどに比べると、そのころはやりのポップスやボサノバは余程かっこよく聞こえたのだからしょうがない。このボサノバというのが小生にはぴったりの音楽だった。またフランス音楽も大好きだった。といっても好きだったのは無名のスキャットだった。シルビーバルタンが好きだったわけではない。このスキャットというのはたとえば映画の「新・黄金の七人 7×7(1968)」で全編に流れる。毎週映画に行っていた小学生は、映画にもしびれたがフランス(実はこの映画は本来イタリアものらしい)にもしびれた。

こんな音楽背景のなかで飛び込んできたのが「フランス語講座」のテーマである。しゃれているのである。誰のなんという曲だろうと、ずっと知りたかった。全曲が聴いてみたいと思っていた。

答えが昨日見つかったのである。何気なく引っかかった「NHKラジオ第二放送 語学講座テーマ音楽1980」というYouTubeに採録されていたのである。さすがにネットは進化している。15年もたつとこのような音源までアーカイブされてしまうのである。ありがたい。そして数十年ぶりに聴いた感想は「新鮮であり完璧にクール」であった。小学生のときの感想とおそらく同じだな。進歩なしだな。

早速NHKにメールで尋ねてみた。2時間くらいで返事が早いので驚いた。その返事引用しよう。

  • いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
  • お問い合わせの件についてご連絡いたします。
  • 70年代のテレビのフランス語講座を調べてみましたが、
  • 番組名は「たのしいフランス語」で教育テレビで午前8時からの放送、夜11時から再放送をしておりました。
  • テーマ曲は委嘱したもので、三保啓太郎作曲との資料が残っておりました。
  • これは1967年から使用していました。残念ながら市販されているものではありません。
  • 以上、ご参考になれば幸いです。
  • 今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
  • お便りありがとうございました。
  • NHK視聴者コールセンター
三保啓太郎は実は三保敬太郎が正しいようだ。面白いのはこの人11PMのテーマの作曲者なのだ。あの「たばたばたばたばら〜」である。これもスキャット(もどき)であるよ。

当時(昭和40年代かしらね)夜11時になると民放では「男のお色気番組」である11PMが始まり、かたやNHK教育では「フランス語講座」が始まるがそのテーマミュージックを書いたのが同じ人であったというのが面白い。いや、どちらにも惹かれていた私であるが、その事実に40年もたって気が付いたというのが愉快である。そういえば、よく似ている。

フランス語のテーマの方がクールだがね。それにしてもあの曲を書いたのが日本人とはね。良い意味で裏切られました。1960年代の日本ってなんか凄いですな。

2010年7月11日日曜日

梅棹忠夫さま死去

梅棹忠夫が死んだ。レヴィ=ストロースが死んだかと思ったら、今度は梅棹さんである。梅棹さんのことは今年の初めに「大学に入って購入した最初の本が『サバンナの記録』だった」という話を書いた。


2010年2月14日日曜日
大 学に入った頃

大学に入った頃なにを読んでいたか


亡くなったと知って新聞やネットで記事を見ると随分小生は梅棹先生の書物を読んでいたのに気が付かされた。文明の生態史観についてどこかで書いたと思ったら
・・・・・・


2009年6月17日水曜日
100人の天才: 雑感(2)


に書いていた。

じつは先日卒業した大学の下宿の界隈を散歩していたら、懐かしい本屋さんが健在であった。たしか35年ぶりくらいになるがその店に入ってみた。全く変わっていなかったのにも驚いたが、よく生き延びているのにも感心した。金修堂という名前だ。そこで思い出したのだ。この店なのである『サバンナの記録』を購入したのは。確か『悪文』という本と同時に購入した。再訪したのが亡くなった翌日であるというのはたまたまなのかね・・・。合掌。

賭け事と世の中

ラグビー:トップリーグ新人研修会で「賭博禁止」徹底


「賭博行為は団体の存続にかかわる」と自覚を促した・・・という記事を見て「浄化」という言葉を思い出した。実にいやな世の中である。賭け事は本質的に極めて面白い人間的な営為である。子供の頃から「消しゴム」をかけたり、メンコ・ビー玉をとったり取られたりから始まり、高校の頃はトランプ、大学・社会人では麻雀三昧であり、賭け事をしょっちゅうやっていた身としては、なべて賭け事は御法度というような殺伐とした世の中はゴメンこうむる。敢えて些細な個人間の楽しみを奪うような、官憲のちょっかいには断固反対したい。あるいは、安易にこの風潮(大相撲賭博問題)に乗っかる世間には「よくよく考えてくれ」といいたい。


野球賭博は暴力団存続のための格好の資金源になっていると推定されるわけであり、
大相撲が大規模賭博根絶のためのよいターゲットになったということなのだろうが、それにしても若干気にくわない。胴元としての暴力団やくざの具体名が一切マスコミに出てこないからだ。これでは一方的に角力取りが悪人になってしまう。胴元はもっと悪人のはずなのだ。

個人の間の賭け事まで、メディアが介入してくるようでは世の中辛すぎる。このような風潮を世知辛いという。僕らはそれでもやるだろう。麻雀でもゴルフでも。問題は子供達だ。本音と建て前の微妙な違いを正しく見極める文化的な通過儀礼が果たして今後も守られるか・・・? 暖かく賭け事を見守りたいものだ。

選挙のこと

仕事に出る前に選挙をすませてきた。7時すぎの投票所というのは初めてだが、三々五々投票者は集まる。今日は豪雨も予想されるので、場合によっては低い投票率になるかもしれない。

これまでほとんど選挙では投票してきた。当たり前だろうといわれるかもしれないが、70年代〜80年代はかたやレジャーだ、かたや「何が選挙だ」と若者の投票率は低かったので、その中では気張って投票所には行っていたつもりだ。でもね、最初のころは投票所にはいっても白票を投じることもまた多かった。選挙には行けという親の言いつけを守っていただけだったかもしれないが、白票がまた自分なりの誠実さと思われた時代があったのだね。

今回は本当に入れたい候補者は別の選挙区にいる。まったくなんで当地で立候補しなかったんだと切歯扼腕である。当地で立ったら、かなり当選確率は高かっただろうと皆いう。まあ新聞によれば、あの地方でもいい線いっているというので注目している。

医療系の候補はもう支離滅裂である。知り合いから何度も電話がかかる。同僚もいい年齢になった。医師会関連では実動部隊の中核なんだろうよ。選挙がますますやりにくいご時世なのだ。ヒトが雇えない。大変だ。医療系候補で本当に投票したい候補は別の県にいる。頑張れよなと心の底から応援している。

2010年7月10日土曜日

今週のNEJMのイメージ:prolactinomaとカバサール内服治療


プロラクチノーマの治療:手術 or 阻害薬

プロラクチンは体内のドーパミンというホルモンによってコントロールされています。このドーパミンに似た成分を持つ薬によってプロラクチンをコントロール するのです。90%のかたすなわち10人中9人程度はこの薬でプロラクチン値を正常にすることができます。
以前は副作用として吐き気、嘔吐、気分不良、めまいなどがありこの副作用のために飲み続けることができない方も多かったのですが最近はこの副作用を抑えた 薬(テルロンなど)も発売されています。この薬の作用は8時間程度でそのため少なくとも1日1回は内服しないといけませんでした。最近になって作用の長い 薬(カバサール)が発売され、1週間に1回か2回程度内服するのみで効果が得られるようになりました。
これらの薬は非常に有用な薬ですが欠点は根治することができないことです。飲み続けている間はプロラクチン値を下げておくことができますが服用をやめると 再びプロラクチンは上昇しもとにもどります。つまり、プロラクチン値を正常にするためにはずっと飲み続けないといけません。

さて今週号のNEJMイメージはサウジアラビアから大きな下垂体腫瘍で「プロラクチノーマ」である。

上二つのイメージは治療前、下二つはカバサール
cabergolineで治療した後のイメージ

  • A 32-year-old man presented with a 6-month history of severe headaches, hemiparesis on the left side, and impaired hearing in the left ear. His medical history was otherwise unremarkable. Magnetic resonance imaging with gadolinium revealed a large mass (5.6 cm by 6.9 cm) invading the base of his skull (Panels A and B, arrows). To evaluate the patient for the presence of what was most likely a pituitary macroadenoma, the serum level of prolactin was measured and reported as 7.3 µg per liter (normal range, 4.1 to 18.4). In cases of large prolactinomas, the initial prolactin level may be erroneously read as normal. After serial dilution of the patient's blood sample to 1:1000, the measured prolactin level was 122,260 µg per liter. Laboratory testing also revealed central hypogonadism. Immunohistochemical staining of a transnasal-biopsy specimen of the mass showed a lactotropic adenoma with tumor cells that were positive for prolactin. Four days after the initiation of treatment with cabergoline, the prolactin level declined to 10,823 µg per liter. By the time of the 3-week follow-up visit, the prolactin level had further declined, to 772 µg per liter, and the patient's neurologic symptoms had resolved. After 40 months, the prolactin level was maintained at 25 µg per liter and the tumor had regressed substantially (Panels C and D, arrows). The central hypogonadism persisted.

2010年7月7日水曜日

子宮癌とワクチン:誤解があるといけないので・・・

誤解があるといけないので、付記追加するが、子宮癌とワクチンについて書いた過日の文章の一部はでっち上げである。添付文書の触れ込みとして引用したかのうように書いた文章、たとえば「子宮頸癌の予防に有効だとは一度もいったことがありません」というのは私の創作である。実際の添付文書を想像して私が書いてみたのだが、その後ホンモノの添付文書(日本語)を読んでみたところ、はっきり予防効果があると書かれている。これには驚いた。

小生はかつてNEJMにおいてquadrivalent vaccine(と当時呼ばれていた、これは4価ワクチンのこと。HPVの4つのメージャーサブタイプへの予防効果があるという。今のメルク社のガーダシルのことになると思う)の知見が得られたとの報告を元に記録を残した。(
2008年1月6日日曜日 パピ ローマ・ワクチンの現状)

その際の参考文献でCIN(これは子宮頚部の異型性:子宮癌の前癌病変といってよい)が予防できたという統計報告が既報であることが記されていた。(2007年のNEJM: The Future II Study Group. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent high-grade cervical lesions. New England Journal of Medicine 2007; 356(19):1915–1927.)

気を付けなくてはいけないのは、これは若年者(27歳まで、しかも観察期間は7年くらい)での研究であったことだ。もちろん素晴らしい研究であり、けちを付けるつもりはさらさらないのだが、これと「子宮頸癌の発症予防にワクチンは効果がある」というのは距離があると小生は考えてしまうのだ。
前向きに研究で研究のエンドポイントが子宮頸癌の発症率を有意に下げるかどうか(もっといえば子宮頸癌が原因となる死亡率の低下に寄与するかどうか?)ないと「子宮頸癌の発症予防にワクチンは効果がある」とは書けない。

うるさいことを言うなと言われそうである。30年待たないと結果はわからんと言われますね。子宮頸癌の原因の大半はパピローマウイルス感染である。ワクチンでウイルス感染を予防できるなら、子宮頸癌は予防できるではないか・・・!というのがワクチン開発者、製造業者のご意見であろう。しかし、私のような疑い深いひねた医者は納得しないのである。ひねた医者でもなるほどと唸るのは米国の添付文書である。アメリカのメルクの添付文書は注意深く書かれているのである。下に挙げたのはメルクの文書

  1. 4つのサブタイプの HPV感染予防に効果があると述べてある。
  2. 子宮頸癌の原因の75%である2つのタイプのHPV感染を予防すると書いてある。(逃げている訳ではないのだ。誠実に起草すればこうとしか書けないのだ。だから読み手には知性が必要)
  3. 9歳から26歳の女性に効果があると限定している。
  • GARDASIL is the only human papillomavirus (HPV) vaccine that helps protect against 4 types of HPV. In girls and young women ages 9 to 26, GARDASIL helps protect against 2 types of HPV that cause about 75% of cervical cancer cases, and 2 more types that cause 90% of genital warts cases.
お前はどうするのだといわれるだろう。もちろん子供には打つように推奨した。当たり前である。これでも、もとは研究職も兼ねていたのである。小生は懐疑的な人間ではあるが、新しいものを全面否定などしない。

2010年7月5日月曜日

子宮頸癌とワクチン

つい先日ある親御さんから「娘に子宮頸癌ワクチンを打った方がよいものかどうか」という相談を受けた。まだ返事をしていないのだが、世間の推奨コメントに乗れば「取りあえず受けておかれても良いのではないでしょうか」となる。

ワクチンを打つことの問題点を整理することは実は易しいことではない。どんな問題が潜んでいるか、実はわからないことが多いからだ。新聞やネットの論調が当てになるのならこれほど良いことはないのだが、経験的には裏切られることもまた多い。裏切られたときには「そんな事を言ってはいません」という言葉を非常に良く聞く。きちんと聞いていなかった大衆が悪いのだ・・・ということになってしまう。

「子宮頸癌が予防できるなんて、一言も言ったことはありません。」「だいたいFDAから認可・発売されて何年経っているとお思いですか?まだ5年といったところでしょう。」「最初のアフリカの少女たち(テスト対象者達のことです)はその後、正常なsexual acitivityを経験し、あるいは妊娠・出産した対象者も多いでしょうが、発癌頻度を観測するには、まだまだ観察期間が短いのです。」「私たちが(発売元)が当時言明したことは「添付文書」に書かれていることにつきます。」「私たちは『
抗体が誘導される』ということだけしか述べていません。最初の一年で三回投与します。被験者のうち50%は6年間は抗体陽性が続きます。これが全てです。」

この期間はパピローマウイルス感染は予防できるといっていいでしょう。上手くいけば液性免疫のみならず細胞性免疫が誘導されることは通常の免疫反応から充分予想できます。したがって一度免疫ができれば、かなりの確率でパピローマ感染を防御できるはずです。私たちも大いに期待しているのです。あのアフリカの少女達が20年たって明らかに子宮頸癌の惨禍を免れることができることを!でもそれを証明するためには時間が必要なのです。(赤文字の部分は希望的言明にすぎない)

いいですか?パピローマに対する液性免疫が高率に惹起されることは保証します。しかし子宮頸癌を予防できたという疫学的データはいまのところないのです。

しかしながらだよ、それでもなお「ワクチンを打つ必要はない」という議論にはならないのが臨床医学である。ここから先は個々の覚悟の問題である。親の覚悟の問題であるし、ある場合は本人の覚悟の問題である。

  1. 子宮頸癌はいかに悲惨かという啓蒙は大事である。
  2. 子宮頸癌は今現在、予防可能であると考えられている唯一の癌腫である。
  3. ワクチンの副作用はそれほど大きくなさそうである、なさそうに見える。
  4. 保険が効かないので、3回打つと7万円くらいかかりそうである。
この4つのことを充分に知った上で、それで「本人みずからのあるいは親みずからの覚悟を持って」ワクチンを打つべきだと思う。

もとい、このテーマには「・・・すべし」という答えはない。調べて自分で覚悟を決めてワクチンを打ちなさい。このテーマに関しては「納得いく説明」というのは用意できないと考える。「とてつもなく便利なものが出来た。ワクチンさえ打っていれば子宮頸癌は予防できる可能性があるというのだからね」とポジティブに考えたい。このワクチンに関しては副作用が出ても、自分の問題として引き受ける姿勢が大事である。先ほどからいっている「覚悟」というのは、そのことを指す。